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第50回 香子の企み

3月、花の宴に事寄せて、一条院に再出仕した香子に道長も倫子も丁重でした。倫子は自分の姪の大納言の君、小少将の君を付けてくれました。特に小少将の君はなよやかで、夫に捨てられたという事もあり香子とは同室にしてくれ心がなごみました。更にあの『蜻蛉日記』の作者の孫ー道綱の娘、宰相の君もいてくれて香子の周囲は安定しました。
香子も「一の字も知らないんです」と無知を装い謙虚にしていたので、次第に周囲とも和やかに打ち解けました。

ただ一人、義姉にあたる源典侍は香子に冷たく接していました。
しかしある時、香子は気づきました。源典侍は他の女房にも冷たく評判も悪いと。
「もう五十になるのに若い公達に色目を使って。物を上げたりばかり。私達には何もくれもしないのに・・・」
香子は思いつきました。源典侍を『源氏の物語』に入れてみようかと。
「ちょうど『紅葉の賀』は藤壺が不義の子を産む所で話が暗いから何か面白いものを入れようと思っていたの・・・」
ふと香子に意地悪い微笑が浮かびました。(続く)

※神戸新聞にも載りましたが明石魚住の古本喫茶での「源氏物語講座」が一昨日、無事に最終回五回目を迎えました。狭い店には一杯の8名参加でした。会社も経営していたという普段はシビアなマスターも「これだけリピーターを作ったのは素晴らしい事です」と褒めてくれました。
私も回を重ねる内に情が移るというか、「毎回楽しみにしています」の声を支えに、タクシーで毎回来られている方もいて、一生懸命聴いて下さる方を前に、いつの日かこの講座を私自身も生き甲斐にしていました。それで「最終回が終わったのですが、あと3回別の講座(伊勢物語や平家物語など)追加してもいいですか?」と尋ねると快い答えが返ってきて、コーヒー付き500円の講座をまた続けることになりました。何だか永遠に続きそう?(笑)有難いことですね!

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