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第72回 義朝と信頼の訣別

「おのれ、必ず再起を期す。まずは東国じゃ」
総崩れとなった源氏軍の中で、義朝はかつての地盤東国へ落ち延びる事にしました。そこへ恐怖にかられる信頼も、連れていってくれと頼みました。
義朝は表情を変えて一喝しました。
「日本一の不覚仁(ふかくじん)め!そなたごときと組んだのが予の不運よ!」
尚もすがってくる信頼の左頬を義朝は鞭でぶちました。信頼の頬には赤い血を出す傷痕が残りました。信頼は黙って義朝を睨むだけでした。
「者ども、行くぞ!」義朝一行は立ち去りました。

明らかに身分が下の義朝に鞭で打たれても黙っている信頼に、家来たちが完全に愛想をつかしました。
「あの様な方についていては俺たちも命はないぞ」「そうだ、そうだ」
家来たちはどんどん逃げだし、信頼には乳母子の式部大輔(たいすけ)助吉(すけよし)しかいなくなりました。

助吉はそれでも健気に信頼を馬で、後白河上皇がいるという仁和寺まで連れて行こうとしました。
途中、落人(おちうど)を狙う者たちに、鎧(よろい)、直垂(ひたたれ)、小具足(こぐそく)、太刀、馬まで奪われ、下着の白い小袖になり、冬の寒さに震えながら、何とか仁和寺に二人は辿り着いたのでした。(続く)

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