頻尿の薬を飲むと口が乾くのですが、どうしたら良いですか?

 過活動膀胱治療薬に用いられる抗コリン薬の副作用に口渇がありますよね。実際、抗コリン作用薬を服用している人では口渇を感じている人が多く、また唾液の流量も低下していることが知られています【1】【2】。

 一般的に過活動膀胱に用いられる抗コリン薬は、プラセボと比較して口渇の発現が3倍多く【3】、抗コリン薬による過活動膀胱の服薬アドヒアランス不良は、副作用による生活の質の低下も強く関連していることは、以前の記事でも言及しました。

 ところで皆さんは「梅林止渇」という四字熟語をご存じでしょうか。「ばいりんしかつ」と読むこの4字熟語は「別のものを使って、その場をしのぐこと」を意味します。

 この四字熟語は古代中国のある故事に由来するといわれています。魏の曹操率いる軍勢が道に迷ってしまった際、疲れ果てた兵士たちが喉の渇きを訴え始めました。このような状況が士気に影響すると考えた曹操は「先の梅の林に多くの甘酸っぱい実がなっているぞ」と兵士たちに告げます。すると、喝を覚えていた兵士たちの口の中に唾液がでて、渇きをしのいだというお話です。

 嘘か本当かは分かりませんが、確かに梅干の酸っぱい味を想像すると唾液が出てくるような気もしますよね。今回は抗コリン薬による口渇に関して、服薬説明に役立つエビデンスを紹介します。

口渇の原因には何が考えられる?

 口渇の原因は様々ですが、大きく薬剤によるもの、シェーグレン症候群やサルコイドーシスのような全身性疾患によるもの、そして頭頸部の放射線療法によって引き起こされるものがあります。頻度として多いのは、やはり薬剤性ですが、抗コリン薬の他にも利尿薬、一部の降圧薬(ACE阻害薬など)、抗うつ薬抗精神病薬抗ヒスタミン薬ベンゾジアゼピン系薬剤カルバマゼピン一部のNSAIDsなどが口渇をもたらす代表的な薬剤です【4】。

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理屈の上では妙に納得できるけど、それって本当にエビデンスあんの?という切り口で、薬にまつわる素朴な疑問に答えます。

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