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【一問一答】もっと自分の仕事に、自信を持つ言葉を贈りたい ( ウェディングフォトグラファー )

こんにちは。
Syuheiinoueです。

先日ウェディングフォトを中心に掲載しているアカウント(@syuhei.inoue)のインスタストーリーズにて、フォロワーの皆さんに向けて「ある取り組み」を行いました。

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お互いの写真について語り合う時間を設ける取り組みで、3日間かけて計30名の方と写真について真剣にお話させて頂きました。

もう少し詳しく説明すると、30名がインスタに投稿している写真を1から10まで拝見させて頂き、計15000枚の投稿から感じた素直な気持ちを言葉にして伝え合うというもので、今思えばすごい枚数と思考の時間でした(笑)

今回の記事は、そのやりとりの中から  特にウェディングフォトグラファーが共通して直面する悩み 僕自身への質問 について真剣にお答えしたものを抜粋して、記事化したものです。

・「景色の中に新郎新婦さんを溶け込ませる」撮り方について
・感情がぐっと伝わってくるような、綺麗だけではない写真
・自分の撮りたい写真を見つけるヒント
・ストーリー性を演出するTIPS

など、全19の一問一答を掲載しています。同様の悩みを抱えるフォトグラファーの皆さんにとって、そして結婚式の撮影に行く事ができない皆さんにとって、モチベーションを高める有益な参考記事になる事を願っています。



企画の経緯について

スクリーンショット 2020-05-04 20.03.37

僕のアカウントをフォローして頂いている方は主に、実際に撮影させて頂いた花嫁や、結婚式場やプロデュース会社の皆様、そして同業で活躍されるクリエイターの方々がいらっしゃいますが、そのうち約半数は実際にお会いしたことがない方ばかりだと気付きました。

いつもメッセージやコメント、シェア等で応援頂いている皆さんに、何か感謝の気持ちをお伝えしたい…と感じた事が、企画の経緯です。



※原文を一部、再執筆しています。

【一問一答】

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1年前くらいから何だか世界の捉え方が変わられたのかなと思いました。コントラストも含めた鮮明からより優しい印象的で、僕が勝手なkuppographyさんで想像する写真からまた新しい引き出しを感じました。力の抜けた感じがとても好きです。

写真以外の趣味を持ちたくて、1年前からキャンプを始めました。何度もキャンプに行くにつれて、自然に還ってゼロベースで住居を作ることや 自然そのものを撮るようになってから、「飾らず、人生をお祝いする写真」という考え方にシフトチェンジしました。今までも同様にハートフルな写真を撮っていたのですが、より一層「お祝い」の気持ちを大切にして発信するようになった形が、今のスタイルと呼べるかもしれません。

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井上さんの「景色の中に新郎新婦さんを溶け込ませる」撮り方にすごく圧倒されました👏✨過去を振り返って写真を見たときに、あのときこんな所にいたんだ。あの時の空はこんなんだったんだ。あの人はこんな感情だったんだ。って、お客様が見えない部分を、一歩引いた目線から残されているってゆーのが素敵です!!!

そうですね!こちらは、かなり意識して撮っています。
「新郎新婦が見たい景色」と「フォトグラファーが残したい景色」って必ずしも一致するとは限らなくて、きっと新郎新婦が見たいのは「こうありたいと願う表情」+「事実としての空間」だと考えています。中学生のころ英語の授業で習った5W1Hを思い出してみてください。「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」という言葉と、写真がマッチングするように撮ることができれば、誰が見ても共通の「思い出」を感じることができるようになります。その作業を「撮影」と「編集」で繰り返し模索し続けた結果が、今の撮り方に繋がったと感じています。

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会社のイメージ?方針?やお客様のリクエストもあるので自分らしく撮れなくて悩む事も多いですね…決められたセオリーみたいなのを意識し過ぎて自分的に納得いかない事の方が多いです…

わかります(笑)
どことなく Q社(仮名)全体のテイストが同じように見えるのは、そういった会社としての方向性に沿わないといけないんだろうな…と感じていました。Q社さんを独立されて自分の道を進む方って多いですもんね💧僕も以前提携していた結婚式会場では「制約」と戦っていたのですが、とにかくカップルのために制約そのものを変えてやる…!と楽しみながら写真を撮っていたら「制約が無くても良い写真だよね」と徐々に評価されるようになって、気付けば制約を気にせず自由に写真を撮ることが許されていました(笑)今思えば、チーム内に一人は必ずいるような「許されるポジション」だったような気もします。何事もポジティブに、自分の殻を破っていきましょう!

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最近ミラーレスを購入して写真を撮るようになりました。写真が上手くなるコツなどありましたらぜひ教えていただきだけると嬉しいです。

写真がうまくなるコツは…ただひたすら写真を撮って、見返して、反省して、改善する、の繰り返しで誰もが上手くなると思います。土地に合わせてペグ(*1)を打つ場所や角度が経験で理解できていくように、カメラも理論→感覚→理論を繰り返すことで上達するものだと考えています。「どこで学ぶか?」が一番難しい課題だと思うのですが、日々「豊かなもの」を感じ取って「真似」をすることが大切だと思います。今の時代、SNSには山ほど写真の資料が眠っています。是非、それらを活用して真似をしていくことで「自分が本当に撮りたいもの」や「オリジナリティー」にたどり着けると思うので、是非チャレンジを続けてみてください!
(*1)…テントを地面に固定する杭

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井上さんがアップされている写真から"物語"を感じました。被写体の方の表情やシチュエーションから、そこに至るまでの物語を感じ、同時に温もりを感じました。人間らしいというか、完全に作り込まれたものではなく、その人の人生に井上さんが一瞬だけ入り込んでシャッターを押している、そんな感じがしました。

ウェディングフォトを撮りはじめたころ、その瞬間を撮る為に「どう声をかけたら良いのかな…」とか「どうすれば自然な雰囲気で写真を残せるんだろう」と苦戦していたのですが、その考えに囚われすぎず「カメラマンとして、そして一人の人間として」目の前のカップルの人生をお祝いする気持ちで写真を撮る事に意識を向けた結果、現在の撮影スタイルへ変化したような気がします。

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私が前撮りやエンゲージメントフォト撮るなら絶対お願いしたいな〜と思うフォトグラファーさんです。ガンガン寄ってきて可愛いねーとか言わなさそうなので(でもきちんと女子が好きそうなキメ表情や笑顔を押さえてくれそう)、一緒にいる時間が心地良くすぎそうです。

以前は本当に「どうしたら心地よく過ごせて頂けるのかな…」と悩み尽くしました(笑)ですが、20代の頃は「自分が1番になりたい」とか「良い写真の為に新郎新婦をグイグイ連れてく」ことが多かったので、まぁワガママでした。その時だから撮れた写真や 頂いた感謝もあるのですが、ワガママは写真から滲み出ていたような気がします(笑)

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(ウェディングフォトグラファーとして)独立したり、という考えはあったりしますか?10年後の自分はどの立ち位置にいたいとか、ありますか?

独立は何度も悩んできたのですが、今は特に考えていません。僕は「現場」と「写真」が好きで仕方なくて、なるべくそれ以外の業務に時間を使いたくないので、価値観の合う写真会社と手を組んで撮影をする というスタイルを取らせてもらっています。あとクライアントと対等な関係性を築けないと察した場合、恐縮ながら依頼段階で仕事を断ったりすることもあります。
10年後に、「手を使って撮るカメラ」が存在しているか分からないので何とも言えないのですが、世の中に必要とされることを考えたら「こうあったら良いと願う世界を、視覚的に表現する為の視点の作り方」を伝えているような気もしています。いや分からないですごめんなさい!

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私も感情がぐっと伝わってくるような、綺麗だけではない写真をもっと撮っていきたいです。

中学生のときに英語で習った5W1Hを基準に、写真を分析することをオススメします👍1枚の写真やアルバムに対して「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」の要素を写真から読み取っていくと、「この写真は誰が見ても理解できるな」とか「どうしてこの写真を撮ったんだろう…」と良い点と悪い点が見えてきます。感情をぐっと伝えるためには、理論なしには語れないのです!

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井上さんのinstaを拝見して、被写体の表情や雰囲気、ストーリーがあるような所がすごく好きです。ストーリー性は今課題として意識している部分なので、ぜひ参考にさせていただきます!

ストーリー性の演出ってすごく難しいですよね!ウェディングフォトの本質って「記念写真」なので、集合写真や型物(*2)など、ある程度流れが決まっている挙式やフォーマットが決まったものが多いので、巻き起こっていることをドキュメンタリーとして撮りたいけど、残る写真はカタチが決まったものが多いことが、矛盾が生む原因なのでは…と感じています。ですが、そのジレンマから抜け出した時に見えてくるものが「表現」だと思うので、是非頑張ってください!
(*2)…ふたりが綺麗に立っている写真のこと

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(日常の何でもない風景を撮る方より)「そんなに撮って何がしたいの?」と職場で言われてたのが結構悩みでした(笑)

そうなんですよ(笑)普段写真を撮っている人と、そうじゃない人の視点に差があると中々意図って伝わらないんですよね。そういうときは言葉を混ぜて伝えてみるのも良いかもしれません。これがまた難しいんですけどね…。

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キャンプがきっかけで写真の価値観が変わったと仰っていましたが、詳しく教えてください。

キャンプを語ると長くなるんですけど、よく「焚き火をしながら語る」って言うないですか。一緒にキャンプに行った皆さん、多くを語らないんですよ。「いやぁ最高だね」「富士山綺麗だね」とか「また来ようね」とか、めちゃくちゃシンプルな会話が多くて。
唐突に「よし、明日から頑張ろう」って言う人も居て。きっと、山ほど思うことがあるはずなんですけど、出てくる言葉はシンプルなものが多いんですよね。そのとき感じた素直な気持ちを言葉で言えるくらい、素直な写真が撮れたらなぁ…という気持ちを深堀りしていくうちに、価値観が変化していったのだと思います。

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(モデル撮影を主に活動する写真家の声) 被写体を、お互い納得した上で可愛く撮るって実はめっちゃ難しくて、その子の好きな雰囲気、特性を掴んだ上で自分の世界観を表現することについて

被写体の良さを引き出した写真って、良い意味でフォトグラファーの存在を感じないんですよね。仕上がった写真を見た時に「写真家の世界観」よりもまず先に被写体に目がいくのは、単に被写体のポテンシャルだけが要因じゃない。それに気付いた方々から依頼が継続すると思うんです。僕がウェディングを撮る時と、もしかしたら感覚が似ているのかもしれません。

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しっとりしてる写真って割と流行ってるから色んなところで見るけど、他とは違うような気がする。

皆さん「しっとりさせる」という言葉の意味をどれだけ理解しているのかなぁと疑問に思うことがあった時期もありました。コントラストを上げることやそれっぽいレタッチを施すだけでは、湿度のある写真には繋がらないんですよね。色や露出は現像でどうにかなるけど、「光」と「瞬間」「構図」は補正できないんですよね。現場の空気を「最適に表現できているか」という気持ちが大切だと気付いてから、見栄えだけの流行には染まらないように気を付けました。

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最近、自分の撮りたい写真は?と自分に問いかけることも多く、悩んでいた

僭越ながら少しだけアドバイスをさせていただくと、写真は理論と感覚をコントロールできて 初めて伝わる写真に繋がるので、まず理論のインプットをしっかり行うことで写真に対する視点とマインドが変化すると思います。今度は誰かの撮り方や色補正の方法全てを「盗んで」みましょう。それは決して「アイディアを横取りする」という意味ではなくて、良いレシピや参考書があれば実践して経験値を上げることと同じ意味で、結果的に自分の撮りたい写真に結びつくきっかけになれば結果オーライだと思うのです。涙の数だけ強くなれる、失敗は成功のもと、というように、変化や失敗を恐れずチャレンジを続けることでしか「自分の撮りたい写真」を見つけることができないのだと思います。

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ただシャッターを押すだけは誰でもできるので『想像以上』を感じてもらうには『体験してもらうこと』が大事だと思っていて、その時間もまるまる楽しんでいただけるようエンターテイナー精神で挑んでいます!

とても素敵な精神ですね!写真を撮るという作業を紐解いていくと、写真を撮るまでの過程で何が巻き起こっていたかという「体験」が大切ですよね。僕も同意です!

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逆に言うと自分の悩みは写真が進化していないんじゃないかというところだったりします。

いえいえ、進化って実は自分で決めるものじゃなくて「誰かの反応」だと思うんです。ポケモンみたいに急に外見が変化することってほぼありません。「俺、こんなに凄く成長したんだよ」って豪語する人ほど見向きされないように、本当の進化って写真が語ってくれると思うんです。それが見せ方の変化なのか、積み上げてきた写真の集大成なのか分かりませんが、Aさんの経験がきっといつか「凄くお良い写真だね」とか「レベルアップしたね」と大切な誰かに言ってもらえる日が来ることを願って、引き続き頑張ってください!

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「お客様のための写真」と「自分のための写真」を井上さんは分けて考えられたりしていますか?

勿論分けて考えていますよ!「お客様のための写真」はウェディングや仕事の写真、「自分のための写真」はキャンプですね!

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とある時期から、今の井上さんカラーが出てきているように感じました。写真一枚の見せ方もそうですが、なにかきっかけがあったのでしょうか?人を撮る距離感が、さらに踏み込んだ『ぐっとくる距離感』が生まれたように感じました。

はじめて海外フォトグラファーのワークショップを受けた時、かなり影響を受けました。今まで積み上げてきた自分の写真が嫌いになるほど、世界観に圧倒されたことを覚えています。そのフォトグラファーは被写体との関係性をキチンと写真に落とし込む方で、そのhowtoを知ったことが今のスタイルの糧になっているのは確かなことです。

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本当に主観というより客観?で撮っているような。「良いな」って思いながらシャッター切りつつ、でもその「良いな」は井上さん自身ものではないのでは?と感じるような。

そうなんです、仰る通りの気持ちで撮ってます。その大きな理由は「結婚式は誰のもの?」という考え方が大きく作用していて、フォトグラファーの作品を残すという作業よりも「どうしたら喜んでくれるかな」「写真を見返した時に何を感じてくれるのかな」と考えながら写真を撮っていると、自分の作品性を考える余裕なんて無いんですよね。「目の前で巻き起こることを撮る」ということは、「伝える」以上に「感じる」事なのです。だからこそ、日々何を見て、何を大切に考えて過ごすか が僕たちウェディングフォトグラファーには大切だと感じています。


【さいごに】

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。僕が10年間ウェディングフォトと真剣に向き合って辿り着いた(今の)「価値観」でしたが、いかがでしたか?

ウェディングフォトの技術を真剣に学べば、正直3ヶ月〜半年で「どんな現場も対応できるレベル」になることは間違いありません。ですが僕たちウェディングフォトグラファーにとって、技術レベルと同様に「一生大切にしてくれる写真」を第一に考える時間は必要不可欠なのです。この仕事をはじめた頃、とてもお世話になった方からふたつの事を教わりました。

「写真は人間力」

そして

「大義名分よりも、目の前の撮影に全力を」


この言葉を、皆さん自身の感性で解釈してみてください。きっと、思い当たる節があるでしょう。ここでは多くを語りませんが、ウェディングフォトを撮り続けている皆さんも同じ悩みと戦っていた、もしくは現在奮戦している方が多いのではないでしょうか。

皆さんに贈った言葉 と 頂いた言葉を糧にして、僕はこれからも日々学び続けます。良い写真が撮れたら、また写真談義に花を咲かせましょう。


-2020年5月初旬-

今はまだ、結婚式の写真を撮ることができない世の中ですが、いつか世界の夜は明けるはずです。

撮影するご家族の人生を「全力で」祝うことができる日を願って、今は学び続けてポジティブな日々を生きましょう!


いつかお会いできる日を楽しみにしています。
それではまた。

Syuheiinoue


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