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アメリカ観察記⑧大谷の最終回と新連載

2023年8月9日
アメリカでのMLB視察の三日目であり最終日。

前日はUCLAでUberがつかまらず大遅刻。

この日は予定をすべて午前中に終わらせ、
スマホで事前チェックインとUberの予約を済ませ、
野球に全集中できる状態を整えた。

40分くらいかけて徒歩でエンゼルスタジアムにつくと、なんだか様子がおかしい。

今日の先発投手は大谷翔平。

その事実を知って、なんだか俺の様子もおかしい。
リアル二刀流をリアル観戦できることにリアルを感じられてないリアル。

結果としては6回97球を投げ1失点。エンゼルスは4‐1で勝利し、10勝目を達成した。

10勝40本は史上初

野球が好きでプレーしたり観戦し続けてきた人間からしたらどう考えても歴史的瞬間で、それを現地で目撃できたことに興奮するんだけど、自分はそれ以上に安堵感が押し寄せてくるのを感じていた。

俺は間に合った。今回は間に合ったぞ。

出発しそうな電車にギリギリ乗れたとき、
〆切ギリギリでなんとかレポートを提出できたとき、
人は安堵する。

そして自分は大谷翔平に間に合って安堵している。

なぜ、何に対して安堵しているのか。今回はそれについて考えつつ、これからの大谷翔平をどう楽しむかを考えていきたい。


東京ドームでの後悔

2019年3月21日イチローが引退した

イチローと野茂英雄をみて野球を始めた自分は中学生の時に美術の授業で作成した砂絵をもって東京ドームへ。

イチローの最後の姿を見て大変感動したんだけど、
同時に強烈な後悔をすることとなった。

なぜ、バリバリ200本安打してるときのイチローを現地で観なかったのか。

東京ドームでは、みんな「イチローに打たせてあげて欲しい」とイチローを祈るように見ていた。そこにぬぐい切れない違和感があった。

イチローは、こんな細い選手が通用するわけないという下馬評を覆してタイトルを獲る男だ。
イチローは第1回WBCでアメリカに委縮している日本を鼓舞すべく先頭打者HRを打つ男だ。
イチローは見守られる存在ではない。
イチローは、トップバッターとして切り開いていく男だ。(その意味で引退後の活動はイチローらしくて最高だと思っている)

アスリートは生もの。今観ておかないと、一生味わえないものがある。自分はアメリカに行って観ておくべきだった。

もうこのような後悔はするまいと大阪に戻ってきたことがずっと心に残っている。

大谷翔平はギリギリ

大谷翔平は2018年にMLBに挑戦
本格的に二刀流を解禁したのが2021年。
今年で二刀流3年目。
働き方改革無視のフルスロットル労働。どう考えても打って投げて走ってバリバリやれるタイムリミットが近づいている。
二刀流・大谷翔平は今しかチャンスはない。
家族を説得し、夏休みにエンゼルスタジアムへ行くことを決意。
同じ轍は踏まない。

でも、懸念材料はいろいろとある。

2023年はWBCで日本が優勝。
その中心にいたのは大谷翔平。投打にわたって大車輪の活躍。
したがって、シーズン途中でケガで離脱もありうる話。
事実、夏休み直前の7月は当番回避もあり、いつまで体がもつのかわからない。

また、エンゼルスはポストシーズンに行けるか微妙で強いチームにトレードがあるのではないかと連日話題に。今シーズンをもって契約満了を迎えFAになるため、その前にトレードで高値で売るのではという情報も。

2023年8月の大谷翔平は心も体も契約もギリギリ。
離脱をするのかしないのか、チームに残るのか放出されるのか。
自分はアナハイム への振込完了メールを確認しながら胃がキリキリ。

無事、大谷翔平はエンゼルスに残り、自分が観戦した3試合にフル出場し、最終日にはリアル二刀流も見せてくれた。

なおエンゼルスは8月9日以外は負けまくりでポストシーズンを逃し、
大谷翔平自身も肘や腰のケガで、その日以降登板していない。

イチローの後悔から始まり、大谷の都合と俺の都合がギリギリ間に合ったのが8月9日なのだ。

騒がしいオフシーズン

2023年オフシーズン。手術の経過、移籍先の行方、史上初の2回目の万票でのMVPの獲得。受賞の瞬間にそばにいたデコピン(犬)など
大谷翔平は話題に事欠かない。
ここまでは通常運転というか、イメージ通りのみんなの大谷翔平。
ところがこのオフシーズンは今までのイメージを打ち壊すことが次々と起こった。

FAでドジャースと契約 悪の帝国を築く

10年7000万ドル(1000億円)の超大型契約でロサンゼルスドジャースへの移籍を発表。それはそれで凄いのだが、もっと凄いのは「俺の給料は後払い制にして、その分補強しろ。」「補強を怠らないということを条件に加えろ」「グラスノーと山本を獲れ」とドジャースに要求していたことが判明。
かつてこれほどまでの要求をした選手がいたのか。
金とバリューを使って選手を乱獲し、無敵チームを作るテレビゲーム状態。
アメリカではファンもアンチも大熱狂を巻き起こし、悪の帝国と揶揄される事態に。
大谷翔平はダークサイドに落ちたのか。今までにはない角度からの報道に野球好きはざわつく2022年12月。

大谷翔平はダークサイドに落ちたのか。


山本契約時。Xのトレンド

結婚

ドジャース移籍報道も落ち着き、さあいよいよシーズンに向けてという2023年2月29日。さらなるダイナマイトが打ち込まれる。

大谷翔平。Instagramで結婚発表。

ん?  
あ〜、、、

結婚!?

文章で発表し、世間をパニックにさせ、
記者会見では、肝心なことは何も語らず、
韓国ツアー前に、ドドンと画像公開。

世間が楽しむ間合いをとって最後に見せたいものを見せる。
このシナリオ書いたやつ読んでこい!!
最高すぎるんだよ!!

ナイキのジャージにパジャマ感がないのは中央2人だけ。


一平スキャンダル

この結婚報道と祝福ムードはじつは、前振りでしかなかった。

韓国ツアーの初戦終了後、突如出てきた一平賭博問題。
話は二転三転し、世間はざわざわ。

そんな中始まった試合は荒れに荒れて11−15のシーソーゲーム。
どうなるかわからない試合展開よりも、みんなが追いかけていたのは
一平のこと、大谷の奥さんのこと、顔出しした途端こんな報道が出て姿を表さなくなった一平の奥さんのこと、そして大谷のこと。
今後の展開にドキドキがとまらない。

少年誌での連載が終了し、青年誌で新連載

これまでの大谷翔平

これまでの大谷翔平は純粋に野球がうまくなりたい、日本一になりたい、世界一になりたいということを追い求め、その姿勢やプレーに多くの人が心惹かれていった。

言い換えるならば少年漫画の主人公である。

孫悟空のように「おめぇつえーな!!わくわくすっぞ!!」とより強い相手を求めて修行し、パワーアップし、倒していく。

報道から伝わってくる大谷のプライベートは、ほとんど精神と時の部屋。ひたすらパワーアップに時間を割く情報しか入ってこない。

流川楓のように「日本一になって、アメリカに行く」というマインド。

葛藤がなく純粋に戦うことを好み、対戦相手がインフレしていくジャンプの主人公のような部分があるかと思えばそれだけではない。

犬を飼い、野球をしてるから恋愛とかは興味ないですよという体(てい)をとりつつ、日本とアメリカで同じタイミングで同じ映画を再生し、電話をつなぎながら映画鑑賞をするというわかりにくい時間を過ごし、二人は近づいてんのか近づいてないのかもわかりにくい恋愛に、じれったくてキュンキュンしてしまう。これはあだち充の野球漫画そのものだ。

高校野球編から始まり、NPB編、MLB編と連載し、ついにスーパーサイヤ人4となったオオタニサンは二刀流で10勝40本を達成。アジア人初の本塁打王とMVP獲得。WBC優勝。これ以上ないエンディングと思いきや。
最後の一コマは愛する人への告白だったというしびれるラスト。

少年漫画『大谷翔平』は大団円で連載を終了したのだ。

この二人が15センチぐらい大きくなったらほぼ一緒のはず。

これからの大谷翔平

ドジャースに移籍した大谷翔平は少年漫画ではない。
ヤンジャン、ヤンマガ、ビックコミックスピリッツなどの青年漫画で新連載をスタートさせる。

大谷は精神と時の部屋から出る時が来た。
相手より強くなって勝つのではない。

ゴルゴのように身近な人間に裏切られ、巨額な金を狙われ、疑心暗鬼になりながらも、その中でミッションを完了させないといけない。

家族生活もすべてがスムーズにいくわけではないだろう。大谷はもちろんのこと、奥さんだって去年まではモデルもこなす日本代表レベルのアスリートだったわけだから、サポートするなかで色んな感情が沸き上がるに違いない。

もし成績が下がれば「大型契約しているのに・・・」「結婚なんかするから・・・」「もっと違う奥さんだったら・・・」という輩があふれるに決まっている。

それを振り払って、新しいスタイルを見つけ、仲間や家族と支えあい、紆余曲折を経てチャンピオンリングをとれることができるのか・・・

青年漫画『シン・大谷翔平』最高に面白そうじゃねーか!!

シン・大谷翔平を楽しもう

自分が8月9日に見た二刀流の大谷翔平はアイドルとしての大谷翔平だ。

ユニコーンという愛称が示すように偶像の存在であった。

いつまでも続くことはない一瞬の輝き、
線香花火が最後の最後に落ちる間際を見ることができた。

2回目の肘の手術を行い、2025年からは再び二刀流をするかもしれない。
でもそれは、アイドルとしての大谷ではない。

  • ふだん自分たちも味わっているような日常生活のごたごた

  • 有名人であれば大なり小なりある疑いの目

  • 大型契約ゆえの負けられないプレッシャー

  • 衰えと向き合い、右肩上がりにはいかない現実

そういったものをひっくるめてグラウンドに立つ人間臭い大谷翔平がそこにいるはずである。

自分が思うエンディングは有名な曼荼羅チャートをビリビリに破って
「野球が好き」という一言でプレーするキングカズみたいな野球選手になってほしいと思う次第である。

これからの大谷翔平。これまで以上に楽しめそうである。

これは少年漫画編で終わり。

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