求めてる回答じゃなかったらごめんなさい
知らない番号から電話が来ている。
マナーモードにしているスマホが、振動で少しづつ移動する。
出ようか。
出ないでおこうか。
その2択を迷っているうちに、3つ目の選択肢が浮かぶ。
『気づかない』だ。
やってしまった。
コトの発端は『人の相談にうっかり親身になる』をしたから。
親身になることが悪いことではないのも分かってる。
ただ、親身になることと責任をもつことが『紙一重』だと感じるようになってからは、冷たいようだけれど、なるべく親身になりすぎないようにしてきた。
いや、親身になること自体を避けていたと思う。
スマホの振動が止まった。
次の瞬間、立て続けにLINEが何件も入り、ディスプレイ画面に表示される。
マナーモードでLINEを受信をした時の「ブー」という一瞬の振動が、まるで電話が来ているように振動し続ける。すごい量だ。
緊急事態なのかもしれない。
パニックなのかもしれない。
どうする?
最初にうっかり親身になってしまった後なので、急に手のひら返したように(気づかないフリ)という名の『無視』をすることの方が、むしろ僕のストレスになりはしないか?
自分で自分に失望しないか?
電話をかけ直した方がいい?
「あ、もしもし?ごめん電話出られなくて。ちょっと最初親身になって話を聞かせてはもらったんだけど、僕も常に余裕があるわけじゃないから、頻繁には話を聞いてあげられなさそうだなーと思って、さっき電話もらった時にスマホ持ってたんだけど、気づかないフリしちゃったんだ」
ってちゃんと言えるかな?
いや、そんなこと言うなら出ない方がいいだろうな。
じゃあ、メッセージ読もうか。うーん、でもすごい量きてるっぽいしなあどうしようかうーん…
ピンポーン
心臓がドクッ!と跳ねた。
「コンチハー!宅急便デスー!」
…良かった。
びっくりした。うん。これだけびっくりするってことは、やっぱり僕の中のキャパシティはもうオーバーしているようだ。
ガチャ
「こちらにサインかハンコ、オネガイシマース!…ハイ、ドウモアザシター!」
元気なおじさんだった。
笑顔の中に、仕事中独特の『憂い』みたいなものがない。
こんな人もいるのか。そりゃいるか。いつの時代だって、こういう人きっといるんだよな。
あれ。なんだろ。
たぶんこれは「元気をもらう」というやつだ。
こんな元気のもらい方もあるのか。
受け取ったAmazonのダンボールを適当に置いて、LINEアプリを開く。
熟読して、丁寧に返信をする。
さっき元気をもらった分、少し長い文になった。相手側の長文に比べたら半分以下の長さではあるけれど。
何度か読み返して、誤字はないか、文脈のおかしな箇所はないか、簡潔で分かりやすい内容か、相手にとって不快になる部分はないか、などをチェックし、返信する。
すぐ既読になった。
「申し訳ないです。
ご返信ありがとうございました。」
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