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クラスメイトのSちゃん

小学生の頃、クラスで1番のお嬢様と認識されていたSちゃんのことをたまに思い出す。
学区で1番高級なマンションに住んでいて、ツヤツヤの毛並みのマルチーズを飼っていた。
毎日お母さんにヘアアレンジしてもらっていて、サラサラの長い髪がポニーテールやハーフアップ、三つ編みなどに姿を変え、リボンやバレッタ、カラフルなヘアゴムなど様々なヘアアクセサリーで飾られていた。
他の子のようにイオンで買った安いTシャツにジーンズのようなラフな服装はせず、いつもブラウスに膝丈スカートといった、絵に描いたようなお嬢様ファッションだった。
ランドセルもみんなと違う横長のシックなデザインで、防災ずきんもテディベア柄で他の子のそれの倍くらい厚みがあった。
体育はあまり得意ではなかったけど、それ以外の教科はクラスで1番優秀だった。
毎年正月には、愛犬とのツーショット写真がプリントされた年賀状をクラスメイト全員と先生に送っていた。

そんなSちゃんは、団地住みが過半数を占める治安の悪い公立小学校の中では浮いてしまっていた。
決して嫌われているわけではなかったけど、私を含めみんななんとなく距離を置き、何かにつけて「Sちゃんはお嬢様だから」「Sちゃんはお金持ちだから」と無邪気に言った。Sちゃんと特別仲の良い子はいなかった。
Sちゃんは何も言わなかったけど、私たちがSちゃんを「違う世界の人間」として扱う時、寂しそうな顔をしているのに私は気付いていた。
少し気の毒に思いつつも、ずっと気付かないフリをしていた。

私もSちゃんとは違う理由とはいえクラスでは浮いていたし学校が大嫌いだったけど、Sちゃんも同じくらい居心地の悪さを感じていたのかもしれない、と今さら思う。
私が転校したからSちゃんのその後は全く知らない。
当時のマルチーズはもう死んでしまったかもしれないけど、今もどこかでハガキの年賀状をみんなに送っているような気がする。
そのみんなは、私たちとは違ってちゃんとSちゃんに向き合ってくれる人たちだったら良いなと思う。
見て見ぬフリをし続けていた私が言うべきことではないのかもしれないけれど。

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