ひとりぼっちの宇宙人─ウルトラセブン視聴記─　明日を捜せ

ひとりぼっちの宇宙人 
─シューチョの『ウルトラセブン』視聴記─
第23話「明日を捜せ」[C]

C類は「主人公ダン以外の登場人物にまつわる挿話群」です。

ゲスト配役の占い師・安井がおもしろい。優れた予知能力によってシャドー星人の企みを暴くも、彼らにそのことを知られ、狙われます。「私の予言は外れたことがない」と語りつつ「殺される！」と怯える、自信と小心を併せ持つ道化師的なキャラクター。本話のラストではその予知能力が消えてしまうも、「超能力がなくなっちまった…イヤァーッ、超能力がなくなっちまった！［ということは］もう逃げずに済むんだ俺は…ハーッハッハッ…」と叫んで大はしゃぎ。本話は「キリヤマの話」としてC類なのですが、安井の鮮烈な印象に終始支えられてもいます。

キリヤマは、「○三（まるさん）倉庫が爆発する」「今日がダメなら明日（あした）、そう、明日を捜しゃあいいんですよ！」という安井の言葉を一人真に受け、安井の予知能力を信じてみたい、と言って、なんと、休暇を取って単独行動に出ようとします。マナベ参謀は呆れつつも休憩願を受諾、護身用武器も貸し与え、第13話「V3から来た男」でも見せたキリヤマへの気遣いも忘れない。冷静沈着なキリヤマが真逆な性格の安井の発言に動かされるユーモアが愉快で、何だかいいんですよね。

キリヤマが出かけてから、ウルトラホーク2号で1週間のパトロールを終えたダンが基地に戻ってきます。つまり本話前半の一連の安井の予知の話の間、彼は不在で、そこには絡まない。一つの事象に対して安井の予知能力とダンの超能力とがかぶらないような運びになっています。つまり、通常なら、シャドー星人についてもまずダンがモノローグで「おかしいぞ？」とか何かつぶやいて…というのが典型的な進行になりましょうが、本話では安井がそこを担うわけですから、しばらくダンが不在になっているのだ、と読めます。

その代わり、安井はセブンとはしっかり絡むのです。超能力者同士の交流というわけです。

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「降伏する」と嘘をつき、それを受け入れようとセブンが足を止めた隙に怪獣ガブラを差し向けるシャドー星人。ガブラをいったんアイスラッガーで倒し、再びにシャドー円盤ににじり寄るセブン。

シャドー星人「待ってくれ、今度はほんとうに降伏する。（拉致した）安井を返すから許してくれ」

安井「（円盤から出てきて）セブーン！」

右手を差し出し安井を掌に乗せ、声をかけるセブン。

セブン「ケガはないか？」

安井「うん、大丈夫だ。それよりも油断しちゃダメだぞ。奴らはけっして降伏したんじゃないんだ」

頷くセブンの背後、ガブラの斬られた首だけがセブンに向かって飛んでくる。

安井「あぁ！セブン、危ない！」
ガブラの首を左拳で叩き落とし、安井を地上に下ろすセブン。

安井「あぁっ…（再び）セブン、危ない！」

再び飛んできたガブラの首がセブンの右肩に噛みつく。これまでにない激しい苦悶の声を発するセブン。

安井「そいつの歯には毒があるぞ、早く、早く離せ！……そうだ、円盤をやっつけろ。その首は円盤から操作してるんだ」

セブン、安井の言葉を受け右手人差し指から光のショットを発射して円盤を爆破。

安井「うあーっ！（歓声）」
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このように、安井とセブンの交信はけっこう長く、第15話「ウルトラ警備隊（西へ）」でキングジョーを羽交い締めにするセブンとライトンR30弾を撃とうとする隊員たちの交信よりもはるかに密であり、「セブン暗殺計画（後編）」でウルトラ警備隊とタケナカ参謀がマグネリウムエネルギーの秘密をセブンの発する電波から解読したりする件よりもずっと直接的だといえます。ひょっとするとセブンと最も多く交信した人間は本話の安井なのかもしれません。セブンの方から安井に「ケガはないか？」と声をかけてもいます。セブンが人間に話しかけるというのも珍しい。私がすぐ思い出せる他の例として第4話「マックス号応答せよ」でタケナカ参謀やアンヌに言葉をかける場面がありますが、このときのセブンは等身大。巨人のセブンが人間と交流する安井との場面は合成映像によって描かれ、特撮としても有意義です。むしろ『ウルトラセブン』らしくないジュブナイル性が出ているとも言えます。

前投稿でも触れたキリヤマとダンの関係について、本話では彼らの一対一の交流がさらに少し踏み込んで描かれます。「ダンじゃないか［…中略…］」「隊長と一緒に明日を捜したくなりました［…後略…］」──○三倉庫で会った二人が交わす会話の声と表情の奥に、相互の信頼、ダンの尊敬、キリヤマの愛を感じとれます。短く静かな場面ながら、ウルトラ警備隊間の他の人間関係の組み合わせからは出てこないような固有の質感を伴っているようにも見え、前話で浮かび上がった「キリヤマはダンがセブンであることを知っていた？」という想像をも十分に後押しします（注）。

最後に、タイトル「明日を捜せ」について。この、安井の台詞にも出てくる言い回し、助詞が「を」なのが粋ですね。「明日＝目的のものを捜し当てることのできる日」という意味にとれば、その日である「明日（はいつなのか）を」捜す、という筋が通ります。ただ、本編では、キリヤマが○三倉庫爆発の予兆を捜す期間は、安井と会った次の日つまり「明日」の一日だけなので、普通に「明日捜せ」になっている（笑）。

注…前投稿にも書いたように、「キリヤマは知っていた」説を私は採りません。