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ひとりぼっちの宇宙人─ウルトラセブン視聴記─ 闇に光る目

ひとりぼっちの宇宙人 
─シューチョの『ウルトラセブン』視聴記─
第16話「闇に光る目」[A]


ダン=セブンが人類と星人との間に入ってするネゴシエートが成功する唯一のエピソード。『ウルトラセブン』の本質を語るために欠かせない、重要な挿話の1つです。
 
調査用無人ロケット「さくら9号」を侵略と誤解したアンノン星人は怒って、その「さくら9号」を使って地球に飛来。
 
キリヤマ「おまえは地球に何しに来たんだ」
アンノン「われわれのアンノン星を攻撃して来た地球を破滅させにだ」
キリヤマ「攻撃だって?それは違う。われわれが宇宙船を打ち上げたのは、宇宙の平和利用のためだったんだ」
アンノン「地球人の言うことは信じられない」
 
そりゃそうでしょう。どう見ても非は地球人の方にあります。
 
セブン「アンノン、キリヤマが言ったことは嘘ではない。地球人は、決して君の星を侵略したのではないのだ」
アンノン「ほんとうなのだな」
セブン「私も同じ宇宙人だ。嘘は言わない」
アンノン「ようし。セブンの言うことは信用しよう。しかし、アンノン星は、いかなる星からの侵略目標にもさせない」
 
「ダーク・ゾーン」「ウルトラ警備隊西へ」「超兵器R1号」「盗まれたウルトラアイ」「ノンマルトの使者」等々で、ダン=セブンは人類と星人(注1)のあいだに立って事態を何とかしようとするも(各挿話の事情は様々違えどそれぞれの様々な意味合いにおいて)ことごとく失敗します。だからこそ、そのドラマに深みがあり、そこに表れる「ダンとのダイアローグ」に苦い後味が残る。……とここまでは幸い今日の多くの人に理解されていると思われます。そこに、本挿話「闇に光る目」での唯一の成功例を加えることで、『ウルトラセブン』の作品世界の総体へ近づくことができます。もちろん「うまくいったこともあるんだよ〜」と知ったかぶるためではなく(笑)、成功したのが「ダンではなくセブンだった」ということを心に留めるということです。上記の通り、本挿話では「セブンとのダイアローグ」になっています。セブンが、《ダン=セブンの二重性》の1つである《セブンのセブン性》を十分に発揮しえたのです。みごとな活性フィクションです。

アンノンと対話するセブンの声が(少しエコーが効いているものの)ダンの声と同一であることも重要ですね。ダン=セブンという「同一型」のフィクションが、視聴(鑑賞)者に対して実に自然に表出されることになります。「同じ声に登場人物が気づかないのはおかしいのではないか」とかいう疑問の方を主軸に据えてしまうとフィクションの不活性化を招きます。

注1…「人類以外の(人型)知的生命体」の総称として「星人」を用いることにしています。地球に棲むノンマルトやケロニアを「宇宙人」とは呼びにくく、かといって「地球人」とするのはやはり紛らわしい。でも、地球も星ですから「星人」ならありかなと。


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