見出し画像

最初の個展「チャイルド・トリップ」について

2019年の3月に初めての個展をグラスアートふくえんにて開催しました。普段はガラス作品を扱っている下北沢にあるこのギャラリーは、僕が東京造形大学を中退して、何をしたらいいのか途方に暮れていた頃からちゅくちょく観に通っていたギャラリーです。実用には向かないような重くて、カラフルで美しい吹きガラスの作品が並んでいました。

画像1

「チャイルド・トリップ」と名付けたこの個展では、子どもの頃の気持ちをもう一度感じようというのがテーマでした。本来、粘土という素材は、気の持ち用でどんな形にもつくることが出来ますし、焼く過程で沢山の色を使うことが可能です。そこに暗黙のルールを作ってしまうのは大人たちです。そのルールの外側で遊ぶこと、そして、それを観る方達の反応を確かめることに意味がありました。

画像2

作品の構想を練る段階では、スケッチブックに沢山描き込みをしました。最終的に立体に起こすことを目的に描いてしまうと、重力のことを考えないといけなくなり、作品が縮こまってしまうので、ただ、描きたいものを描き、立体になることは後回しにしました。

画像3

画像4

画像5

画像6

重力を無視して描いたスケッチをその平面性を保ったまま、立体に起こすことは、とても難しいことでしたが、それは同時に、イラストの中から現れたような面白さがあると考えました。とはいえ、立体作品にするには重力を無視することは出来ませんから、本当は立体なんだけど、平面的に見えるという仕掛け(技術)がひつようになりました。そこで、ずっと頭の片隅にあったのが同じ笠間陶芸大学校で勉強した丸山純くんの作品「輪と騎手」でした。この作品には立体としての力強さも、それに反する平面性も備わっています。平面的な輪が縦にリズム良く浮いて見える様は観ていてとても不思議でした。実際、輪の裏側は針金で固定されています。

画像7

僕の場合は丸山くんのように異素材を使い固定するというのは感覚として向いていなくて、あくまでも一体型で作ることになりました。

画像8

そうして、誕生したコンタクターが左から「PLANT」「WARP」「Magic」です。以前の作風とは違い、だいぶカラフルになりました。そして、電動ロクロを使わず、手びねりで一から作る方針に転換したことで、ちょっとした頭の角度であったり、スケッチの段階で描いていた緩い線を活かすことが可能になり、色んな制約から解放されました。それに伴い、コンタクターの目は益々、変化に富むようになりました。

画像9

亀の上にコンタクターが乗っているこの作品は「Life goes on」というタイトルをつけました。当時、製作中はずっとGUNDAM SEEDのアニメを流していました。この亀の上に乗っているコンタクターはGUNDAM SEEDに出てくるヒロインのラクス・クラインがモチーフになっています。亀はそのラクスが搭乗している戦艦ということになります。この少しメカニックな亀には「Life goes on」「全知全能」「オアシス薬局」といった言葉が描かれています。オアシス薬局は僕が病院の心療内科に通っていて、その隣にあった薬局の名前です。コンタクターは手に鏡をもっており、そこには未来の都市の姿が描かれています。はたから見ると竜宮城にいくロマンのある作品に見えますが、どちらかというと、先へ進むことへの不安感や、期待感が入り混じった心境が生んだ作品です。

画像10

「SOUND ONLY」という作品ではネオン街や観覧車や歯車といった、現代の都会の風景を思わせるモチーフを混ぜています。上から下まで機械化されたコンタクターはヘッドホンをして、ちょっと愉しげです。この作品を作ってた当時は、はるまきごはん(ボカロP)のアスターという曲のMVをよく観てました。このコンタクターを境にサイバーパンク系の作風のコンタクターがいくつか登場するようになります。

画像11

こちら左のコンタクターは「Log out」という作品です。目はパソコンの画面を見ているイメージです。少し観音様みたいなところもあります。

画像12

この双子のコンタクター「Celestial Garden」という作品については後ほど、次の機会に言葉に起こします。

画像13

画像14

ただ家庭用のプリンターで印刷しただけのイラストも展示しました。紙っぺらをただ壁に貼るのは芸がなかったので、次の課題となりました。

「チャイルド•トリップ」というタイトルの展示でしたが、展示全体を通して、割りとシリアスな内容になっちゃったというのが正直なところです。コンタクターが色んな面で劇的に変わったことで、僕の上絵の技術だったりが追いつかず、展示後何度も目を描いては焼き直しをすることになりました。コンタクターを一点ごとにタイトルをつけるようになったのもこの展示が最初です。

お客さんの反応は皆、それぞれ言いたいことを言って帰っていくのが新鮮で面白かったです。ギャラリーが通り沿いで、しかもガラス張りで外からも展示がよく見えるので、猫を抱いてくる人や、魚屋さんに寄ったその足で観にきた人、「亀は縁起がいいし、地球の上に2人いるのは子宝に恵まれる感じがするから中国でウケるよ」とか言われたり、そうかと思えば「食器作っていればいい」的な事を言われて、僕が頭にきて反論したりとか、今となっては凄くいい思い出です。

画像15

これは、お礼状として描いたイラストです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?