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チェコ買い付け日記⑪「妄想でできた村」

Mirošovice駅からフルシツェまで20分ほど歩きます。
小さな駅を出てすぐにビュンビュンと車が通る高速道路のような高架をくぐり、あとはひたすら田舎道を歩きます。
本当に長閑な場所です。
途中高校生くらいの男の子とすれ違い、2、3台の車が通り過ぎました。
気温は25C°くらい。日差しが強く、半袖になっても上り坂では汗をかきます。
ところが日陰に入るととても涼しく、シャツを羽織りたくなるのです。
脱いだり着たり写真を撮ったりスマホで地図を見たり…忙しく歩きます。

フルシツェの村に入りました。
ゆったりとした家が並びます。
整えられた広めの芝生や植栽、道にこぼれるように咲く白い花、ぎっしりと積まれた薪の山、煙突のついた赤い屋根、庭に放された鶏や羊、池につがいで浮かぶアヒル。
書いても書いてもキリがないくらい全てが「こういうところに住みたい」という憧れの具現化です。
ここは私の妄想でできた場所なのではないか…。
フルシツェをもう一度訪れたいと思った理由はラダの記念館だけではなく、この村をまた歩きたかったからでした。
多分チェコの至るところにこんな村があるのでしょう。

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⑧の『Mikeš』の日記でも書いたように、ヨゼフ・ラダはフルシツェの村を舞台にしたお話をいくつか書いています。
お話の中では動物がしゃべったり、おばけやかっぱが人間と近所付き合いをしながら暮らしています。
大人がそんな話をしていたら遠巻きに見られるような世界です。
でもフルシツェを歩いていると、ここではそれが起こっても不思議ではないと思えるのです。
今、目の前を横切った猫に「どこから来たの?」と聞かれても、私は平然と「日本から」と答えるかもしれません。

村のメインストリートに来ました。
メインストリートと言ってもバス通りに役場と教会、レストランが2軒、あとは小さな雑貨屋などがあるだけです。
ちょうど昼時だったのでレストランに入ることにしました。


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