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バスの終点で降りる時ボタン押さないと異世界に連れてかれそう
一人暮らしな私に、母から連絡が届いた。
「父の車の車検がめっちゃ高額なので、思い切って買い替えました。」
父の車は白色のファミリーカー(車に疎いのでこれ以上情報が分からない)で、私は一人っ子なのに8人乗りの大きな車だった。…何故?
買ってからもう10年くらいになる気がする。
あの車は後ろの自動ドアがぶっ壊れている。もちろん自動で開け閉めなんかできないので、手動でドアを開け閉めするのだが、閉める時にコツが必要で、体当たりをするように閉めないと半ドアになる。
私が帰省中その車を父から借り、友人とドライブに行こうとなると、私は役員車の運転手のように閉めに行かねばならないのも、今となっては良い思い出となってしまった。
また、あの車は私がCDを借りてきてメモリーした曲がたくさん入っていた。
当時、私が音楽を聴く媒体はウォークマンと車の2つしかなかったので、ツタヤで借りたCDを私が車に乗るたびに次々とメモリーした。
サザンやブルーハーツ、宇多田ヒカルなどなど…ドライブに最適だと思った曲をメモリーした。
中にはクリープハイプやヤバTといった父世代には絶対馴染みのない曲も入れていた。
家族全員でドライブの時は、クリープハイプのアダルトな歌詞が流れたり、ヤバTの「キッス!キッス!キッス!キッス!」が流れたり、あの頃の私の心は随分剛毛であった。
しかしながら父も年齢に合わない西野カナのCDをメモリーしていたので、人のことは言えない。
西野カナのどんな歌詞に共感してレンタルしたのか、今度帰省した時問いただしてやろうと思う。
後日、母からまた連絡が来た。
「納車しました。」
写真も2つ送られてきた。
1枚目はbeforeの写真として10年間乗った愛着のある白のファミリーカーと、にこやかな父のツーショット。ボロボロの車とだる着の父、これこそ変わらない家族の姿というものである。
2枚目はafterの写真として、新しい綺麗な白のファミリーカーと、それに乗るだる着の父。
…え、白のファミリーカー?
車種は違うらしいが、白色の8人乗りという全く同じカテゴリーに属する車を買っていた。
何故だ父、私は一人っ子だし、というかもうひとり立ちしているし、母としか乗らないだろう。
荷物も乗せて5人乗りで事足りるではないか。なんならたまに街中で見かけるあの2人乗りのちいちゃな車でも事足りるではないか。
いや、同じカテゴリーとかどうでもいいくらい乗り心地がめちゃくちゃ良いのかもしれない。そうだったら今度謝ろうと思う。
なんにせよ、乗るの楽しみだなぁ。
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