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一流に触れるということ〜畳の未来〜

一流の人というのは周りの人まで変えてしまうのだなあと感じた。

先日、畳の研修のため熊本県八代市へ行った。
畳の製織工程の基礎的な知識及び、実際に藺草(いぐさ)農家を訪ねての製織体験が主な研修内容だ。

基礎知識では、座学で、藺草を刈り取った後から製織するまでの工程を詳しく学んだ。
工程ごとに質問を受け付けており、よく手が上がった。


様々な質問が飛び交った。


座学研修の翌日、参加者で班分けされ、トップクラスの藺草農家を訪ねた。

畳表(畳の表面のゴザ)を作る際、藺草農家が刈り取りから製織までを行う。
刈り取った藺草は乾燥や泥染という工程を踏む。
泥の匂いと藺草の匂いが合わさることで、あの畳特有のいい香りになるのだ。

乾燥した藺草はこうやって保存される。


乾燥させた藺草は「選別」という作業をするため水分を入れる。
良い藺草を育てることはもちろん大事だが、「選別」によって仕上がりの良さが決まると言っても過言ではない。
この工程では黒ずんでいたり欠けていたりする藺草を抜いていく。その作業をしやすくする兼仕上がりをよくするための「加湿」がとても重要だ。

どのぐらい重要かというと、エヴァンゲリオンの綾波レイくらい重要だ。本当にそれくらい重要。重要だ。

そこまで重要と言っても特別なことをするわけではない。
ただホースから出る霧を並べた藺草に満遍なく吹きかけるだけだ。
ただ量が難しい。雨が降っている、降った後だ、晴れた日だ、寒い日だ、など天候によって量を変えなくてはならないのだ。それが本当に難しいのだが、うまくできるからこそトップクラスなのだ。

加湿の後は上下を少しカットし、状態の良くない藺草を抜いていく。

上部、中部、下部を回しながら見てゆく。

抜き終わったら藺草の束を持ち上げ、折れているものを抜いていく。

ここまでできたら機械にセットする。

製織のためのマシン

これが製織するための機械である。
ものすごく簡単に説明すると、

まず両サイドに井草をセットする。
電源を入れると、真ん中にある無数の糸は、偶数本目だけ手前に開き、奇数本目だけ奥に開く。その開いた中へセットした藺草が勢いよく飛び出して収まる。
すると次は、偶数本目は奥へ、奇数本目は手前へ開く。
その間を藺草が駆け抜ける。
これを何度も繰り返し畳表は完成するのだ。

その後仕上げの作業をする。

専用の器具を用いてほつれた藺草や色が悪い藺草を切ったり引っ張ったりして抜いていく。

こうして最高級の畳表ができるのである。
(畳表にはランクが細かく設定されている)

今回訪れた井草農家の方は本当に一流だった。
藺草を育て、加工して織るまでに一切の妥協を許さない。
そんな人から直接教わり、畳表への想いなども聞けた。
するとどうだろう。自分の気持ちまで変わってしまったのだ。
畳へ向き合う気持ちがこれまでとはまるで違うし、仕事に対する熱意も増して、人間的に少しだけ成長できたように思えた。

一流のモノに触れるのが大事だというのは知っていたし、触れるため美術館にも行ったりしたが、それだけではダメなんだと痛感した。
一流のモノだけでなく、一流の人とも関わらないと真に成長はできないのだ。
そんなことも思える素晴らしい研修だった。

いつか自分も誰かを変えるくらいの人間に成長できるのだろうか。
そんなこと考えたってわかんねえや。
ただ今をがんばるだけだぜ。

今回製織した畳表を持って記念撮影。

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