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いも虫と愉快な仲間たち (第1話〜第3話 )

第1話 いも虫のおつかい

いも虫君はお母さんからお使いを頼まれました。
彼にとって初めてのお使いです。
道順はお母さんと何度も買い物をしているのでちゃんと覚えています。
ところが途中まで行ったところで蟻さん達の長い長い行列に遭遇してしまいました。

🐛(いも虫)
蟻さん、蟻さん。
蟻さん達のこの長が~い行列はいつ終わるの?

🐜(蟻さん)
おや、君はいも虫君かい、坊主一人か?
お父さん達は一緒じゃないのかい。

🐛(いも虫)
うん、おいら一人だよ。お母さんのお使いで隣町まで買い物にいく途中さ。
そしたら、蟻さん達のこの長い行列が前に塞がっていてさ、ここを通れないんだよ。

🐜(蟻さん)
そうかそれは悪い事したな。
実は、俺たちもよくわかっちゃいないんだが、何でも俺たちの棲みかを一斉にここから少し離れた村に引っ越すみたいだ。
今日は朝早くからこうしていろいろ荷物を運びながら大移動をしてるのさ。
だからしばらくこの行列は途切れないと思うから諦めて別んとこ探しな。
皆んな気が高ぶってるから気をつけないと、無理に横切ったりすると襲い掛かられて怪我するぞ。

🐛(いも虫)
そうなの、蟻さん。
でもおいら、お母さんからこの道しか教えてもらってないからここを通っていくしかないんだ。
弱ったな。

🐜(蟻さん)
そうか、それは困ったな。
坊主のためにここを空けてやりたいのはやまやまだけど、隊列を乱すことになるから勝手なまねはできないしな。

ここで待ってても日が暮れるかも知れないぜ。

おっとぐずぐずしちゃあいられねえ。
じゃあ、こうしよう、もう少しすると赤い旗を持ってる仲間がくるから声をかけてみな。
旗を持ってる蟻は偉いんだぜ。もしかしたらこの辺の地理に詳しいかもしれねえぞ。
じゃあな、坊主。
頑張れよ。

🐛(いも虫)
蟻さん、ありがとう。

え~と、赤い旗?え~と、どこだろう?

あ、赤い旗の蟻さんだ。
蟻さん、蟻さん。
蟻さん達のこの長が~い行列はいつ終わるの?

🐜(蟻さん)
おや、いも虫坊主かい、なんの用だい。
え、この行列がいつ終わるかって、そうだな、今日は大所帯全員の引っ越しだから日が暮れる頃まではかかるだろうな。

🐛(いも虫)
え、そんなに。
困ったな。
そうだ、さっきの蟻さんに聞いたんだけど
赤ありさんは隣町に行く他の道に詳しいって聞いたんだけど知ってたら教えてよ。おいらお使いが遅れるとお母さんに叱られるんだ。

🐜(蟻さん)
他の近道ってことか。う~ん、それはこの行列を迂回するってことになるんだけど、まだここは真ん中地点だからな。
迂回するにしても、どっちも同じ位だから、ここで辛抱強く最後まで待ってたほうがいいかもな。

🐛(いも虫)
そんな、お使いができないとお母さんに怒られる。おいら、おいら。。え~ん。

🐜(蟻さん)
おい、坊主、泣くんじゃあねえ。
泣かれてもどうしようもないぜ。
俺たちも今日のうちに引越ししなきゃあならねえんだ。
おめえの頼みごとなんか聞いてる場合じゃあないんだ。
じゃあな坊主。

おいおい泣くなって!
しょうがないな、じゃあこうしよう。
もう少しすると青い旗を持ってる仲間がくるから、そいつに声をかけてみな。
そいつは頭が切れるやつでな、何かいい方法を教えてくれるかも知れないぞ。

🐛(いも虫)
え、そうなの。蟻さんありがとう。

え~と、青い旗?え~と、どこだろう?

あ、青い旗の蟻さんだ。
蟻さん、蟻さん。
おいらお使いでこの道を通りたいんけど、蟻さん達の行列でここを通れないんだ。
どっちに廻っても長~い、長~い行列だから通り過ぎるのを待たなきゃならないって、赤蟻さんに言われたんだ。
それじゃあ、おいら、お使いに間に合わなくなっちゃうんだ。青蟻さん、何とかなりませんか。

🐜(蟻さん)
そうかそれは可哀想だね。
だけどこの行列を停めて、坊主を通してやることはできないね。規則だからね。

そうか、初めてのお使いか、えらいね。
何とかしてあげたいけどね。う~ん。

そうだ、じゃあ、こうしよう。

この先に窪地があった筈だ。
確かそこには大きめの枯れ木が横たわっていると思うんだ。
俺たちは枯れ木の上を横切って行くはずなので、その枯れ木の下の窪地を潜っていけばあっちの道に出られるかも知れないぜ。

🐛(いも虫)
え、ほんと蟻さん、教えてくれて有難う。

え~と、窪地ってどこにあるんだろう。え〜と、確かあっちだよね。
あ、あそこだ!確かに枯れ木の上を沢山の蟻さんたちが渡っているぞ。
じゃあ、その下を潜って行けばよいのか、よ〜し。

わあ〜い、向こう側の新しい道を見つけたぞ。
あの青い旗の蟻さんってすごいな。
誰も教えてくれなかった方法を知っているんだもんね。
すごいよ、尊敬しちゃうな。
あ、青い旗がもう遠くの方へ行っちまった。
有難う、有難う。

👀:
こうして、いも虫坊主は無事にお使いに間に合って、そしてお母さんに褒められました。
もちろんご褒美には蟻さんがデザインされた青い旗を買ってもらったとさ。

ーおしまいーー


第2話 いも虫の勘違い

ある金持ちの家の広い庭園の真ん中に作られた大きな池には金魚達がたくさん泳いでいました。
少し反抗期のいも虫は、それを上から覗いていました。

🐛(いも虫)
ぶくぶく、ブクブク。
どうして君たち金魚たちは、ぶくぶくしてるんだい。
目玉がぶくぶくしてたり、胴体の一部をぶくぶくしてたり、なかには頭もぶくぶくさせちゃったりしてさ。おまけに尻尾まで変な形じゃん。
色だって、赤だの白だの黄色だのと統一感がないしさ。
もしかしたら、そのぶくぶく感が似合ってて可愛いと思ってるのかい。

🐠(金魚さん)
え、君は失礼な奴だな。いったい君は誰なんだい。

🐛(いも虫)
おいら、いも虫だよ。
上から覗いていたら、君たちがあまりに変てこりんなぶくぶくをしてるから声を掛けたくなったんだよ。

🐠(金魚さん)
何を、ぶくぶく・ぶくぶくとさっきからうるさいよ。

🐛(いも虫)
だって、ぶくぶくなんだもん。

おいら達も生まれた時からぶくぶくはしてるけどさ、体全体に統一感がある美しいぶくぶくさ。
君たちの変てこりんなぶくぶくは、どう見たってバランスが良くないぶくぶくだと思うよ。
美しさってバランスなんだよ。

🐠(金魚さん)
なにを、いも虫のくせに生意気な奴め。
バランスの良くないぶくぶくだって。
俺たち金魚だって昔はスッキリしてたんだぜ。

なのに人間たちがいつ頃からは知らないが、
面白がって俺たちの一部をいじくり回して、こんなおかしな形にさせちまったのさ。
何でも珍しい形だと高価で取引されるらしく、競ってぶくぶくにしたのさ。
人間というやつは欲に絡むとろくな事をしない。
馬鹿にするのもいい加減にしなよ。

🐛(いも虫)
え、そうなんだ。好きでぶくぶくにしてたんじゃあなかったんだ。
ほんとうは嫌なんだけど人間に虐められてしまってぶくぶくになったんだね。
そうだったのか。
ごめんね、思い違いをしちゃつて。

🐠(金魚さん)
いいんだよ、俺たちはもう諦めてるのさ。
ぶくぶくにされないのは、いい金魚じゃないとまで言われてさ、
プライドはもうとっくの昔に捨ててるんだ。
それより君たちはうらやましいよ、君が言うようにいも虫は、体全体で均整が取れていて、どこから見ても綺麗なぶくぶくだよね。

🐛(いも虫)
有難う。褒めてもらって嬉しいな、照れるな。
まあ、おいら達も人間には嫌な目で見られてるし毛嫌いするやつが多いんだ。
おいら達のこの均整のとれた美しいぶくぶくのよさが、あいつらにはわからないのさ。

もっとも、おいら達の体の一部を変な風にぶくぶくにされて遊ばれたらと思うとぞっとするよ。
何もされないでよかったよ。

金魚さんたち、ごめんね、勘違いしてて。
君たちに同情しちゃうな。

🐠(金魚さん)
いやあ、誤解が溶けてよかったよ。
まあ人間たちも、まかり間違っても君たちいも虫の一部をぶくぶくにしようとは思っていないと思うよ。
ぶくぶくにする意味がないからね。
今後ずっと安心しててよいと思うよ。

🐛(いも虫)
そう言ってくれて有難う。安心した。
じゃあ金魚さんたち、これからは仲良くしていこうね。バイバイ。

ーーおしまいーー

第3話 いも虫の悩み相談

森に住む年頃のふくろうさんはどうやら恋をしてしまったようです。
いも虫はうまく相談に乗ってあげられるのでしょうか。

🐛(いも虫)
あれ、君は夜に活動するふくろうさんじゃないの。
もう朝なのにどうしてそこにいるの?まわりは明るくなってるよ。

もしかしておいらを狙っているのかい。
おいら、美味しくないいも虫だよ。

🦉(フクロウさん)
ははぁ、心配しないでよ、いも虫君。
僕は君を食べたりしないよ、安心して。
実は最近眠れなくってね。このまま家に帰っても眠れないからぼんやりしてたら、いつのまにか朝になっていたんだ。

🐛(いも虫)
へぇ、ふくろうさんでも眠れない日ってあるんだ。何か悩み事でもあるのかい。
悩み事があるなんて、俺たちいも虫とあまり変わらないんだね。

でも、ふくろうさんって陰キャラみたいだけれど結構モテてるんじゃん。
この前、ふくろうをモチーフにしたアパレルシャツが販売されてたよ。
結構カワキャラになってて人気があったみたいだよ。

ほんとうらやましいよ、誰もいも虫のデザインなんて使ってくれないもん。

🦉(フクロウさん)
あれ、ふくろうのアパレル服の話、どうしてそれを知ってるの?
もしかして、まん丸の眼に小さな鼻のふくろうの刺繍だよね。

実はそれって僕がモデルなんだよ。
ある夜にね、若い女の子が何か可愛らしいおしゃれな服を作りたいとかで、モデルになってくれるよう僕の所に訪ねてきたんだよ。

僕はびっくりしたんだけど、僕のようなのでよければどうぞって引き受けたら、僕をスケッチしていって、うまく描けたらオシャレな服にプリントして見ますってね。

🐛(いも虫)
そうなんだ、そして君をモデルにしたあのアパレル服が売り出されたというわけか。
それじゃあ、全てHAPPYなんじゃないの。
どうして悩んでるんだい。

🦉(フクロウさん)
それがさぁ、その女の子にどうやら一目ぼれしちゃったみたい。
コミ障とか言ってたけど、とても明るく綺麗な人でね、やさしく対応してもらったんだ。

だからもう逢えないと思うと胸が苦しくなって
あれから毎日のように朝までこうしてボンヤリしているわけさ。

🐛(いも虫)
そうかふくろうさんは恋をしちゃったのか。恋の悩みで朝までここにいたんだね。
それで、また会えるように連絡先とか交換しなかったの?

🦉(フクロウさん)
そんな、相手も急いでいたし、まさかこんな事になるなんて思ってもいなかったからね。それにもし交換していてもとても恥ずかしくて会えになんか行けないよ。

🐛(いも虫)
それもそうだね。
それじゃあ、どうする事もできないね。
せめてもう一度会うぐらいは会いたいだろうにね。

🦉(フクロウさん)
うん、会いたいけど、、会えない、、

🐛(いも虫)
もう、しょんぼりしちゃって困ったな。元気出しなよ。

それじゃあ、おいら何とかしてあげるよ。
いも虫ってみんな馬鹿にするけど、いも虫から出るパワーって案外すごいんだよ。
じゃあまたねー。


👀:
数日後、代官山でポップアップイベントが開催され、ふくろうのアパレル服をデザインした女の子が、あのモデルとなったふくろう君を招待し、お礼をしたんだとさ。
もしかしたら、あのいも虫君がアシストしたのかも、、

ーおしまいーー


▶️昆虫こぼれ話〔イモムシ〕


皆さんはイモムシはお好きですか。

おそらくよほどのマニアでない限り好きな人は少ないでしょうね。

でも皆さんもイモムシは嫌いでも成虫して蝶になると、とたんに好きになるから不思議ですね。
蝶の愛好家は日本にそして世界に何万人といるそうです。

では
カタツムリとナメクジではどちらが好きですか?
という質問には、おそらく大多数の人がカタツムリは好きだがナメクジは嫌いだとなるでしょうね。

実はカタツムリとナメクジは同じ仲間で、殻を持っているかいないかの違いぐらいのようです。
つまりカタツムリは殻を持っていて殻に隠れたりするから人気があるのでしょうね。
(カタツムリの生態も面白いのでいつか童話にしていくかも知れません)

この考えでいくと、イモムシも仮に殻を持っていたとすればこんなに嫌われる事はなかったかも知れません。
身体に沿った楕円系で蝶のようなあでやかな色彩の殻に覆われていたら皆さんはどう思われますか?
成虫後の脱け殻はアクセサリーになるかも知れませんね。

筆者もイモムシは子供の頃から苦手でとても好きにはなれませんでした。

しかし最近、当ショート童話を書くうえでいろいろと調べていくうちに新たな発見などがあり、まあ好きにはなっていませんが特に嫌いではなくなりました。

7世紀頃の日本ではアゲハ蝶の幼虫であるイモムシは信仰の対象となっていた説があるようです。
「常世の神」と呼ばれていて常世の国と呼ばれる海の彼方の世界からやって来たと考えられ、豊かさや若さを与えてくれるスピリチュアルな神様として信仰されていたらしいです。

意外でした。
皆さんもご先祖様にあやかってイモムシを信仰して見てはいかがですか。

出典:蝶にまつわるおまじない&スピリチュアルな意味



ところで、『いも虫と愉快な仲間たち』は、如何だったでしょうか?
ショート童話であり、ブラックユーモアを交えた大人の童話であり、いも虫のブログでもあります。
今後ももっと楽しめる童話を目指して連載していければなと思っています。

ーー章庵ーー



 〉〉次回予定(Coming Soon)

お知らせ

第4話 いも虫の夢
 いも虫の夢は、うさぎに勝った亀さんのように有名になる事でした、、

第5話 いも虫のLookBook
       いも虫女子は、緑の自分の単調な色彩にうんざりし、新しいファッションを
  求めてLookBookを企画するのでした、、

第6話 いも虫の美食
  美食を求めていろいろな食材に挑戦するいも虫でしたが、、

Coming Soon….
  



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