消えゆく玄関と風習

実家は古い家でした。

玄関をあけたら、土間の通り庭があって裏まで抜けられます。

通り庭の左側(本来は右側)に昔は土間の台所があって、井戸もあって、牛も飼っていたそうです。私が生まれたころには、そこは板間の台所に造り替えられていました。

反対側は、居間。ふすまで仕切られた畳間が4つありました。

という、いかにも日本家屋らしい造りでした。

もちろん玄関の戸は、引き戸で、鍵も中からネジで閉めるタイプ。外からは閉められません笑

隣近所、みんなこんな玄関でした。

そして、インターホンなんてなかったので、家をおたずねするときは、玄関の戸を開けて、「ごめんくださ~い」とか「こんにちは~」と大きな声を出して、家の中の人に声をかけていました。

仕事で、いろんな家をたずねたりしますが

やはり、仕事柄、私が行く家は田舎の古いおうちばかり。

典型的な日本家屋がほとんどなので、やはり引き戸なのです。

今はインターホンが付いているところがほとんどなので、まずはインターホンを押しますが、なぜか反応がない場合が多い。(音が鳴らない時もしばしば)

そういう時は、玄関の戸を開けて「こんにちは~」と声をかけます。そうすると、奥から家の方が出てきてくださる。

でも、よくよく考えると、片開の押したり引いたりして開けるタイプで、高度経済成長期からドンドン建ちだした洋風(今風)の家で、いきなり玄関の戸を開けたら、通報されそうですよね。さすがに、私もそれはできません。

玄関の戸の違いで、なぜこんなにも受ける印象が違うんでしょうか。

それに、日本家屋は、玄関を入ると少し広くなっており、少しの立ち話程度の話なら、家の奥まであがらずとも、あがりかまちに腰かけて、来客と話すこともできます。

外でもない、家の中(今でいうならリビング)とまでもいかない、絶妙な空間だと思います。

夏なら、玄関も裏の戸も開け放して、風が通り抜ける中で、そこでお茶を飲んだり話したりできました。

下が土間なので、とてもひんやりしていました。

昔ながらの日本家屋が消滅していくのと同時に、そういった家の使い方の風習も消えていきます。

いきなり玄関戸をあける、なんて当たり前だった日常も、消えていく日本の生活の一部分です。



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