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ゲーム業界本に潜む不思議?な記述


以前私はこの記事の中でこんなことを書きました。

原因の一つとしてはその本を書いてる著者が、ジャーナリストとして経験を積んだ一流の人材であったとしても、ゲームに関して、ゲーム業界に関してそもそも無知であるため、根本を理解しておらずとんちんかんな解説になってしまいがち、というものがあります

80年代から90年代にわたり書かれた書籍は、一流の著者らがゲーム業界について一生懸命書いてあるものばかりですが、基本ゲーム業界の外野な人たちなため、トンチンカンな解釈によるトンチンカンな記述になりがちです。

今回は小さなものから、致命的なものまで、幅広く探り、「如何にしてぶっ飛んだ解釈になってしまったか」を楽しんでもらう特別記事です。それでは早速始めましょう。

まずは小ネタから。

さらに、任天堂にとってラッキーだったのは、リコーが超ベストセラーのパソコン「アップルⅡ」に使われている「650Z」を製造できるライセンスを持っていたことだ。

:任天堂の秘密 上之郷利昭著 P87より

ちょっと詳しい人ならば「Zじゃなくて2!」と突っ込むこの記述、当時の校正さんの状況が覗えます。ゲーメストのライターさん並に悪筆だったのかもしれませんが、ちょっと可哀想ですね。正しくは「6502」です。

次は誤植ではなく「いったいなんでそうなったの?」的な物です。

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漫画チックなネコが画面を暴れ回る”ソニック・ザ・ヘッジホッグ”を「メガドライブ」用に自社で開発し……

ゲーム業界が危ない 遠田燁彦著 P61

ヘッジホッグとは何ぞや? と思いたくなる記述ですが、確かに画面だけを見れば青いネコといえなくもない、かもしれないのは否定できません。青いネコはドラえもんの方ですね(超高速で暴れ回るドラえもんを操作するゲームもそれはそれで面白そうだと思いました)。

この記述は著者が英語に疎いで終わりそうなのですが、ゲーム業界に疎い記述がこの次です。同書のP155の、ハドソンについて語ったくだりなのですが。


社風もパソコン大好き人間の集まりのような自由な雰囲気があり、パズルゲームの代表作”ボンバーマン”に象徴されるように、作るソフトもマニア好みのものが多いというのが通説になっている。

ゲーム業界が危ない 遠田燁彦著 P155

ボンバーマンがマニア好み!?

この本が発行されたのは1994年なのですが、この時点でスーパーファミコンのスーパーボンバーマンが友達と一緒に遊ぶゲームとしての最適解の位置に君臨しています。PCエンジン版のボンバーマンもマルチタップで5人プレイが大正解でした(ところでボンバーマンはパズルゲームでいいんでしょうか?)。

何を思ってこんな記述をしたのかわかりませんが、おそらく著者はボンバーマンをプレイしたことがなかったのでしょう。かつての高橋名人にも、全国キャラバンのことにも触れていないので、本当にハドソンが当時の子どもたちに大人気のメーカーだったことは知らないのだと思います。(ちなみにこの後の記述でハドソンはPCエンジンに注力しすぎてスーパーファミコンへの参入が遅れ、次第に任天堂と離れていったという記述がありますが、実際は92年からどんどんハドソンはスーパーファミコンにも注力してソフトを展開していっています)

同書のトンデモ記述はまだ続きます。

また、カプコンは昨年三月”SF(ストリートファイター)Ⅱダッシュ”の「メガドライブ」版を制作するとして発表して大きな話題を集めた。それまで同一ソフトが異なったゲーム機で発売されたことはなく、ハードメーカー中心に……

ゲーム業界が危ない 遠田燁彦著 P146

ナムコの妖怪道中記も、ハドソンのスーパー桃太郎電鉄もマルチソフトだったわけですが……。しかもこの頃から光栄(現コーエーテクモホールディングス)が頑張って各種にマルチ展開しており、三国志Ⅲは1992年にスーパーファミコン、メガドライブの同時発売を手がけています。

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