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不協和音と必要な情報としての読書

要約動画・ファスト映画も使いよう

「その話、知ってるー!」
小説などの話になると、その物語のストーリーやあらすじに対しての感想が多い。
自分が感じた“感情”について話すことが少ないのは、その“感情”を話すためには、どこの場面で、どの言葉によって、どのような思いを抱いて、その感情に至ったのかという『説明』が必要になるからだ。
要するに、面倒くさい。

あらすじや、ストーリーに対して、または結末に対しての感想をシェアする。
それが一番、楽だし、話しやすい。
感情というのは、人それぞれ感じ方は違うものだ。
そのため、「私は、あの時の主人公の言葉に深く共感して泣けた」という発言をするにはリスクが伴う。それは、「共感してもらえないかも知れない」という恐怖である。

議論になると、疲れる。
そのため、多くの人は、普段の生活に議論を持ち込もうとはしない。
反対意見や提案をされるのは、議論に発展することが多く、はたまた争いにでもなったら、余計に面倒くさいことになる。まさに戦争が起きてしまうのだ。
だから、私たちは普段、無意識で共感してくれる人を探している。
だから「その話、知ってるー!」と言われることがとても嬉しい。

そして、“共感することによって相手に喜ばれる”ということを知ってしまった私たちは、その“共感できる私”を作るために、要約動画やファスト映画に走るのだ。
原点は、「相手に喜んで欲しいから」という、相手を中心とした動機である。
これは、滝川クリステルさんで有名になった日本人の心である『OMOTENASHI』に近いと言える。
「話してくれた相手が、少しでも喜んでくれるといいな」
なんていう、健気な心が見え隠れする。

ところが悲しいかな、それらを読書家たちはよく思わない。
読書でも、映画鑑賞を趣味としている人間も、楽しみ方の違う人にとって、『要点だけをかいつまんで取り出すものの見方』に対して、よく思わないのだ。
しかしこれは当然なのだ。
なぜなら、要約を楽しむ人にとって、その作品はただの『相手を喜ばせるための道具』に過ぎない。オモテナシをするための、茶菓子のようなものだ。
お客様がいらしたら、お茶とお茶菓子を提供するのは、オモテナシの精神としては当然であり、そこに自我を発生させてはいけない。

私たちのような、読書を『自分の心を満たすために行なっている自主的な活動』として楽しんでいる人間には、要約動画などで小説の中身を知る人々のことを、とやかく言う権利はない。
そもそもの原点が違うのである。
しかも、そうした要約動画で中身を知った人々のおかげで、楽しく小説の内容について話すことができることもある。

先日、職場の上司と話していた際に、とある小説の話になった。
その小説を文庫で持っている上司は、その小説を読破したものと思い込んで、その小説について話していたのである。
ところが、話し終わるや否や、「実はまだ読んでいないんだけどね」と打ち明けられたのである。
シティーハンターの冴羽獠が、槇村香に殴られている時の100トンハンマーが、頭上から降ってきたような衝撃があった。てっきり上司も読んだものと思っていたが、実はその情報のソースは要約動画だったのだ。
読書を頻繁にしている人でも要約を利用する、考え方の柔軟さを学んだ。

改めて、楽しく本の話ができるのも、本の要約のおかげである。
しかし本来、読書という活動そのものが個人的な活動であり、人とシェアして楽しむものではない。
「この本になら時間をかけてもいい」
そんなふうに思うことができる本に巡り合うことができたら、それはかなり運がいい。
自分にとって、不協和音である情報と、必要不可欠な情報が何なのか、そのことを決めることも自分なのである。
だから、そうした不協和音に対して、時間をかけることが難しい人たちにとっては、要約動画で十分なのだ。読書は、自分のためにするものだからだ。

これは、読書に限らず、勉強などでも同じことが言える。
勉強というものも、受験勉強や将来のためにすることではない。
自分のためにすることなのだ。
例えば、自分の命がなくなることがわかっていても、やらなくては気が済まないことが勉強なのである。自分のためにすることなのだ。
少しでも知識を積み上げることよって、見える景色が変わり、新しい自分の考え方が出来上がってくる。そうして、読書も勉強も、楽しむものなのだ。

こんなに楽しいことを、知らない人を私は、気の毒だと感じている。
しかし、そうした楽しい活動であっても、全てを知ることは難しい。
私は、発刊されている本をすべて読むことができたら、どれだけ幸せだろうと思うことがよくあるが、そんなことは不可能だとも心得ている。
それならば、やはり、要約動画と読書とを、しっかりと使い分けていくことも大切なのではないかと思うのだ。

オモテナシの精神だけではなく、自分の楽しい活動としても、要約動画というものが活用されるべき道というものが、少し見えたような気がする。

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