噺家による【文楽のススメ】その一
落語家として、演劇であったり映画であったり、様々なところに足を運ぶようにしている。
その中で、古典芸能である文楽と出会い、好きになり、観に行くようになっていった。
しかし、多くのひとからすれば文楽ってなんすか?というレベルだと思う。
だが、安心してほしい。
落語家もあんまりよく分かっていない。
落語の噺には、歌舞伎であったり文楽のことであったり、古典芸能がつまっており、言わば親戚みたいなもんだ。そのため、文楽のことは落語家はみんな知っていると思ったら大間違いで、よく観に行きますという人は稀である。(歌舞伎を観に行く人が圧倒的に多い。)
そんな僕も文楽について、ここ数年知ったばかりなのだが、その身分としてあえて言わせれてもらう。
文楽は敷居が高え。
落語も初めての人からしたら、なかなか敷居が高いと思うのだが、それを凌駕するほど、文楽の敷居は高い。落語はちょっとジャンプしたら、入れそうな敷居だが、文楽は敷居をよじ登らなければならない。
「文楽をたまたま聴きました。それで好きになったんです。」
そんな人はまずいないはずだ。行こうと思わなければ、行けないのだ。だって、東京でさえ文楽を観に行こうと思ったら、永田町にある国立小劇場に行くしかない。
そのため、文楽に行きましたと僕が言えば、
「勉強して偉いね。落語に活かしてね。」
とお客さんに言われるが、別にそんなつもりでいっていない。そりゃ、勉強で行くという部分もあるが、単純に面白いのだ。敷居をよじ登った後にやってくる楽しさを皆さんにも味わってほしい。
そのために、文楽について説明していこう。
文楽は、ざっくり言えば、『人形劇』である。
では、一般的な人形劇となにが違うのかと言えば、そこに太夫さんと三味線が入るのだ。
この二つが重要で、太夫さんが、床本(ざっくり言えば台本)と言われるものを見ながら物語に節をつけて語るのだ。また登場人物としても喋るので、一人で物語を語り、登場人物の演じ分けを行う。初めて見た時、落語のようだと思った。もっと言えば隣で三味線が入るので、浪曲に一番近いかもしれない。その太夫さんと三味線が舞台上手(客席から見て右側)に入るのだ。
そして、舞台は人形劇ということになるのだが、それも一般的なイメージと異なる。人形一体に対して、三人で操るのだ。
そう考えると、いっこく堂は一人で二体も操ってるし、声まで遅れてやってくるんだから凄いと思うかもしれない。けど、それは別の話だ。
そして、写真を注目してほしい。三人中一人は顔を出してる。これがすごい。だって人形が主役なんだから普通は顔は出さない。他の二人は黒子だし。だったら三人かくせばいいじゃんと思うのだが、見せちゃってるのだ。
「あ、いいんだ。」と素直に思う。
聞くところによると、ファンが顔を見たい!となったみたいで、それで顔を出したらしいのだが、定かではない。よっぽどかっこよかったのかもしれない。だからと言って出すことないだろと思うが。
てなわけで、太夫・三味線・人形遣いが三位一体となってつくりあげるのが、文楽なのだ。だから、見る時は忙しい。太夫や三味線や人形遣いをみて大変なのだ。しかも、ここで更なるハードルがある。それは、
何言ってるかほぼ分からない。
これは大変な問題だ。昔の言葉で節をつけてうなってるため、内容がよく分からない。
でも、安心してくれ。
字幕がついてる!
舞台の両端にそれぞれ字幕が表示されているのだ。そのため、太夫・三味線・人形遣い、そして字幕が見るため大忙しだ。
だが、それでも安心しないでほしい。
それでもよく分からない部分が多い。
だから、あらすじは一応読んでおこう。
さあ、ここまで、文楽の魅力というよりは、敷居の高さを説明するだけになってしまった。これではいけない。ここから、実際に観に行った作品を元に文楽の魅力を書いていく。
そして、ここまで書いといてなんだが、もっと詳しく知りたい方は文楽協会のホームページを見たらだいたい分かる。気になる方は見ていただきたい。
つづく。
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