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シャニマスをやってて初めて「二度と観たくないな」と思ったシナリオと出会った話

 プロデューサーさん!三周年ですよ、三周年!ライブに無料10連、桜花賞など何かと忙しいここ最近ですが、2021年4月5日、満を持して遂に遂にの新ユニット「SHHis」が追加されましたね。

 インターネットは阿鼻叫喚でしたよ。

 いや~ヤバい。サムネとタイトルで90割のプロデューサーさんは分かると思いますが、今回は七草にちかちゃんのWINGシナリオ(と、美琴さんのWINGシナリオ)についての感想で管を巻く記事です。因子厳選や百竜夜行を鎮圧するのに忙しくてまだプロデュースしてない人は、先に社長の宿題を片付けてきてからこの記事を読んでください。美琴さんのネタバレもするからちゃんと美琴さんもプロデュースしてくること。お兄さんとの約束だぞ。

 4年目の幕開けに相応しい衝撃

 SHHisの情報が解禁された時点で、今回はかなり異色なユニットがきたぞ、とインターネットはざわついていました。まあ、ノクチルに関してもやってる事がアイドルという概念へのアンチテーゼにも繋がるようなものだったので異色なユニットであることは間違いなかったのですが、SHHisに関しては「事務員であるはづきさんの妹」、「既にアイドルとして活動している実績がある」という、設定の面での異色さが際立っていたと思います。

 SHHisの発表と前後するように、斑鳩ルカといういわゆるライバルポジのキャラクターも登場して、美琴さんや天井社長との関わりも描かれていく事が示唆され、4年目のシャニマスはシャニマスの世界を深堀していくストーリー主導のコンテンツ展開をしていくんだな、などとぼんやりと考えたりもしました。散々シャニはストーリーがいいで、と口コミで広まったからこそここでこの方向に舵を切る英断を下せたのだと思うと、常に攻めているシャニマスの鋭さは4年目でもバリバリにばーりばりばい!と滅茶苦茶安心できますね。

 4年目のシャニマスはばりばりのばーりばりに攻めていくばい!という正面右ストレートを我々の顔面に食らわせたのがそう、七草にちかちゃんのWINGシナリオですね。実装は昼の12時、学校や仕事など副業で忙しいプロデューサーが多い時間にさりげない風を装って実装されたにちかちゃんは、実装されてから1時間弱程でそのシナリオをクリアしたせっかちオタク達の間で「おい…これって…」「やばいんじゃないか…?」「いや、ヤバイでしょ…」と徐々にさざ波を立てていき、やがて多くの人の副業が終わる18時頃には、その全容を目の当たりにしたプロデューサー諸兄の悲鳴がTwitterトレンドを駆け抜け、インターネットを阿鼻叫喚の地獄絵図に叩き落したのでした。

 発表当初こそ、「はづきさんの妹の、ちょっと生意気で甘えん坊さんな女の子」との認識を持たれていた七草にちかちゃんですが、蓋を開けて見ると「アイドルになる為にはプロデューサーを密室に閉じ込め、脅迫まがいの事をする」などと、とても「甘え上手なみんなの妹キャラ」では許されないような所業に打って出ます。後ろ手に倉庫の鍵を閉めた時、殺されるかと思った。まあまあこの時点で相当にぶっ飛んでいるので、おいおいおいシャニマスくん4年目だからってのっけから飛ばし過ぎじゃない?と思ったのもつかの間、こんな犯罪すれすれの行為すらもぶっ飛ぶほど、七草にちかの辿る道のりには衝撃の展開が待ち受けているのでした。

地獄はここにあったよ。

 アイドルになる為なら脅迫だって辞さない七草にちかちゃんですが、実は姉であるはづきさんからはアイドルの道について難色を示されているようで、アイドルの道も「WINGで優勝出来なかったら諦める」という条件付きで283プロでの研修生として走り始めることになるのですが、何が衝撃かってこの子、あのシャニPの目線でも「正直この実力だと厳しいかもな…」と(明言こそしないものの)その能力に対して難色を示されます。あの甜花ちゃんにすら匙を投げなかった天下の(甜花だけにw)シャニPが。どんな時でもアイドルが心から笑って輝けるように死力を尽くしてきたシャニPが、「この子はちょっとアイドル向いてないだろうな…」みたいな雰囲気を言外にですが訴えてくるんですよ。

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 ここでまず、僕は梯子を一つ外された気持ちになりました。だって、シャニマスはどんな子でも自分だけの輝きで、自分が思ったように、なりたいように輝けるお話だから。シャニPは、そんな頑張る女の子たちの笑顔が曇らないように、時に日陰に、時に日向になって守り、導いてくれる俺たちのみちしるべのような存在だったから……。

 この時点でもう、にちかちゃんは他の283のアイドル達とはかなり違うんだぞ、という事がビンビンと伝わってきていました。才能が無いから努力で補うというキャラクター造型はアイマス内でも多々ありますが、「シャニPが”アイドルとしての才”を感じなかった」って事は、それはもうつまりは「アイドル側のキャラクターじゃない」と言われているようなものだと思うんですよ。ここ、ちょっと上手い表現見つからないんですけど…もしも、この子が「アイドル側の子」だったとしたら、多分シャニPも最初ににちかちゃんのダンスや歌を見た時に「技術は足りてないけど、何故だか目を離すことが出来ない」とか「粗削りだけど光るものを感じる」とか「何か」を感じると思うんですよね。でもそうはならなかった。そうはならなかったんだよ、ロック。それどころか、「WING優勝は現実的な目標と言えるだろうか」とまで述懐してしまう。そんなプロデューサーの反応を見て、にちかちゃん自身も自分の実力が、ひいては「アイドルとしての才」が自分の中に存在しないことを敏感に感じ取ります。そして、ここから地獄が始まります。

合わない靴で血まみれになりながら踊り続けるシンデレラ

 自分にアイドルとしての才が無い事を自覚しているにちかちゃんは、それでも、だからこそ、何としてでもアイドルになろうと必死にもがき続けます。努力と言うよりも、まさにもがくという表現が相応しいその様は、見ているこっちも本当に辛かったです。一度でも夢を追いかけたことがある人なら、きっとここは我がことのように感じられるんじゃないでしょうか。

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↑ここのシーン、「努力を重ねても実らない人」をあまりにもうまく描き過ぎてて泣けてくる。そうなんだよね。結局努力ってのは問題点を解決する為の試行錯誤を指しているから、我武者羅に続けてても意味無いんだよね。でも、努力が実らない人ってそれを知らないか知ってても解決方法が分からないから、ただひたすらに自分を痛めつける方向にしか動けないんだよ…死にたくなってきたな。

 にちかちゃんには、アイドルを目指すきっかけとなった憧れのアイドルが居ます。八雲なみ。二十数年前に突如として現れ、完成されたパフォーマンスと華やかな存在感で瞬く間に人気をかっさらい、彗星のように消えた半ば伝説にもなっているようなアイドル。にちかちゃんは、自分に欠けたアイドルとしての才を補う為に、八雲なみのパフォーマンスを模倣するという自己プロデュースを打ち出します。

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 「誰が見てくれるんですか、私の事なんか」というセリフに、自分が「ヒロイン」ではなく「モブ」だと自覚している感じが出ていて、シャニマスのオタクたちはあの日あの時SHHisが発表された瞬間、にちかちゃんを「モブっぽいデザイン」と侮った事を血反吐を吐くほど後悔した。

 世はまさに大SNS時代で、誰でも手軽に「自分を発信」する事が出来るようになったからこそ、「どこの誰かもわからないお前」なんて誰も見てくれない、というのを多くの人が身をもって経験しているかと思います。だからこそユーチューバーは見て貰う為にドンドン過激な事をするし、悪名は無名に勝るとでも言わんばかりに話題性重視の炎上商法がネットとリアルが混在するこの世界で日夜繰り返されているわけです。時代性を兎に角反映するシャニマスが、遂に大上段で現代社会の闇に切り込んできたようにも見えますが、取り合えず今はにちかちゃんです。

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 ですがこれまでのシャニマスが、シャニPが俺たちに伝えてきたのは

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 こういうことなんですよね。一人一人、特別で、だけどみんな普通の子たちが輝けるように、そのお手伝いをしてきたんですよ。俺たちとシャニPは。

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 でも、にちかちゃんはそれを正面から論破してくるんですよ。

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 シャニPが信じてきた「道」をして、それが自己満足でしかないと言うにちかちゃんの姿があまりにも切迫していて、本当に辛い。

「特別」という呪い

 「特別」ってなんなんだろうな。普通の女の子は、何時、どの時点で「特別なアイドル」になるんだろう。そんなことを、美琴さんのWINGシナリオを読みながらも思いました。

 ここで話は変わって美琴さんのシナリオにも言及するのですが、既にアイドルとして活動経験がある美琴さんは、にちかちゃん以上にレッスンに次ぐレッスンでレッスン漬けになっている様子がWINGシナリオでしつこいくらいに描かれます。「歌とダンス、パフォーマンスでみんなを感動させるアイドルになりたいから」とキャラ紹介のセリフでも言っている通り、美琴さんの原点は上京した先で観たアイドル達のパフォーマンスに感動した所から始まっています。それ以来、同じような感動を与えられるアイドルを目指してレッスンに明け暮れる事となるのですが、長くデビュー出来ない時期が続きます。「スタートラインに立ったまま、そこから横で走り出していく多くの背中を見送ってきた」みたいなニュアンスの事を言ったりして、人生そのものをアイドルになる事に捧げる程の熱意は「アイドルになれるなら死んでもいい」とまでうそぶくほど。

 それだけ努力を重ねているだけあってか、美琴さんはダンスの完成度も歌唱力も、シャニPをして完璧だと言わしめるほどの実力を持っています。そんなわけで美琴さんのWINGシナリオはシーズン4まで順調に進んでいくのですが、何時ものレッスンの途中で美琴さんが自分のダンスの出来についてプロデューサーに感想を求めてくるんですよ。そこでいつも通り完璧だった、直す所はないとシャニPは返すのですがそこで美琴さんが初めて切迫した様子で食い下がります。

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 ずっと。ず~~~~っと、ホント、アイドルシナリオとしてどうかしてるぞってくらい、美琴さんのシナリオでは彼女がレッスンに明け暮れている様子が描かれ続けるんですが、ここにきてその理由が判明するんですよね。うすうす感づいていた方もおられるかとは思うんですが、美琴さんも美琴さんで「持ってない側」の人間なんですよ。

 ダンスも上手くないし、歌も下手っぴ。それでも愛嬌があったり、何故か目が離せない、どうしてか忘れられない。そういう、アイドルとしての「特別」が無いからこそ、どんな苦しい時もひたすらにレッスンに打ち込んできた。「パフォーマンスで魅せるアイドルになりたい」という最初の夢は、何時しかレッスンを重ねる事しか出来ない自分への「祈り」にもなっていたんじゃないでしょうか。美琴さん自身がそう言ったわけではないですが、僕からはそういう風に見えました。本筋とは離れますが、この「アイドルになる事以外が人生からすっぽり抜け落ちた人間」の描き方がシャニマスは滅茶苦茶上手くて、美琴さんはふとした瞬間の語彙がとっても少ないんですよね。そして、レッスンに集中している時は完全に周りが見えていないので、シャニPに声をかけられて滅茶苦茶ビビる、という下りを何回か繰り返すんですがこの「周りが見えていない」というのと、咄嗟の語彙が少ないというのが、ホント「一つの事しか頭にない人」のリアルで背筋が凍るほど。で、大抵の場合滅茶苦茶残酷なんですけど「自分にはこれしかない、と視野狭窄に陥っている人ほど成功せず、一つの事に強いこだわりを持たない人ほど成功してしまう」というのは現実でも往々にしてあることなんですよ。シャニマスでもあさひなんかまさにこの例に当てはまりますよね。

 にちかちゃんもそうなんですけど、この二人の「アイドルとしていまいちパッとしない理由」と言うのが、シナリオを読んで彼女たちと触れ合っていくうちに、理性じゃなく肌感で何となく分かってくるんですよ。それこそキャラクターの見た目のデザインから始まってセリフの端々、人格のルーティンなどなど、我々ユーザーですら「パッとしない」な、という第一印象を持つように恐らく意図的にデザインされているんですよ。エグくないです?普通、エンタメ作品だったら「何でこんなに可愛くていい子達にアイドルの才能が無いなんて言うんだろ。そんなん設定だけじゃん」って思うようなキャラを出しますよ、普通。商売ですもん。でもシャニマスは違うんですよ。いまいち萌えない娘をいまいち萌えない娘として描き切るんですよ。えづくくらいエグい。

 さて、少し脱線しましたが、にちかちゃんも美琴さんも「アイドルが持っている”特別”が無い人」、いわゆる「持たざる者」側のキャラクターだったという事が分かったわけです。

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 そこでにちかちゃんは、「特別じゃないわたし」が「特別なわたし」になる方法として、「特別ななみちゃん」の靴を履くことを選びます。この選択肢が、にちかちゃんをアイドルとしての成功へと導くと同時に、彼女を地獄の窯の業火のごとく苦しめることになるのは、聡いプロデューサー諸兄ならうすうすは感じていたかと思います。でも僕は正直、ここまでの段階では「まあまあ、全ての芸事は模倣から始まるって言うし、この後にちかちゃんが模倣から脱却して自分の殻を突き破る展開がくるんやろ!」と高をくくっていました。

でもそうはならなかった。そうはならなかったんだよ、ロック

 「なみちゃんの靴」を履いて踊るというのは、自分を無理矢理他者の型に合わせて曲げるという事で、当然心身ともに相当な負担が掛かります。ご多分に漏れずにちかちゃんもその事で苦しみ続けて、結果WING準決勝で勝っても

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 あれだけ「アイドルを続けたい」と必死にもがいていたのに、遂に自分でもどうしてアイドルを続けているのかすら分からない状態になってしまいます。ここ、何時もの勝利BGMが流れているんですがその明るさが恐ろしい程に空々しくて、プレイヤーに対する皮肉にも思えてしまうんですよね。「お前は育成スケジュールを練って、強力なサポートカードを用意して、オーディションでうまい事目押しを成功させて星を稼いで、この子をWINGで勝たせることは出来る。出来るが、この子を救う事は出来ない」そう言われているような気がして、滅茶苦茶凹みました。実際、努力に努力を重ねて勝つのはアイドル自身で、プロデューサーが出来る事は本当にスケジュール調整とかレッスンを見守る事だけなんだから、ゲームとして「見守る事しか出来ない無力な立場」であるプロデューサーの心理をこれでもかと追体験させてくれるという意味では死ぬほど効果的です。効果的過ぎて一時期ガチでこのシーンを振り返りたくない病気になりました。今は完治しています。だってそうでしょう!?アイドルになりたくて頑張って頑張って、遂に夢が報われるかもしれいって瞬間は、笑ってなくちゃいけないよ。その為の戦いだってシャニPも言ってたし、最後は笑顔でいて欲しいよアイドルちゃんにはよ!!!!!!!!!

 そして迎えた決勝戦、ステージを前にして緊張と恐怖から震えるにちかに遂にシャニPはこう言います。

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  ここでもう涙をこらえる事が出来なかった。この記事を書くために読み返している今もまた泣いている。ここまで頑張ってきたんですよ。ただの平凡な女の子が、身の丈に合わない夢を背負って、それでもそれをどうしても叶えたくて、ぶかぶかの靴を履いて、靴擦れを必死にこらえながら、頑張って、頑張って、頑張って、それでもう、限界だって言ってるんですよ。そんな子に、笑ってくれなんて、言えないですよ。手のひら返しますけど、もういいんですよ。にちかちゃんがもう二度とアイドルの事を笑って振り返る事が出来なくなるくらいなら、今ここで笑ってくれなくてもいいんですよ。なのにこの子は、にちかちゃんは、緊張からパニック障害を起こして倒れても、まだ「笑えてますか?」って聴いてくるんですよ。自分が笑う理由も覚えてないのに、ただただ「アイドル」という呪いに必死にしがみついて笑おうとするんですよ。そんな彼女に掛けてあげられる言葉なんてあります?

結局、俺たちは何もしてあげられなかったという絶望感

 WING優勝後のコミュは、にちかちゃんが夜景を背にして大好きな八雲なみの曲を聴くシーンから始まります。イヤホンから漏れる八雲なみの曲と、にちかちゃんのハミングに混じって、彼女が鼻をすする音でもう完全に情緒がぶっ壊れてこのコミュがトラウマになったというプロデューサーは多いと聞きます(俺調べ)。勝ったんですよ、彼女は。優勝したんですよ、にちかちゃんは。雑誌を使って流行を操作して、ダンス650から3.5倍アピールで殴って星32個集めて文句なし1位で優勝したんですよ。でもこの子、EDで泣いてるんですよ。ああ、勝っちゃったんだな、私…とでも言うかのように、泣いてるんですよ。「これでやっと思うように笑えるな」ってプロデューサーも言ってたけど、そんな簡単に、手放しで笑えるようにはならなかったんですよ。

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 このセリフ、何気ない一言に見せてその実は「にちかがどんな飲み物が好みなのかもわかっていなかった」=「にちかのことをちゃんと理解してあげられなかった」事を意味しているのと、「ここまでの一連のプロデュースの中でシャニPがにちかに何をしてあげればいいかわからなかった」のか、「何が正解だったのか分からない」と言っているようにも思えて、ここでまた一凹みしました。ノクチルに対しても、最初こそすれ違いはしたものの最終的にはお互いの事が少しずつ分かって行って、お互いの中でお互いの思う形の中に納まったシャニPが、今回は完全に何もしてあげられなかった。結局にちかちゃんは、八雲なみの模倣をやり切って、「八雲なみみたいなアイドルになる」という当初の夢を、WING優勝という形で実現させた。

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 「なみちゃんにお礼を言ってたんです」というにちかちゃんの言葉に、プロデューサーも上のスクショのように続きます。事実上の、シャニPの敗北宣言のようにも見えて、僕は愕然としました。アイドル達に寄り添って、陰日向となり支えてきたプロデューサーは、結局はにちかちゃんを縛る希望でもあり呪いでもある「八雲なみ」にはかなわなかったんです。何時も鬼の手一つでどんな妖怪も倒してきたぬ~べ~が、麒麟相手には手足も出なくてただただ謝るしか無かった時の絶望感を思い出しました。

未来へ

 そんな、にちかを駆り立てる存在であった「八雲なみ」も、実は特別でも何でもない、ただの普通の少女でしか無かったのだ、という事がこの後に判明します。やり手のプロデューサー…当時の天井社長の辣腕によって、合わない靴で無理矢理踊った結果、カルト的な人気を持つ伝説のアイドルになったのだ、という事をにちかちゃんも知るわけです。憧れていた存在が、実は自分と同じ平凡な少女だった。「特別」だと思っていた相手が本当は「持たざるものだった(かもしれない)」という事を知って、にちかちゃんは一体何を思うのでしょうか。プロデューサーは、にちかは既に八雲なみを追い越して、彼女がたどり着けなかった場所へとにちかが走り出していけることを示唆します。それに対してにちかちゃんはほっとしたような悲しそうな、どう判断していいのか分からないような表情を見せる所で、彼女のWINGシナリオは幕を閉じます。彼女が何を思い、これからどのように活動していくのか、八雲なみの呪いを振り切って「本当の自分」になれるかどうかは現状全くもって未知数です。正直、最初にこのEDを見た時は全くもって未来に希望が持てませんでした。何故ならこれだけ挑戦的なシナリオ展開を持ってきたシャニマスが、ここまで追い詰めたにちかちゃんの問題を、そう簡単に解決なんかさせないと信じているから。こういう「答えのない問題」に、エンタメだからと割り切った安易な答えを用意しない、そういうシャニマスの愚直なまでの誠実さを、限りない人間への優しさを俺は信じているから。でも美琴さんが実装されて、美琴さんのシナリオを見た今なら言える。この二人なら大丈夫。きっと高山はこれからも二人が辛くなるようなイベントをどんどこぶつけてくると思うけど、この二人ならきっとお互いの苦しみを理解し合い、支え合って乗り越えていけると信じられるから。それがシャニマスだから。

「普通の少女」が「特別なアイドル」になる瞬間を描く為に生まれたユニット

 人は、何時「特別」になるんだろう。にちかちゃんと美琴さん、二人のシナリオを読み終えて、改めてそう思う。アイドルという商売は、それはそれは過酷なもので、光があれば闇が、スポットライトを浴びて輝いているアイドルの陰には、光が当たらずに消えていった無数の少女たちが存在します。SHHisの二人は、今までアイマスが描いてこなかった「光が当たらないままに消えていった少女たち」が、死に物狂いでもがいて、あがいて、ギリギリの所で「アイドル」という船にしがみつく事に成功したようなキャラクター造型がされています。

 みんなが「特別」で、みんな「普通」の女の子。これがシャニマスの頭のてっぺんからお尻へと抜けて一本通る思想の屋台骨です。そんな普通な女の子たちが、時に笑い、時に悩み、時に涙しながらも、一生懸命に自分が思う自分らしい輝き方をしようと努力する様子を見て、我々オタクは勇気づけられ、涙し、明日も一日頑張ろうと希望を胸に床に就く事が出来ます。シャニマスは何時だって、今日を生きる希望を俺たちに教えてくれる。

 そんな中、3周年の節目に登場したSHHisというユニットは、「アイドル」になりたくて、輝きたくて、今日も昨日も明日も明後日も、必死に我武者羅に、もがきながら、あがきながらも頑張り続ける女の子二人組のユニットでした。

 一方は、これからアイドルを目指して頑張ろうとする女の子。もう一方は、アイドルになろうと頑張ってきたけど、中々目が出ずそれでも必死にしがみついている女の子。地獄としってそれでも挑もうとしている少女と、地獄で魂をすり減らしてきた少女が、それでも地獄の奥底で燃えるいっとう綺麗な輝きを目指すというこの対比構造は、果穂と夏葉の対比を思い出したりもします。

 2年目に登場し、「自分を偽ってでも高く飛ぶ」という難問に、それぞれの「気高さ」で一つの答えを示したストレイライト、3年目に「アイドルと言う概念に罅を入れてやるぞ」とばかりに登場したノクチルは、「流れに身を任せたまま、自然に在る事で見えてくる輝き」という在り方を見せてくれました。4年目、「アイドル」である事に、「特別」であろうとすることにこだわるSHHisの二人は、これからどのような輝きを見せてくれるのか。

 最初ににちかちゃんのシナリオを読んだ時にはショックで暫くシャニマスを開けなくなるほど辛かったですが、美琴さんの存在が「きっと未来はそんなに悪くない」と希望を思い出させてくれたので今はもう大丈夫。この記事のタイトルは下品なくらいに「強い言葉」を使っていますが、この気持ちと向き合う為に記事を書こうともう一度二人のシナリオを読み返しているうちに、にちかちゃんのシナリオにも美琴さんのシナリオにも「アイドルになりたい」という純粋な気持ち、夢を目指して努力する人に対する限りない優しさが端々に息づいている事を見つけることが出来て、今では何度も読み返したくなるくらいに好きなシナリオになりました。

 シャニマスはが掲げているテーマは4年目になった今も一貫していて、一本通った大きな柱を、色々な角度から光を当てる事で見せ方を変えているのだという事を改めて確認する事が出来て、「その羽根はきっと光の当たり方で色を変えるって事!?変わらないものをしっかりと抱えたまま、新たな輝きを見せてくれるなんて、こいつぁなんてお化けコンテンツなんだ!ありがとう高山…ありがとう、真乃、めぐる…」と泣いて喜んでいたらなんと朝の9時。この記事を書くのに一体何時間泣きはらした?夜は寝た方がいい。お前たちもこんな記事を読んでいないで寝た方がいい。そろそろ体力が限界なのでここらへんでおやすみなさい。じゃあな!ちゃんと歯磨けよ!





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