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世の中に「絶対」はない

20代前半
僕は服が特に好きだった。

今でこそメンズファッジを読んで色の組み合わせなどあれこれ考え
シンプルな服装で『オシャレ』なんですね
と言われるようになったが

東京に上京するまでは正直服に全く興味がなかった。
中学から始めたバドミントンに夢中で
普段の服装なんてほとんどがYONEXのジヤージと
せいぜいGパンとシャツ程度。

中1の頃、最初の部活の打ち上げで身長も小さいうえに痩せているくせに
PUMAの赤のタンクトップを着て参加したことがある。
その頃は服にも疎く気持ちはまだ小学生故にそれがどれだけ悲惨なことになるかは気づいていない。
その時の女子の嘲笑の笑いを正直今でも鮮明に覚えている。

『帰りたい』

始まって数十分でここにたどり着いた。
そしてそのタンクトップはもう2度と着まいと帰ってすぐにゴミ箱に直行。


鹿児島県の田舎で育ったが、高校を卒業して東京に上京。
さすがに地元のままじゃいれない為
当時流行っていた『Smart』『ELO』を買い漁り服について勉強した。
専門学校を卒業し。特にやりたいこともなかったが
服は好きだったので興味本位でショーモデルを始めてみた


小さな事務所で自社でショーを運営していた為
ありがたいことにショーにはそこそこ出させてもらってた。
ところが僕は全くのド素人だ。レッスンとはいってもほんとに少しだけ。
当時はウォーキングも何がよくて何が悪いのかもわからない。
最初のショーに向けてのリハーサルに参加した時も
先生に「とりあえず歩いて」と言われただけで正直『は?』となった。
良し悪しがわからないから歩いてみたものの正解かどうかもわからない。
ほんとに困った。
そんな時にバイトの時に先輩に言われたセリフを思い出した。

『仕事ができるようになるには一番優秀な奴の真似をしろ。どんな物事にも絶対にこれは当てはまるから』


おそらくほとんどの人が言われたことがるかもしれない台詞。
それをふと思い出し、とりあえず一番優秀そうな人の真似をしようと思って
僕の数人前の先輩のウォーキングをずっと見ていた。
すると、その先輩は舞台の前まで行きターンをする前に
協賛会社の服を”バッッ”と服の裾を広げアピールをしていた。
『それだ!』と思った。
ショーモデルなんだから服をアピールするのが仕事だよなと

自分の番が来るのを待ちいざ出陣!!!
悠然と、コツ、、コツ、、と歩き始める。
そしてターンの前に”バッッ”と自身の服を広げた。
そして振り返ってまたコツ、、コツ、、と歩いて袖にはけた。
気持ちとしてはラッパーがフリースタイルかまして相手をボコったくらいの高揚感を持っていた。何にも根拠はないがとりあえず『やってやった』という感情。

すると先生から『さっきの子ちょっと来て』
と呼ばれた。

先生『さっきのなに?』
僕『いや、前の先輩のを真似してみたんですが』
先生『なるほど。勝手なことしないで。普通に歩いてくれればいいから』

ボキッ

心の折れる音がした
そしてとても恥ずかしい、、、
思春期の学生が女子の前でイキってしまった時と同じ恥ずかしさを感じた。 


『仕事ができるようになるには一番優秀な奴の真似をしろ。どんな物事にも絶対にこれは当てはまるから』

どうやらこいつは万能ではないらしいと。

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