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実録ルポ「介護の裏」

 


 甚野博則(ノンフィクションライター)さんの『実録ルポ介護の裏』(2024.05.17 文春新書)を一部抜粋した記事がYAHOOニュースに掲載されています。

1.虐待のあれこれ

 東村山の首都圏で最大級の規模(156室)を誇るサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)での虐待事案を中心に介護施設での虐待の実態を紹介しています。
 上記のサ高住では施設長の指示の下で虐待があったといいます。
 記事で紹介されている虐待は次のようなものです。

  • 夜間、部屋から出られないようにドアノブを外側から固定(徘徊させない)

  • 水を飲めないようにするため、数日間にわたって水道の元栓を閉める(排泄の回数を減らす)

  • 入浴介助の際、認知症の方や、クレームを言えないような方に、一枚のタオルを3人で使いまわす。順番が後の方は、濡れたタオルで身体を拭かれるので、冷たがっていた。

  • バスマットを交換する回数も減らしていたので、後から使用する方は足元が冷たい

 よくある虐待の事例だと思います。

 排泄介助の回数を減らすために水分を摂らせないでけでなく、介護職員が移乗介助を楽に行えるよう、本人家族の同意なしに、入居者の体重を減少させようと、食事制限(食べさせない)する施設もあるくらいです。
 さらに、排泄介助で使用するディスポーザブル手袋を4,5人に1回しか取り替えないとか、便がついても規定回数の排泄介助終了までオムツを替えないとか・・・介護現場には、さまざまな経費削減の工夫があります。

2.虐待の原因

 甚野博則さんは虐待の原因を現場を無視した“利益優先主義”と忙しさのあまり介護士の感覚も麻痺してしまうことだとしています。

 確かに、公定価格である介護事業で、儲けるためには経費削減が手っ取り早いでしょう。また、介護事業の経費で最も比率が高い人件費の抑制も利益増大のためには必要なことでしょう。人手不足から現場の過重労働が起こるだけではなく、儲けのための人件費抑制による過重労働もあり得るのです。
 資本の無限増殖が資本主義の本質ですから当然と言えば当然の結果かもしれません。

3.厳しくなる世間の眼と減算

 今後、『実録ルポ介護の裏』(甚野博則著 2024.05.17 文春新書)のような本や記事が増えていき、市民の眼もより厳しくなっていくくかもしれません。
 また、2024年度の介護報酬改定及び運営基準改定では、高齢者虐待防止措置未実施減算が導入されました。この減算は虐待防止のための委員会設置、指針の整備、研修の実施、担当者の指定といった必須措置を講じていない場合に、報酬から1%減算するというものです。

 介護施設、介護事業者は虐待防止に向けて真剣に取組んでいく必要があるでしょう。


 虐待について、もしよろしければ、以下のマガジンをご笑覧願います。

 また、資本主義体制における介護事業、介護労働については以下のマガジンをご参照願います。


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