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歩行時の筋シナジー 〜脳卒中者の神経学的な特徴と姿勢に対するアプローチ〜

はじめに

今回のテーマは、脳血管疾患を対象とした歩行介入についてです。

歩行分析って、細かいところを気にしていたらキリがないですよね。細かく分析出来ることに意味がないわけではないですが、『木をみて森をみず』。

小さいことを気にしすぎてしまい、本当に解決すべきところを見逃してしまう可能性もあります。

※理学療法士が細かい分析を行い、メカニカルストレスをなくす介入を否定しているわけではありません。

臨床において、脳卒中者における歩行介入では、以下のようなことを意識すべきだと考えています。

yamamoto作成

脳の損傷により、体幹や股関節の近位部筋が低緊張になってしまうことで、姿勢保持が難しくなってしまう。

力学的に前方への推進力が得られずに、歩行の効率性が得られなくなってしまうなど、姿勢保持と前方への推進力の問題があることも多いのではないでしょうか?

今回のnoteでは、歩行時における筋活動をついて『モジュール・筋シナジー』の考え姿勢保持に対する運動療法を紹介していきます。

約4000文字ほどのボリュームとなりました。一緒に学んでいきましょう!

それではよろしくお願いします!

筋シナジーとモジュールについて

早速、筋シナジーとモジュールについて説明していきます。カタカナが並びますが、安心して読み進めてください。笑

筋肉には、起始停止があり、関節運動を起こす筋作用がそれぞれの筋肉には存在しています。

大臀筋でいうと、
起始は、腸骨の腸骨翼の外面で後殿筋線の後方,仙骨の外側縁,尾骨の外側縁,胸腰筋膜,仙結節靭帯であり、

停止は、腸腔靭帯,大腿骨の殿筋粗面で、主な作用は、股関節の伸展です。

yamamoto作成

腓腹筋でいうと、
起始は、大腿骨の内側上頼 (内側頭 ) と外側上頼 ( 外側頭 )であり、停止は、骨の腫骨隆起であり、
主な筋作用は、足関節の底屈・膝関節の屈曲ですね。

yamamoto作成

歩行の勉強会や授業を思い出してほしいのですが、歩行中の大臀筋の作用は、立脚初期の衝撃吸収。腓腹筋の作用は、立脚後半の前方推進時に働く、なんて内容は、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

もちろん、各々の筋肉にそれぞれの作用があります。しかし、脳からの指令で全ての筋肉を、個々に制御しているのか?というと、そうではないようです。

ここで『筋シナジーとモジュール』の考えが出てきます。

筋シナジーの理論とは、立つ、座る、歩く、走るなどの動作時に、『どの筋が、どのタイミングで収縮している』と、個別の筋肉の働きをみるのではなく、グループ化してみていこう、というものです。

もう少し専門的にいうと、筋シナジーとは、
『いくつかの機能的に類似した筋をまとめて支配する神経制御機構のこと』
です。

『ひとつの動作を行う時に、協調して働くグループについて、まとめてひとつのユニットとして運動を制御しているだろう』というのが筋シナジーの考えです。
※言い方を変えているだけで、同じことを言っています。笑

個々の筋肉をグループ化しているのが、脊髄であり、そのグループのことをモジュールといいます。
論文から引用すると、以下のスライドのようになります。

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