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【夢日記】猛獣が商店街にいる

夜の商店街

夜の商店街に猛獣が何匹もいる夢をみた。

猛獣というのはライオンのように見えるものだが、大きな犬ぐらいのサイズで、結構痩せてもいて、ライオンであるかどうか確信がもてないような姿だった。色艶もわるかった。褪せた毛皮でよわよわしく歩く。だけど、確かに獣だった。

そいつは真夜中の、ほとんど人のいない商店街の道の真ん中にながながと体を伏せた。その周りにはそいつの子供らしき幼獣もいた。
なんでそんなところに猛獣がいるのかわからず、驚いて見ていたら、オートバイが走り込んできた。

危ない!

あたしは叫んだ。
幼獣が一匹、バイクにはねられて、宙を舞ってどっさりと地面に叩きつけられた。むごたらしいことだとも思い、悲しいことだとも思った。よりによって子供が傷つくだなんて。幼獣は死んだかもしれない。

こんな夜中にスピードを出していて、避けられないでいたオートバイがいけないのだ、とその時は思った。
いてはいけない危険な場所だというのを、獣がわかるわけがない。
子供を殺された母親の気持ちになって、胸がつぶれそうだった。

ところが母親はその子供を咥えて拾い上げると、それをまた道の真ん中に横たえた。子供はもう動かない。
そして自分も1メートルぐらい離れた場所に寝そべった。
他の猛獣もそれにしたがって、みんな一列に、道の真ん中に点線を描くように、それぞれ座り込んだのだった。ここは道などではない、自分たちの場所だ、とでも言うように。

凶暴な機械音が轟いて、バイクの一団がやってきた。くちぐちに猛獣たちに向かって怒鳴っていた。だけど猛獣たちは動じない。
つまりこれは事故ではなくて、あらかじめ争い事であったのだと、あたしはその時初めてわかった。

あたしの感情など役には立たない

最初に走り込んだオートバイは、幼獣を傷つけることなど覚悟の上だったのだ。
理由はわからないけど、道の真ん中に座り込む猛獣たちも、危険はわかっていたのだ。そしてなおも抵抗しているのだった。

この土地ではあたしはよそ者で、なにひとつ今までのことなんか知らない。知らないのに獣の子供がはねられたのをみて、胸をつぶされたような気持ちになっただけだった。
だけどおそらく彼らはずうっと以前から対立していて、それぞれにそれぞれの言い分があるのに違いない。殺したり殺されたりも、繰り返されているのかもしれない。

「ああ仕方のないことなのか」とつぶやいた。
少なくとも自分になにかできるようなことも無ければ、なにか意見じみたことが言えることでもないのだという諦めが、水みたいに体に沁みてきた。
獣にとっては、死んでしまった幼獣よりも大事なことがあり、バイクの一団にとっては、酷いことをしてでも取り戻さなければならないものがあるんだろう。

シャッターの閉まった商店街で、バイクの一団と猛獣たちは睨み合っていた。幼獣の死骸が、バリアを張ったように両者を隔てていて、だれも動けなくなっているのだった。

おひねりをもらって暮らす夢は遠く、自己投資という名のハイリスクローリターンの”投資”に突入。なんなんだこの浮遊感。読んでいただくことが元気の素です。よろしくお願いいたします。