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とんがった毒の鉛筆ポケットに『Poison-Peaked-pencil in Your Pocket』

個展のテーマについて言葉にすると

 今回の展示用に空想上の動物をいくつか描きました。
 空想上の動物っていうのは、ほとんどの場合、神話的な象徴とか、なにかの喩えとして描かれるんじゃないかと思います。スケッチブックの中に頻繁に登場する私の(どこにもいない形の)生き物たちも、その時々の感情とか出来事に沿って、なにか言いたくて出てくるのかもしれません。

 私は赤ずきんというモチーフを、『思春期の少女の象徴』として意識的に描き続けているんですけど、役割としての狼が、イメージの殻を破ろうとして変身して出てくるのかもしれない、とも思ったりします。
 狼は私の中では誘惑者や天敵であるだけでなくて、様々な要素を持ち得る存在です。少女の保護者だったり、一緒に暮らす家族、意見の違う友人、異なる文化の代弁者として遠くから訪ねてくる者、あるいは無知で幼くて、逆に少女に守られる立場の弱いものだったりもします。だからいろんな姿が可能なのです。

 とにかく、けっこうな数の変わった形の動物たちを折に触れて描きたくなりますし、他人が描いた化け物や妖怪や妖精の絵なんかも好きなんですよね。

 今回はそのようにして貯まってきた異形のものたちのスケッチから、何枚か選んで登場してもらうことにしました。数年間にわたるもので、いつか絵にできないかなと思ってとってあったものたちです。
 よく使っている鉛筆の先から、あんまり考えていない時にするする出てきたものばかりです。何を描こうとか、さほど考えていないのに、それでも出てくるものというのは、形にしておかないといけないと思うのです。

 単独で出てきたものも女の子と一緒に出てきたものもいますが、女の子と一緒にいると関係性が見えてやっぱり面白いので、そうなっています。女の子は自分に似ている子も似ていない子も描きますが、描いているうちに異形の怪物のほうは、全部自分なんだな、と思うようになりました。自然に出てくるのは、自分の分身だからだったのか。

 分身だけど、大きくて、無表情で、歪んでいたりしっぽが蛇だったりして、ちょっと『毒』がある分身です。そうと言わなければ「自分」だってわからないかもしれないような姿だし、女の子よりもかなり大きいことが多い。
 そういうものが鉛筆の先から生まれて来たってことで、個展の題名は『とんがった 毒の鉛筆 ポケットに』としました。ポケットで鉛筆がが温まって毒を帯び、ゆっくり生き物になって出てくる、そんな感じです。

恩田好子個展
とんがった 毒の鉛筆 ポケットに
Poison-Peaked-Pencil in Your Pocket

2022年7月26日(火)~7月31日(日)
12:00~19:00(最終日17:00まで)
会場:ギャラリーまぁる
〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿4-10-18-2F
telephone:03-5383-6101

全部自画像のようなもの

 7月の会期まで、またしつこく告知してゆくつもりです。
ちょっと奇妙な自画像ばかりですが、これも私です。お楽しみいただけるとうれしいです。

おひねりをもらって暮らす夢は遠く、自己投資という名のハイリスクローリターンの”投資”に突入。なんなんだこの浮遊感。読んでいただくことが元気の素です。よろしくお願いいたします。