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骨格派はだまされない(容姿コンプレックスOrigin20)

骨格派

 おそらくもう二度と会わないであろう盲目の歌手の心のなかで、あたしが完璧な美女になった(かもしれない)体験の話のつづき。

 例のあたしを好んでいたらしい詩人によれば、その歌手の人は一度聞いた声と名前が頭の中で一致し、一度会えば絶対に忘れないのだそうです。何人もの人をいっぺんに紹介してもそれは変わらないとの話です。
 つまり、その次にお会いしたときに「こんにちは」と声をかけますと、「ああ、SYNDIさんですね」という風にお答えが返ってくる、ということです。
 
 そりゃすごいな。と、あたしは思いました。
 ということは、この人は人の声質という物に対して、常人を越えた細かい感性を持っていることになります。
 となれば、声に対する好みも激しいのでは?「声美人」でなければ、彼は本当の美人とは思わないのではないのかしら?

 あたしはそれに気がついてしまい、彼のイマジネーションの中で完璧な美女になる、という野望(?なのかよ。なんかへんだな)がくずれかけました。
 「やっぱだめかもー」な気分になったわけです。

 いかに紹介者が詩人であるにせよ、その詩人の言葉だけで彼が女性をイメージするわけではない・・・。声は彼にとって、もっと生々しくリアルな情報であるはずです。

 レイ・チャールズの生涯を扱った映画『レイ』で、彼が女性の手と手首をなでるだけで、必ず見目麗しい女性を選ぶ、というエピソードが出てきます。
 たぶん、レイは”骨格派”だったのだと思います。骨格派は
たとえ目が見えていても、皮一枚の部分にはだまされませんから、本当の元からの美人だけにこだわります。
 骨のバランスがいいということは、歯並びや筋肉の付き方など、他のところも優れている確率が高い!

 画家レオナルドが、「このような体型の人はこのような足指、このような手の形をしている」というところまでこだわって絵を描いていたというエピソードがあります。指と手首の骨をさわれば美女がわかる、というのもあながち嘘ではないはずです。

 さて、声はどうなのかしら?
 身元不明死体の頭蓋骨があれば、声が再現できる、ってのを見たことがあるんで、きっと骨格に準じたものであるに違いない。
 「ますますだめじゃん」とあたしは思いました。

 しかし。
 しゃべり方、というのがあります。
 発声に対する美的な感覚というのもあります。
 それらがたまたまその歌手に好まれることは考えられます。

 それから、その歌手は私に触っていないのですから、骨格と声を結びつけては考えていないかも知れない。そもそも彼が”骨格派”であるとは限らない。におい優先とか、おにく優先とか、髪質優先とか、いろいろあるであろう。
 彼がどのような要素で美人というものを想像するかは、思ったよりずっと複雑そう・・・・。

 性格的にしつこいあたしは、こうやってあれこれ考えているうちに、”好み”ってものの迷宮に深く落ちていくことに・・・っていうか、そういう羽目になっていきました。

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