キャベツの女
あがり症の処方箋に、「観客はみんなキャベツだと思えばいい」というのがある。
ある芸人が客席を見ると、その日は客がみんなキャベツに見えた。
全ての顔が本当にキャベツだからまるで緊張することがなく、芸人は舞台の後、女のキャベツの1人に声をかけることすらできた。
芸人はそのキャベツ頭の女を家に持ち帰った。いや、連れて帰った。
家で見てもキャベツにしかみえなかったので、試しに食べてみることにした。女の頭を切り落として、スープとサラダにして、かなりの量を食べたが、冷蔵庫にまだある状態だ。
首のなくなった女は料理を食べもせず、しかし別段動じる様子もなく芸人の家で一晩を過ごした。
翌朝見るとキャベツの頭は新しく生え替わり、女はそのキャベツ頭を 洗面所で洗ってさっぱりした様子で帰っていった。
芸人のあがり症はそれ以来悪化して、一生治らなかったそうだ。
終わり
おひねりをもらって暮らす夢は遠く、自己投資という名のハイリスクローリターンの”投資”に突入。なんなんだこの浮遊感。読んでいただくことが元気の素です。よろしくお願いいたします。