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SESで働こうとする人が気をつけなければならないこと

こんにちは。本日は私がSES企業で働いて感じたデメリットや、ネット上にあまり書かれていないけど、本当は気をつけなければならないことなどについて書いていきたいと思います。

※ この記事はSES企業で1年過ごした私の経験に基づいた記事です。業界に参入しやすいだけあってSES企業のの数は多いですし、質はピンキリです。今回は、そんな世の中に数多あるSES企業の中のほんの一例であることを心に留めておいていただけると助かります。

スペック

- 4年制大学卒業(情報系の学部)
- SES歴1年(新卒で入社し、現在も就業中)

SESで働いて感じたこと

1. 研修が役に立たない

私は情報系の学部出身だったので、入社前に参加する案件が決まっていて、研修自体は1週間しか参加していません。ただ、研修内容やスケジュールは事前の配布資料から分かるので、それを参考に説明したいと思います。

まず、私が体験した研修内容としては「Javaを学ぶ → 設計書の作り方を学ぶ → テスト仕様書の作成を学ぶ → 顧客管理システムを作る」みたいな流れでした。

正直なところ、案件によって使用言語も違えばフレームワークも違いますし、設計書やテスト仕様書なども案件によって書き方の違いなどあったりするので、実務に直結はしませんが、プログラミング未経験の人にとっては「何かプログラミング言語を身につけていること」が他の言語を理解する上で役に立ちますし、私のように学生時代にプログラミング経験のある人にとって「設計書やテスト仕様書を書くときに記載しなかればならない事や、どの観点からテストを行えば良いのか、という勘を養う」点では有益だと思います。実際、私は研修に一週間しか参加できなかったので、実際の業務で設計書やテスト仕様書を作成する際に何を書けば良いのか分からずに結構苦労しました。

さらに、上記の研修、実は「マナー研修」みたいなやつがありません。客先常駐という運命を背負っている以上、ビジネスマナーは大事だと思うのですが。もし自身が所属するSES企業に「マナー研修」がない場合、私と同様にネットで調べて身につけていくことになります。

2. スキルが身につかない

これはよく言われていますが、個人的には「まぁ、その通りかな」という感じです。さすがに家電量販店やコールセンターに飛ばされるといった経験はありませんが、テスターから這い上がれずに開発のスキルが身につかないパターンはあると思いますし、私自身は、コードを書いて開発を行う案件に参加するときもあれば、今でもテスター案件に参加することもあります。

まぁ、確実に言えるのは、「自分の望み通りにはなりにくい」ということです。例えば、「Rubyの案件に参加したい。そこで開発経験を積んでWeb系企業のバックエンドエンジニアに転職したい」と考えていても、JavaやC#の案件にしか参加できずに数年経過してしまうということは多々あると思います。特に新卒や未経験で入社した場合、営業の人がこちらの希望を叶えてくれることはほぼないので自分の身につけたいスキルの実務経験が積めない負のループに入ることが多いと思います。仮に営業の人に「自分はRubyの案件に参加したいので、この案件は嫌です」と言っても、「とりあえず経験を積むのが大事」などと言われ、実務経験が無い人の場合はそれに対して反論できずに自身の理想とは違った案件に参加させられる羽目になります。正直、「SESで実務経験をつけて転職をしよう」と考えている人は、営業の人とはバチバチにやり合うくらいの姿勢でいかないと自分がキャリア的にキツくなります。

3. 精神的に病む可能性がある

これは研修の話と繋がりますが、満足な研修を行ってもらえないまま案件参加となると、作業指示の内容やコードの内容、設計書の内容などが分からず、完全に足手まとい状態になってしまい、そんな情けない自分の姿にに対して精神的に病んでしまう可能性があります。そしてこれは、私のような大学時代にプログラミング経験がある人でも「スキルアンマッチ」と言われる「自身のスキル外の言語やフレームワークを使用している案件に参加する」場合についても同じことが言えると思います。

このような案件に参加させられた場合、営業の人に「現場を変えたいのですが…」という相談をしますが、すんなり現場を変えてくれることはあまりないです。

そして意外と重要なのが同期の存在です。もちろんSES企業にも同期という存在がいますが、一緒に案件参加することはありませんので、休憩時間などに雑談したり愚痴を言い合うみたいな気軽に息抜きできる存在が近くにいないことになります。研修もそこそこに客先常駐するわけなので、ストレスという点に関してはかなりの負荷がかかると思います。その中で気軽に自分の話を聞いて境遇に共感してくれたり、前を向かせてくれるような存在がいないのは個人的には結構マイナスな点だと思います。常駐先で休憩時間に仲良く談笑しているプロパー(常駐先の社員)さんを見ると羨ましく思いますし、自身の境遇に泣けてきます。研修で同期と数ヶ月一緒とかだとまた違ってくるかもしれませんが。

4. 客先常駐ということ

客先常駐は気を遣います。自身が所属する企業からしたらお客様の場所で働くことになりますし、常駐先のお客様と接する機会もあるので、気が休まる暇がありません。自分は結構体育会系な環境で学生時代を過ごしたので、プロパーさんに「冷蔵庫はあそこ、電子レンジはあそこにあるので自由に使ってください」と言われても常駐先の会社が自身が所属する会社のお客様であるという事を考えすぎて使えませんでした。

次に、ネット上で結構書かれているパワハラですが、ご時世の影響か自分が幸運なだけか分かりませんが、自分はそういった経験はありませんでした。プロパーさんにとってみれば私は一応お客様なので、逆に気を遣ってもらってる感じもたまにします。ただ、チームで開発を行わなければならない中でその微妙な距離感で接しなければならないのが結構モヤモヤする点ではあります。

あとは通勤のことでしょうか。当然プロジェクトが終われば次の常駐先に行くので、運が悪ければ数ヶ月単位で勤務地がコロコロ変わります。そのせいである日突然、日課のランニングや勉強、個人開発の時間を通勤時間に当てなければならなくなります。百歩譲って勉強は通勤中にすることも可能ですが、その他については睡眠時間や余暇の時間を削って時間を作るしかありません。ただ、逆のパターンも存在していて、プロジェクトが変わって通勤時間が短くなり、自由時間が増えるパターンもあります。しかし、このパターンを冷静に考えるなら失った人権を取り戻した、みたいな感じでしょうか。

5. 我々に求められているのは成果物ではなく稼働時間

これはかなり重要なことです。SESの闇を紹介しているサイトでもあまり書かれていませんが、かなり重要です。

SESで働く場合、「指定のモノを作成し、プロジェクトを完了させた」ということが求められているのではなく(プロパーさんからしたらそれを求めているとは思いますが)、自分が所属する会社と常駐先の会社の間で交わされた「稼働時間〇〇時間で単価〇〇円」という契約の中で働くということです。

SESは人売り商売なので、自身が案件に参加する際に「稼働時間〇〇時間で単価〇〇円」という契約が交わされます。これは「私が所属する会社から〇〇さんを派遣して月〇〇時間働くので、その対価として常駐先の会社は〇〇円払いますよ」という内容です。我々SESエンジニアはこの「稼働時間〇〇時間」を満たすことが何よりの目標となります。

例えば、「稼働時間140〜180時間で単価60万円」とし、1日の労働時間を「9:00〜18:00勤務(休憩時間1時間)=実質労働時間8時間」としたとき、2022年4月の場合ですと、平日が20日なので、「8時間×20日=160時間」となり要件を満たす事ができます。この稼働時間ですが、よほどのことが無い限り普通に働いていればクリアできます。

そこで次に、2022年5月の場合を考えてみると、平日が18日なので、「8時間×18日=144時間」となり要件を満たすができます。しかし、せっかくのGWなので有給を使用して連休を伸ばしたいという考えも出てくると思います。では、5月2日、6日に有給を使用した場合、実際に働くのは16日となり「8時間×16日=128時間」となり、目標の最低ラインである「稼働時間140時間」にあと12時間足りません。

ではその場合どうするのかと言いますと、「無意味な残業」をします。やることがなくても作業があるフリをして不足分の12時間を稼ぎます。リモート案件の場合は誰も見ていないので自主学習時間にするという選択ができますが、オフィスに常駐の場合は単純に時間を無駄にすることになります。「有給を使って休んだ分を働く…有給とは?」という自問自答を繰り返すか、転職に向けての計画を練る時間になります。この問題を一般企業で例えるなら「有給使った分どこかで埋め合わせの出勤をしてくだい」と言われるようなもので、このパターンはだいたいブラック企業認定されます。そのレベルの問題が普通に行われているのがSES業界です。まぁ、やっていることは派遣なので仕方ありませんが。大型連休のある5月や平日の少ない2月は特に気をつけて過ごしましょう。

ここまで稼働時間について書いてきましたが、よくSESのメリットとして「成果物に対しての責任は一切発生しない」という点が挙げられていますが、これは確かにメリットではあると思います。案件を途中で抜けることができる可能性があるのもこれのおかげだと思います。しかし、案件に参加している以上、チームとしての目標は「成果物を納品する」ことです。「振られたタスクが終わらなくてもいいや」という精神で過ごしていると進捗会議で気まずい思いをしますし、進捗が悪いチームの雰囲気はだいたい最悪なので、その原因となる可能性があります。したがって、「成果物に対しての責任は一切発生しない」が無いのは確かだが、それは万が一の最終文句であって、結局のところ「成果物を作る責任」はあります。

6. SESという働き方について家族や友人に言いにくい

SESという働き方の仕組みを説明するのも面倒ですが、やっていることは派遣に近いものですし、詳細な説明をしたとしても相手からしたら「結局のところ派遣だね」と認識される可能性が高いです。

特に、高校、大学と平均よりちょっと上以上のランクのところに通っていた場合、「派遣」という働き方をしている人が稀有な環境なので、友人にSESの説明をすると半分同情、半分引かれるみたいな空気になります。こちら側的には業務についての不満の話で自虐笑いを取りたいのですが、ウケずに変な同情をされます。なので「IT企業で〇〇の開発をしている」的な事を言って微妙な空気になるのを回避しましょう。

次に、自分の家族に対してですが、「派遣とほぼ同じ=職業として不安定」という認識をされますし、実際のところ自社待機などになると給料が下がるケースもあるので不安定な職業であることは事実だと思います。したがって、家族は心配しますし、大学まで卒業させてもらってそういう環境にしか就職できなかった自分に対してとても情けなく思います。その原因が自分自身であるだけに余計に。なので、現在学生の人はこんな筆者のようにならないようにちゃんと大学生活を送りましょう。

7. 重要なポジションに昇進するのはほぼ営業の人

SESにはだいたい帰社日という、客先の業務終了後に自社に行って事業成績やお互いの近況を報告し合うという完全に無駄な文化があります。帰社日を設ける理由として「社員の帰属意識を高める」というものがありますが、高くて月1回程度の帰社日で帰属意識が高まるのか疑問ではあります。

そんな話はさておき、事業成績の報告と書きましたが、これは「営業がどれだけの案件を拾ってきた、社員の稼働率はどれだけか」という営業の人の成績報告になります。まぁ、これはIT企業といっても所詮は人売り商売ということをしっかり表してくれていると思いますし、客先の業務を終えて帰社日に参加したエンジニアにとってはどうでも良い数字になります(エンジニアの給料は業務成績ではなく本人の単価で決まるので)。そして、ここで重要なのが「企業として重要なのはエンジニアがどれだけ質の高い仕事をするかではなく、営業がどれだけ案件を拾って利益を生み出すか」ということです。つまり、企業が評価するのは営業側ですし、会社の組織図を見ても営業の人が上のポジションにいることが多いです。

8. 昇給の基準が不透明

私はこれまで1人でしか案件に参加したことがありません。そのため、普段の働きぶりを評価するのは常駐先の社員さんということになります。この常駐先の社員さんからの評価は案件を拾った営業の人なんかが聞くことになると思いますが、プロパーと営業の間でどんな会話が行われているか分かりませんし、最終的な昇給額を決めているのは自分の所属企業の人間です。ただ、はっきり言って、近所のコンビニの店員の方が顔見知りというレベルで自社の社員とは顔を合わせる機会が無いので、そんな人たちから「昇給額は3,000円です」と言われてもその昇給額の基準が不透明すぎて納得しにくいです。

SESで働く上で想定される最悪のケース

ここからは自分がSES業務を行う中で考えたキャリアプランに対して想定される最悪のケースについて、新卒、中途(未経験)の場合のパターン別に紹介したいと思います。

1. 新卒の場合

新卒の場合だと、私のようにロクな研修もなく現場にアサインされて業務についていけずに精神的に病んで数ヶ月で辞めるというのが最短で考えられる最悪のケースですが、新卒なので年齢も若いですし、まだまだ色んな道が残されているので人生の再設計は効くと思います。

また、無事に研修のカリキュラムを全て消化した場合でも注意が必要です。
研修のカリキュラムを終えたと言っても、前述の通り現場によって使用スタックは違うので研修はほぼ役に立ちません。したがって、最初からコードを書いて開発を行う案件に参加することはほぼありません。そこで、新人のエンジニアはだいたいテスターとして最初の案件に参加することになります。テスター案件の場合、「他のメンバーが作成したプログラムがテスト仕様書通りに動くか」を確認してエビデンスとしてそのスクリーンショットを保存していくことになります。具体的には「ボタンが押せるか、表示されているテキスト内容が正しいか」といった内容です。確かにテスターは重要なポジションです。納品に向けての最後の門番がテスターなのでとても重要なのですが、想像すれば分かるように誰でもできるので、エンジニアとしてのスキルがつきません。ただし、受託開発や自社開発の企業に入った場合でも新人がテストを行うのはよくあることです。SESエンジニアが恐れなければならないのは、「開発の実務経験が積めないのでずっとテスター案件ばかりやらされる」という状態になることです。受託開発や自社開発の企業の場合、自社の社員としてしっかり力をつけてある程度業務をこなしてもらわなければならないので、段階的に開発やPLなどのポジションを経験できると思いますが、SESの場合、利益は稼働時間に対する報酬であり、会社からしたら案件に参加させることが一番でエンジニア自身のスキルは二の次になる場合が多いです。したがって、テスター案件にアサインされ続けた状況で、そこから抜け出すために自分でアクションを起こさなかった場合は完全にこの負のループの餌食になります。受託開発や自社開発系の企業に転職を狙おうにも、開発の実務経験がないので結構茨の道になると思います。

2. 中途入社(未経験)の場合

中途入社であっても一番怖いのは「テスター案件にアサインされ続ける」ことなのかと思います。ただ、中途入社の人がこのパターンで恐れなければならないことは、「テスター案件なのでスキルが身につかない=単価が上がらない=給料が上がらない」ことだと思います。中途入社の場合、年齢もそれなりだと思いますし、結婚など人生の転換期でお金も重要になってくる時期だと思います。中途入社でも未経験の場合は新卒に毛が生えた程度の給料になる場合もあるかと思いますが、テスター案件ばかりですと給料は1年で数千円程度上がるかなという感じだと思います。前職で稼いでいるなら良いですが、そうでない場合なかなかキツいと思います。そしてこちらも、受託開発や自社開発系の企業に転職を狙おうにも、開発の実務経験がないので完全に茨の道ですし、特に30歳を超えている場合はそれなりの開発やマネジメントの経験も求められてくるのでハードルはかなり高いと思います。言い方は悪いですが、PLやPMより年齢の高い開発経験がほぼない人をチームに迎え入れるのは色々気を遣いますし、敬遠される傾向にはあると思います。

就活生と大学生に向けて

SESという働き方について賛否両論あると思いますが、個人的には「少なくとも新卒カードを使用してまで行く業界ではない」と思います。だいたいのSES企業は入社難易度的にはかなり低い方だと思いますし、20代であれば未経験でもどこかしらのSES企業に入社できると思います。

「新卒カード」というのは最強のカードです。中途採用だとある程度の実務経験を要求してくる企業も新卒カードさえあれば「実務経験」という概念がない以上、入社のハードルは当然低くなります。なので、それなりの大学生活を送って「エンジニアになりたいけどSESしか選択肢がない」という状態にならないようにしましょう。自分はその「それなりの大学生活」ができていなかったので、SESしか選択肢がなく、今現在こんな暗い記事を書く羽目になっているので。

コロナ禍でリモートでのインターンやプログラミングのアルバイトなど地方の大学生にも優しい環境になっていますし、スキルが身につかないSESから抜け出すために必死にポートフォリオを作るくらいなら、学生のうちにその経験をしてスタートから自分の理想の企業で働けるように頑張った方が良いと思います。受託開発や自社開発系の企業への転職前提で妥協してSES企業に入った場合、「転職」という目標のために数年費やすことになりますが、新卒で理想の企業に入れた場合は最初から「自身のスキルを高める」という目標に向かって進めるので、大学生のうちに少しでも良いので何かアクションを起こすことをオススメします。

最後に

ここまで自身の体験を基にSESについて色々書いてきましたが、デメリットばかり挙げてしまってSESで働いている人に何だか申し訳ないですね。

ただ、このnoteや他のサイトなどでSES企業の社長さんやSESの営業の方がSESのメリットについて書いた素敵な記事が多くあるので、メリットを知りたい方はそちらを見ていただければと思います。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
それでは。


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