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#35. 思考を保留させる事の価値

現代社会では、常に迅速な判断と即座の行動が求められる場面が多い。
しかし、二者択一が出来ないグレーな状況に直面した時、その判断を急がずに「保留する」ことには一定の価値があります。

このブログでは、研修担当者がこの概念を理解し、それを他の人に伝える方法について探求します。

例えば中間管理職は、経営判断が現場の意向とズレた時に、大局的な判断と近視眼的な判断のズレを公明正大に表現できないという状況に立ち会う事が多いと思います。
如何に中間管理職が経営層の意図を上手に分かりやすく表現して現場に伝えられるかが、企業の成長に重要かはお気付きだと思いますが、「嘘をつきたくない」という感覚に悩む中間管理職の方には心を整理するために是非読んでいただきたいと思います 。
また「社長がバカだからウチの会社はいつまで経っても、、、」と言いがちな方にも読んでいただきたいと思います。

1. 世界の中は「100:0」で出来ていない
私たちはしばしば、明確な答えが存在しない問題に直面します。このような状況は、二者択一の解決策が見当たらない「グレーな世界」と形容されます。こうした状況では、通常の理性や常識が一時的に機能しなくなることがあります。
良き答えは、主に①時間軸:いつ達成させたい課題なのか、②人称軸(対象者の範囲):どのくらいの規模の誰に貢献したい課題なのか、③空間軸:どんなエリアや世界観に於ける課題なのかという視点を基に形成さるものでしょうから、絶対的な正解なんて存在しないということになります。
むしろ、私たちがどう「在るべきか」ということを問われていると考えたほうが良いと思うのです。
だからこそ、それは、存在することの複雑さ、そしてその中に潜む意味を探究する絶好の機会です。その中にいる人として、あなたが選ばれたことを是非噛み締めてみてください。

2. カオスを愛する心理とその利点
カオスを恐れず、むしろ楽しむことができる人々は、ノルアドレナリンのレベルが高いと言われています。このタイプの人々は、不確かな状況や予測不可能な展開を好み、それを通じて成長と発見の機会を見出します。カオスの中にある秩序を見つける能力は、研修プログラムで特に強調すべきスキルの一つです。それは、不確実性を受け入れ、その中から新しいアイデアや解決策を生み出す力に他なりません。まさに受講者も貴方も試されている瞬間と言えます。

3. パラドックスとリアリティ
私たちの存在そのものが、時にパラドックスであり、その真実性(リアリティ)を見極めることは難しいかもしれません。しかし、この複雑さを受け入れることが、より豊かな人生を送る鍵です。例えば、病気は健康をより深く理解するための手段となり得ます。病気になることで初めて、健康の価値や生命の儚さを真に理解することができるのです。このように、負の経験からポジティブな洞察を得ることは、人間の成長に不可欠な過程です。負の経験にも価値があると受け入れる事が貴方には出来ますでしょうか?
失敗を通して部下が急成長したと言う事例が世の中に数多ある事等も理解を助けるかも知れません。

研修担当者の皆さんには、このような複雑でグレーな状況を恐れずに受け入れ、それを学びと成長の機会として捉えるよう促していただきたい。
思考を一時的に保留することの価値を理解し、それを研修プログラムに組み込むことで、参加者が不確実性を乗り越え、より柔軟な思考を持てるようになることをどうぞ目指してください。状況が常に変化する現代社会においては、すぐに答えを出すことよりも、状況を深く掘り下げ、複数の視点から問題を考えることも重要です。研修で提供されるべきは、即断即決の技術ではなく、深い思索と理解を促すプロセスです。

例えばこんなプログラムは如何でしょうか?
1. 多面的思考の促進:参加者に、問題に対する複数の解答を考えさせる演習を取り入れます。これにより、一つの正解に固執するのではなく、多様な可能性を探求する思考が養われます。

2. インバスケットケーススタディの利用:インバスケットケーススタディとは、企業内の問題を簡略化してケース(事例)として提示し、グループによる討議によって問題の本質を解明して解決策を導き出す方法です。実際のビジネスや人生から取り上げた、解決が困難なケーススタディを分析することで、グレーな状況における判断力を高めます。参加者は、異なる視点から問題にアプローチし、その複雑さを理解することを学びます。

3. リフレクションの奨励:行動や判断を下す前に、自己反省の時間を持つことの重要性を強調します。この時間を通じて、自己の価値観、偏見、そしてその状況における自身の立場を再評価する機会を提供します。
上長が不意な言葉を発し、部下に伝える。上長は話しながら「言い過ぎ」に気付いているが止まらなくなる。そんな場面に遭遇した事があると思います。「保留する」と言う意識が、上司の価値を高める事が出来ます。

思考を保留することの価値は、単に答えを出すことを遅らせることではありません。それは、より深い理解、柔軟な思考、広い視座、そして最終的にはより賢明な判断につながるプロセスです。研修担当者として、参加者がこの能力を身につけ、不確実性の高い現代社会で成功するための基盤を築くことができるようサポートすることが重要です。真の学びと成長は、快適ゾーンの外側、未知の領域で起こるのです。


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