老主人 耶馬溪からの帰り道 筑後川ぞいに「布膳」の名を見つけた 日田の「布膳」はそば饅頭の老舗 そば饅頭は 日田出身の親父の好物 美味そうに饅頭をほうばる親父の顔が浮かぶ 今は仏壇のお供にする 国道沿い空き地に車をよせ店内に入った 店内に人の気配はない 陳列ケースの菓子箱は どれも色褪せている 鴨居には埃をかぶった菊紋の金杯と 色あせた賞状 明治神宮献上菓子とある 奥に進むと左手に作業場がみえた 「こんにちは!」奥へむけて二度声を張った 「はーぃ…」と返事 白衣にエプロ
心地いい映画に出逢った 時代は第二次世界大戦直後 ある農村に北イタリアから 300人を超える出稼ぎ女が集まる 水を張った田んぼが広がる 麦わら帽子に短パン姿の女が いっせいに田植えを始める 田植え歌の掛け合いは どこかミュージカル風 女たちは40日間寝食をともに過ごす 悩みも打ち明けあえば つかみ合いの喧嘩もする 集団生活を背景に男と女の愛憎が渦巻き 模造品の宝石を中心にサスペンスが繰り広げられる メイクも演技も脚本も 今とは違う 昭和の大映作品を思わせる シル