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"両極"から学ぶ企業文化の本質。|カルチャーデザイン

「企業文化」には「正解」もなければ「一般解」もない。形もなければ目にも見えない。

あるのは「相対的な違い」であり「特徴」であり、結果としての「足跡」である。

人類が成功例を学んだり、うまくいっていることを積極的に取り入れ改善していく営みは、かけがえのない進歩の素ではあるものの、こと「企業文化」においては結局のところ、自らの「失敗」から学ぶ以外に最短の道が無い。

そんないばらの道を邁進する日々でも、可能な限りで「企業文化」というもののメカニズムや理屈にアプローチしたり、一見異なる相似形な事象・物事に照らし合わせたり、何よりも自分・自社の事を知る内省に励んだり、逆に世の中に存在する「成功の両翼」を知ることで、この無味無臭な「企業文化」にはっきりとした輪郭を与えることは、大きな意義があると思っています。

今回紹介したいのはそんな「成功企業」の好対照な「企業文化の両翼」です。どちらの企業も創業から20年以上が経ち、今も革新的な成長を続け、共に時価総額は1兆円をはるかにしのぐベイエリアのIT企業。

しかし、そんな共通点をあざ笑うかのように、こと「企業文化」においては真逆、正反対な性質を持っている2社

ネットフリックス(Netflix)VS セールスフォース(Salesforce)

という企業文化の両端から学べるものは、いったい何だろうか。

共通する規模、そして価値

まず最初に、この2社の事業規模等をざっと比較してみたいと思います。

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どちらも創業20年以上が経ち、直近のコロナショックでも変わらず成長を続けています。むしろ「巣篭もり消費」「DX」という波にそれぞれ乗ってさらに成長を加速させていますね。どちらも創業社長が経営を続けており、Netflixは明確に2回も事業をピボットしていますが、Salesforceも時代に合わせてCRMという軸をブラさずとも様々な事業を展開して成長を続けています。

さらに共通する、企業文化への信念

めまぐるしい産業構造、事業環境の変化をもろともせずに20年以上成長し続け1兆円を軽く超える世界を代表する企業の2社にはさらに共通点があります。

それは創業者を中心に「企業文化」を成長のコアとしている点です。

Netflixは過去のnoteでもその特徴的なカルチャーや背景に関して触れてきたのでこのnoteでは割愛させて頂きますね。

敢えて1点だけNetflixのカルチャーを分かりやすく表現しているチャートを、上記noteで参照した「NO RULES」から拝借すると、日本人のカルチャーと比較したこちら。

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おそらく「文化(カルチャー)」として最も大きな単位が「国家」だと思いますが、そんな異なるカルチャーと対比させることによって得られる「コントラスト」こそ、それぞれのカルチャーを理解するのに最も合理的な認識パターンですね。この絵で言えることは、Netfrixはいわゆる"典型的"な日本人カルチャーとは真逆な企業文化を持っている会社と言えます。

そして、同社に勝るとも劣らない熱意と粒度で「企業文化」を経営・戦略・事業と全ての中心に据えてきたと名言するのがマーク・ベニオフ率いる「Salesforce」なんですね。

実は「企業文化」というフィルターを通じてはあまり馴染みのない企業だったので(友人が何人も勤めていたにも関わらず)、彼の最新の著書「トレイルブレイザー 」を読んで心をあらためてました。

いくつか彼の言葉を引用してみます。

1999年春にSalesforceを創業したとき、私たちは最初のバリューを書き出した。単に優秀な人材を雇用し、実用的な製品を出荷するだけでは足りない。私たちの成功は、バリューをしっかり守る企業文化を築けるかどうかにかかっていると。
この本で取り上げた経験から私が学んだことが1つあるとすれば、それは試練の時こそバリューと企業文化が最も重要になるということである。
この本の根幹となる前提を一言で表すならば、バリューに根ざした企業文化が価値を生み出す、ということだ。
1999年に創業し、2004年に上場時には10億ドルだったSalesforceの時価総額が1200億ドル(本note執筆時は2200億ドル!)を超えるまでに成長した主な理由、成功の最も強力なエンジンは、当社のソフトウェアでも、従業員でも、ビジネスモデルでもない。最大の要因は「バリューに基づいた企業文化にする」という1999年の意思決定にある。

敢えてエクスキューズしておくと、実際私はNetflixでもSalesforceでも従業員体験が無いので、自らが関わる企業以外は実際の文化の手触りや濃度・密度みたいなものはこういった創業者を中心に外へ発信されるものに頼るほかありません。しかし、仮にこれらを「成功者の美談」として割り引いて捉えたとしても、自ら「企業文化こそ競争の源泉」と語るこの2社の長きにわたる成長・成功要因の大きな部分を「企業文化を核とした経営」が占めることに疑いの余地はないのではないでしょうか。

多くの共通点に対して、大きく異なる「企業文化」

さて、今回のnoteで触れたい核心に話を戻します。
大雑把言えば同じようなスパンで同じような規模・価値へ成長した相似形の2社ですが、中身の「企業文化」におていは真逆の性質を有しています。

両社の企業文化をまず端的にニュアンスで表すならば

Netflix|"ハードコアなエリートアスリート集団"
Salesforce|"ハートフルなビジネス・社会貢献団"

と言ったところでしょうか。

いくつかポイントを絞って表で比較してみます。

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このように本当に好対照なんですね。

ちなみにSalesforceのマーク・ベニオフはNetflixの企業文化について名指しで批判しています。

一部のCEOは、従業員を家族のように扱う考え方は、成功には逆効果になると見なしている。例えば、ネットフリックスのCEOであるリード・ヘイスティングは、自社の企業文化や経営哲学を「家族ではなく、チーム」と表現することで有名だ...スタープレーヤーがあらゆるポジションでハイレベルなパフォーマンスをすることを期待して、優勝というチームのミッションに貢献していない人はトレードもしくは退職させるというのは、理屈としてはわかる。けれども、私のアプローチは違う。

創業から20年以上経って、どちらの企業も一見大成功しているように見えます。ただし、まだ20年です。まだ両社は壮大な登山の過程にいるので、今後両社がどのような試練に立ち向かって、その結果登頂するかどうかは誰にもわかりません。

まず大事な認識は、故に唯一明らかなのは、彼らが違う山を、異なる登り方で登っているという事実だけなんですね。

そして、唯一現在までの成功の共通点と言えるのは、彼らが「企業文化」を経営の中心に据えてきたということです。

自社の企業文化を創業当初から大切にし、可能な限りで可視化し、定義し、文化に沿って採用をし、自社の成長に合わせて丁寧に文化を調整し、組織のトップが模範となって行動で示し、文化に沿って組織全体が意思決定をしてチームとして動き続ける。

そうやって丁寧に「文化の種」を育んできたことこそが、2社に共通する最も大きな成功要因だと考えても乱暴すぎはしないでしょう。そして、そんな2社は全く違う山の登り方をし、これからも全く違う文化を育み続けるということです。

特に企業文化という広く大きく曖昧な観点から派生する「採用」「制度」「福利厚生」...等の枝葉の話になると、他社の成功事例を闇雲に真似たり、どれが「正解」でどれが「不正解」という議論になりがちですが、大元の「企業文化/山の登り方」という観点に立ち戻れば、結局「何が自分らしいか」という問いでしか最終的な「特殊解」は得られないんですね。「相対的な違い」をハッキリと認識しつつ、内省の旅路をしっかりと走破しないと自社が有している文化、必要としている文化というのはわからないのです。

成功する文化が依存する「どこで戦うのか」という問い

繰り返しですが、「企業文化」自体は大変に大切であるものの、そこに「正解」もなく、文化という観点での成功事例を、他社は簡単に真似るべきではないと思っています。

しかし、おおよそこういう「企業文化」の方が有利である、という「成功する文化の傾向」みたいなものは、その企業が戦う場所、つまり「事業ドメイン」に依存する部分も透けて見えるのですね。つまり、事業ドメインに起因する競争戦略論の観点では「取るべき企業文化」「勝負に有利な企業文化」というものが"短期的"にはあると考えています。

今回の2社は好対照な「企業文化」を有していますが、

Netflix|C向けのエンターテイメント事業であり、どの企業よりも優れた人材を集め、どの企業よりも優れたコンテンツ・プラットフォームであり続けることが競争優位となる

Salesforce|B向けのエンタープライズ事業であり、優れたソフトウェアはもちろんだが、導入先企業や企業内エヴァンジェリストを家族のように大切にし一緒に成長することで事業も成長することが競争優位となる

それぞれの事業ドメインに彼らの企業文化の特徴を当てはめると、それらが極めて合理的に競争戦略上、優位に働くことがわかります。

日本の有名な事例で言えば「メルカリ社」の有名なコアバリュー のひとつ「Go Bold」は彼らのフリマアプリという「C to Cのマーケットプレイス」という事業ドメインにおいては誰よりも先に両マーケットの規模を確保することが競争優位に繋がるので、極めて合理的に働いたという同社の自己分析もあります。そして、その「Go Bold」はメルペイのような「金融」ドメインの事業においてはマイナスに働いた、という声も...

当然、こういった「成功話のリバースエンジニアリング」においては企業文化のみならず複雑な外部環境や、外から計り知れない内部事情など、多くの変数が掛け算となっての結果なので、単一の事象を成功要因として連立方程式の解を導くにはやや無理があります。

ただ、「正解」や「一般解」が無いとされる自社の「企業文化」を客観的に評価する上において、荒波の中で見つけ出す文化の羅針盤として、自社の事業ドメインとの生合成は十分参照に値する視座を与えてくれますね。

このように、自社の「企業文化」とは内省の旅路の果てにたどり着く「本来の姿」だと思いますが、「相対的な違い」というコントラストで透けて見えるエッジポイントからも、自らの進むべき道筋がよりクッキリと見えてくるかもしれません。

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Kenji Tomita | Runtrip取締役

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