企業文化における「スタンス」と「スタイル」の決定的な違い。|カルチャーデザイン
良い組織、良いカルチャーというのは、それ自体の良し悪しではなく、常にそれが注目され、強め続けられているという文化の高い基礎体力だと思います。
そんな企業文化の健全度を常にモニタリング、アライメントし続ける文化の基礎体力向上に、次のボキャブラリーが大変役に立ちます。
"その振る舞いは、文化における「スタンス」か、それとも「スタイル」か"
健全な回答例は「両方」となります。
これは、どういうことでしょうか。
スタンスとスタイルの違い。
あくまで「スタンス」「スタイル」を厳密にどう定義するかにもよるので、このデザインボキャブラリーを使う場合、それぞれ次のように整理しています。
図でまとめます。
多くの企業の場合、企業文化として「スタンス」を明確にしているものと、暗黙的な「スタイル」としてグレーゾーンになっているものがあります。
これは、良い悪いではなく、全てを「スタンス」として明確にするのはそれこそ「当社の企業文化辞典」のような誰も読まない分厚い冊子ができてしまうのでオススメしません。
往々にして、スタンスは「コアバリュー」「行動規範」という形式を伴って可視化、言語化されますが、それはあくまで企業文化の上澄みにしかすぎないということです。
最大公約数的な「スタンス」という文化の上澄みと、その水面下に広大に広がった暗黙的で極めてグレーゾーンな「スタイル」の合わせ技によって「企業文化」というのは実態を成しているわけですね。
このデザインボキャブラリーを通じたもう一つの企業文化の重要な構造理解は、「スタンス」として明確にしたものはその瞬間から「静的」なものとなり、次のアップデートまでそれであり続けます。
一方、実態の企業文化は「人」「組織」という新陳代謝と成長を前提とした「ダイナミック系」と密結合するため、極めて「動的」です。本来は、企業文化そのものがダイナミックシステムなんですね。
文化のスタンスを明確にすること自体は、組織における「共通言語」や文字通り「共通の価値観」をポータブルにし、評価システム等の「他の組織運営システムへの組み込み」という観点で極めて合理的ではあるものの、文化は本来はダイナミックシステムであるという自己矛盾を抱えています。
この矛盾に対する最適解は、常にその組織のフェーズや実態を踏まえた上でのバランスの上に都度着地させる以外方法はないのですね。
では、「スタンス」と「スタイル」で整理する「企業文化」において重要なポイントは何かというと、次の2点です。
1. 「スタンス」以外にも暗黙の「スタイル」が存在するということ
2. 「スタンス」と「スタイル」に大きなギャップがあってはならないということ
1に関しては既に書いた通りなので、もう少しだけ2に関して掘り下げていきましょう。
スタンスとスタイルのギャップがEXを下げる
極端にわかりやすい事例を挙げると、
"ワークライフバランス"という「スタンス」のバリューを明示的に掲げている会社のトップが、土日もメールやSlackの@mentionを飛ばしまくる「スタイル」である、というのはわかりやすい「スタンス」と「スタイル」のギャップですね。
"言行一致"
とは良く言いますが、これができていないとその人に対する信頼、その組織に対する信頼はどうしても揺らぎます。従業員満足(Employee Experience|EX)は、会社や上位レイヤーの「言行一致」に極めて敏感に依存します。
企業文化として宣言した約束を守れるのか、守れないのか。
至極当たり前の話かもしれませんが、実態としてここにギャップのある企業は少なくないのではないでしょうか。ここに、ソフトにおける組織デザイン・カルチャーデザインのキモがあります。
当然ギャップが無い方が良いというのは理想論で、理想と現実のギャップの埋めるために、あえて「理想の文化」を掲げるという場合もあると思いますが、それであれば「理想である」「この観点においては理想と現実にまだギャップがある」というのを明確にしておかないといけませんね。
こちらのnoteでも書きましたが、
端的に言えば、
EX(従業員満足)は Expectation Gap(期待値とのギャップ)と反比例します。
「スタンス」として明示すれば、それが入社前から「期待値」となって積み上がりますから、この「スタンス=期待値」と「実態=スタイル」にギャップあれば、働く体験として不味いのは容易に想像がつきますね。
今時のスアートアップであれば大抵「スタンス=バリュー」として定義、明示してあるので、現場のカルチャー・組織デザイン担当は「スタイル」というデザインボキャブラリーを意識して持っておくだけで重宝します。
文化は「ハイレベルな思考」よりも、結果としての「ローレベルな行動」に現れます。
事件は現場で起きています。「スタンス」と「スタイル」という視座を通じて、ダイナミックシステムの組織に対して常にギャップを察知し、バランスを取り、時にハンズオンで埋めに行く。これをやり続ける。
これこそが組織・カルチャーデザインの基礎体力になりますね。
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