「塔」2019年11月号(月詠)
早朝のマクドナルドの窓辺にてマフィンの粉が指にまぶしい
エレベーターごとゐなくなる物語われに起こらず十階へ着く
近づくと意外と音がうるさくてモノレール、夜を切りとる光
待つたなしで過ぎゆく夏の教室に制汗剤のにほひあふれる
露地物の野菜はグレてゐると云ふグレてゐるからうまいのだと云ふ
そちらではよろしくやつてゐるさうで実は落とし穴だつたらしいが
八月は濃いみづいろに縁取られいつしか凪いでゐるカレンダー
(p.149)
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