Dead Stock(12首)
もうすこし美しくなるはずだつた器が誰の心にもある
この街を消費してゐる僕たちはイオンに寄つてから大学に行く
新設の書架のひかりを浴びながらレーニン全集、とほい呼吸よ
あくまでもそれはいたみで、みづうみにゆらぐ水面のやうに呪つた
君の死後を見事に生きて最近のコンビニはおにぎりが小さい
掛け持ちのバイトのやうにやめられるはずも無かつた まだ生きてゐる
暗闇を知つてゐるから見えるんだ点滅をくりかへすたましひ
どうせ手も足も出なくて気づいたらみんな故郷に飛ばされてゐる
球形は短くをはり昨日からずつと遅れつぱなしの身体
明け渡す春のロッカー僕たちの叶はなかつた苗床として
なんでかう別ればかりが懐かしく灯るのだらう夜の机に
笑つたはうがいいと思つて空を見る 僕は雨宿りに慣れてゐる
(初出:「立命短歌」第3号、2015年9月)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?