「塔」2020年5月号(月詠)

帰宅即寝落ちした日の翌朝は一本釣りのやうに目覚める

仕方なく朝のコンビニ 肉まんは買つたそばから口につめ込む

肝心なところで今日もやらかして声と呼吸がこなごなになる

突き放し尽くしたあとの感情はマーマレードのごとき夕映

蛸の足嚙み切るやうな顔をして病院行きのバスへ乗り込む

もう誰も嫌ひたくない週末の水辺に立ち尽くすフラミンゴ

空いてゐたはずの隣にカーテンを短く閉ざす夜のさざなみ

(p.37-38 前田康子選)

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