「塔」2018年8月号(月詠)
海を見に行かうと君に伝へたらもう満たされてしまふ気がする
墓地をゆくわれにゆふべの風ながれ樹々のしらべのゆうらりと過ぐ
続篇がすぐに始まる番組の不幸がどんどん安つぽくなる
速やかに感情の死ぬ音含むエレベーターは地下へ降りゆく
フリスビー咥へて持つてくる犬に似てゐる、距離の取り方が変
眩しがるあなたに朝を告げる時ひかりの波をなすブラインド
「チンしても美味しいよ」つて触れ込みに従つてみる日曜日くらゐ
克明に夢にまぎれる罵りのこれ以上おまへを嫌ひたくない
(p.164)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?