「塔」2019年4月号(月詠)

耳のごとくはみ出してゐるアパートの出窓のあたり風呻きをり

見覚えのある人朝の駅前に声荒げをり元議員なれば

真二つに折れたチョークを拾ひ上げ冬のつづきの白線を引く

ここで刃を落とせと指示のある譜面十六名をギロチンに消す

焙じ茶の湯呑みに指をあたためて午後は民話のごときまどろみ

(p.196)

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