「塔」2020年4月号(月詠)

たぶん見えてゐないのだらう継ぎ接ぎの渋谷駅からあまたあふるる

たまに来る寒中見舞ひ さういへば一円切手の人誰だつけ

とほくからでも手応へで分かるんだ鉛のこゑを撃つてきたから

仏文科なき大学につやつやとプレイヤード叢書並んでゐたり

あの形のものは何でもヤクルトと呼ぶ、ごく稀に林檎ジュースで

明日辞める仕事のことを思ひつつ埠頭に冬の風あつめをり

くたくたのスポンジ握りしめながら後づけされる愛は言ひ訳

(p.28 栗木京子選)

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