「塔」2020年1月号(月詠)

日除けより外へこぼれてゆく時の身体に泥の傾きはあり

かひがら、と聞いてあなたは巻き貝のひびきを奥へしづめゆく耳

少しだけ大崎行きは空いてゐてそれきり夏も終はつてしまふ

クーピーはすぐに砕けてしまふから花火まみれになる自由帳

午後からは雨と聞きつけ店頭にビニール傘の集ふひととき

繁忙期 まんまと二駅寝過ごして知らない駅に少し親しむ

酔つ払ふために買ひ込むチューハイのロング缶、これもこの世の苦行

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