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『枕草子』朗詠 第十一段「市は」

前段の「山」に続き、「市」を列挙。
しばらくは短い段が続きます。

都にも、東西の市をはじめ、観音霊場周辺や寺社周辺にも市はあったはずですが、
ここで挙げられているのは、飾磨を除き、ほぼ大和。
歌枕同様に、昔から和歌や物語で伝えられている、「名にし負う」名所をイメージしているのでしょう。
海石榴市は記紀万葉集の頃より有名で、三輪から初瀬街道への入り口付近にあり、交通の要衝であると同時に、泊瀬川などの水運により河内や伊勢からも流通が豊かな土地だったので、市は栄えたと思われます。
長谷寺詣では、平安の貴族女性達にとって、縁あれば足を延ばして訪れられる、霊験あらたかで人気の巡礼地。
行ったことのある人から話も聞くことも多かったでしょうし、
「行きたいわぁ」と話題になりやすかったかもしれません。

現代の人が、明治大正のモダンな洒脱さに憧れるように、
平安の頃、奈良は、伝え聞く物語世界のように、古き良き都の名残り、そこはかとなく異世界的な憧れのイメージだったのかもしれません。
今の人が、京都を旅する時にイメージする感覚に近いというか……

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