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映画『ウォンカ』が、今よりもうちょっと楽しみになる話。

映画本編は疎か、予告やポスターすらも見る前なのに泣いてしまった。

間違いなく2023年最高のクリスマスプレゼントであり、最高の1年の締めくくりを飾ってくれるであろう、期待の新作『ウォンカ』。
これはその最新ニュースと、私の異様な期待を伝える記事である。

事の始まりは今から2年ほど前、インスタグラムに突如投下された1枚のビジュアル写真。
ワインレッドのロングコートに身を包み、茶色のシルクハットからニヤリと笑う表情をのぞかせる者こそ、本日の主役ティモシー・シャラメ演じるウォンカの姿である。この美しいが過ぎる顔・・・冗談抜きでノーベル平和賞受賞もの。一体何度我々の心を射抜けば気が済むのでしょう。

(美の暴力)

そう、遂に今冬。
ティモシー・シャラメ主演『ウォンカ』が公開されるのだ。

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もはや説明不要の大人気作品、ロアルド・ダール原作の『チョコレート工場の秘密』

かわいい。


映画化としては、1971年 ジーン・ワイルダー主演『夢のチョコレート工場』、2005年 ジョニー・デップ主演『チャーリーとチョコレート工場』に次いで、これで3作目となる。
本作はチョコレート工場を経営するウィリー・ウォンカの前日譚として描かれる模様。監督には『パディントン』のポール・キング、出演にはMr.ビーンことローワン・アトキンソンの他、ヒュー・グラント、オリビア・コールマンと、新旧方々から豪華役者が登場する予定。これは楽しみと言わざるを得ない。

過去2作。

さて、徐々にそのベールがはがされてきた『ウォンカ』だが…
実をいうと、つい先日まで、私は本作に対する期待値を上げ過ぎずにいこうと心に決めていた。
理由は2つ。前日譚という物語の特性上、主人公ウォンカの暗い過去にスポットが当てられ過ぎてしまうことが大いに予想できるため。もう1つは、なぜ今"チョコレート工場"なのだろうか?という、その物語と時代のミスマッチを危惧したたため、である。

原作から大好きな本作、特に過去映画2作は私にとってかなり思い入れのある作品であるが故、その幼少期の記憶の美しさを塗りかえてしまうような新作は望んでいない・・・というのが正直なところである(自分勝手。笑)

いや、たとえそれほどの思い入れがなかったとしても、続編、リブート、リメイク、前日譚・・・映画ファンならこれらの響きに、必ずしもポジティブな興奮を覚えるだけではないことはお察しだろう。笑

しかし今、1つの記事がそのすべてを払拭し、やはり本作の公開に心から期待を膨らませていいのではないか・・・という希望を見出してしまっているのだ。

THE RIVERさんの記事より
「世の中悪いニュースばかりだから」ティモシー・シャラメ、『ウォンカ』出演理由を語る

(THE RIVERさん、いつも素敵な記事をありがとうございます!コロナ前は、レカペや舞台挨拶などでもお世話になっておりました。また夢溢れるイベントも期待しています…!)

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「シニカルじゃない若い観客に観てもらえるような作品に取り組むことは、それだけで大きな喜びなんです」とコメントしたシャラメ。「それが本作に惹かれた理由です。政治的なレトリックが激しく、常に悪いニュースばかりで溢れた時代と風潮の中で、この作品がチョコレートのような存在になってくれたらと願っています」と回答している。

https://theriver.jp/shalamet-wonka-chocolate/

はっ!!!
シャラメ!すき!!!
あんたこそ真のウォンカだよ!!!

作品を鑑賞する前から、思わずそう声高に叫びたくなってしまうほど、私の心配が杞憂で終わることを裏付けてくれるかのような最高の回答。その言葉、私は信じたい。

"この作品がチョコレートのような存在になってくれたら"
シャラメにとってのチョコレートとは、一体どんな味で、どんな風味を醸し出す存在なのでしょう。
映画『フォレスト・ガンプ』より、「人生はチョコレートの箱のようなもの、開けてみるまで何が起こるか分からない」という名セリフをも彷彿とさせるこの素敵なコメントは、まるでもう映画の幕が開いているかのようだ。

トムハンクス…若い…


近年(特にハリウッドの大作映画において)は、どうにも小難しい作品が増えてきた傾向にある。それはミステリーやサスペンスといった物語的な難しさではなく、作品の枠の外で、時代や世の中と直接的に結びつき、観客の倫理を問うもの、観客層を分断するもの、過去の過ちを正そうとするもの、新時代を創ろうとするもの・・・などの意味で、である。
いや、そのどれもが歴とした"映画"であり、"映画の持つ力"、"映画の付加価値"ではあることは間違いないのだが、やはりメッセージが先行し、娯楽性、エンタメ性、芸術性に欠けるような気がしているのは、決して私ひとりではないだろう。
何も馬鹿げたことをやって欲しいわけでも、ベタな設定の映画を作って欲しいわけでもない。ただ単純に、純粋に、深いメッセージのその上で、"楽しい映画"を、誰もが欲しているような気がするのだ。
(そういう意味で、昨今上映された『トップガン:マーヴェリック』『RRR』『スーパーマリオブラザーズ』などは物凄い功績を残していると思う。今は『バービー』にも同様の期待を寄せている筆者であるよ。)

政治的なレトリック、悪いニュース、これらはいつどの時代にだって存在しているが、過去を振り返ったときに「良い時代だった・悪い時代だった」と決定付ける要因は、シャラメが言うところの"チョコレート"が、どれだけその時代に溶け込んでいたか、によるのではないだろうか。
本作は歌と踊りも存分に楽しめるミュージカル映画であるとも明かされている。チョコレート工場とウォンカの、脆くも美しいファンタジックな世界を、魅力たっぷりに描いてくれるのだろう。
1粒口に入れた瞬間、中からキャラメルが溢れ出すようなあの感動を、はやく大きなスクリーンで味わいたいものだ。

ネスレから販売されてた最高のお菓子。懐かしい。


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ところで…ティモシー・シャラメといえば、前作『チャーリーとチョコレート工場』の生みの親でもお馴染み、ティム・バートン監督のファンであることをご存知だろうか。

ひょっこり奇才。


2021年には電気自動車のCMにて、同監督の傑作ファンタジー『シザーハンズ』のティモシー・シャラメ版が放映された。正確には、あのジョニー・デップ演じるエドワードの"息子"として登場したわけだが、たった90秒のCMでも、その瞳から溢れる魅力は十分すぎるほどである。


と、勘の良い方はもうお気付きだろう。バートンのファン・・・エドワード(デップ)の息子・・・そう、この時から既に『ウォンカ』の布石は打たれていたのである。

やはり本作を語る上で欠かせない、誰もが知る名作ティム・バートンの『チャーリーとチョコレート工場』並びに、先代ジョニー・デップのウィリー・ウォンカ。特に、当時主演を務めたジョニー・デップの、その圧倒的なカリスマ性と、ダークファンタジーの中に見る人間らしさの表現力はジョニデ史上最高演技と言っても過言ではないだろう。
(個人的には『ギルバート・グレイプ』のジョニー・デップが好き過ぎるけどね)

はい、好き。


そんな彼といえば…昨年冬まで続いた元妻ハードとの裁判沙汰が記憶に新しい。
複数の裁判で実に異例な結果として幕を閉じた本件だが、何よりその"後遺症"が今後のキャリア、私生活におけるまで、両者ともに付いて離れないことは明らかである。
先日行われたカンヌ国際映画祭にて、久しぶりにメディアの前に現れたジョニー・デップだが、「もうハリウッドには戻らない」「もうメディアは信じていない」そう語る彼の姿には、やはり寂しいものがある。

少し話が逸れたが…もしシャラメの言う通り、本作が本当の意味で"チョコレートのような存在"になれるのだとしたら、そんな観点からも、明るく甘く、"すべての人"を照らしてくれるものであって欲しいと、切に願ってしまうのだが、これは少し過度な期待過ぎるだろうか。

兎にも角にも、あまりに偉大すぎるジョニー・デップ版ウォンカを前に、シャラメがどんな演技を魅せてくれるのか。
シザーハンズの彼を見れば、何も心配することはないだろう。

そんな側面も本作を楽しむ1つの見方かもしれない。

***

さて、役者のプライベートにまで及んで様々な思い(願い)を混在させてしまうのは映画ファンの悪い癖である。笑

それはそれとして…
更なる楽しみは、決してティム・バートン版『チャーリーとチョコレート工場』だけを対象とした前日譚ではないように感じられることだ。
先のメインビジュアルをもう一度ご覧になっていただきたい。

何度見ても、良い。


シャラメが醸し出す雰囲気、そして目を引くワインレッドのロングコートは、ジョニー・デップ演じるウォンカの存在を意識せざるを得ないが、もうひとつ印象的に映るそれは、柔らかみのある茶色のシルクハットである。これはジョニー・デップの艶々とした黒っぽいハットに対して、ジーン・ワイルダーの温かみのある茶色のハットのオマージュと見て良いだろう。

はい、好き。(パート2)

ジーン・ワイルダーといえば、偉大なコメディ俳優であるが、その凄みに対し、しばしば"ペーソス(哀愁)の表現者"と表されることがある。コメディをコメディたらしめる所以は、その裏で見せる影の側面、まさにペーソス(哀愁)なのである。7年前に逝去したのちも、その独特な演技と彼にしか出せない雰囲気に魅了されるファンは多くいるはずだ。(私の母親はヤングフランケンシュタインがお気に入り。)

コメディホラーの傑作。ヤンフラ。


おそらく今となっては、ジョニー・デップ版のチョコレート工場は観たことがあっても、ジーン・ワイルダー版のチョコレート工場を観たことのある人は少ないだろう。ウォンカの天才故の狂気っぷりは両者ともそのままに、前者は奇怪さが色濃く表現される一方、言うなれば後者のそれは"洒落っ気"である。
ウィリー・ウォンカという人物の身のこなしの洒落具合は、まさにジーン・ワイルダーが決定付けたものである。

今回主演を務めるシャラメにおいて、洒落っ気という側面でも文句はないだろう。ひとたびシルクハット姿のシャラメが世に出回ると、「新しいウォンカの色気がありすぎる」などとコメントが飛び交っていたが、元祖ウィリー・ウォンカの源流をそのままに、ぜひ現代らしくアップデートしたその姿をはためかせて欲しい。

このように、歴代2人のウォンカのエッセンスを十分に取り入れることで、過去作のリスペクトはもちろん、まだ"ウォンカ"としては完全ではなく、若かりし頃ならではの、繊細に揺れ動く心情描写も垣間見れるのではないだろうかと、今からわくわくは止まらない。前日譚として、これらアイコニックな衣装デザインも、鮮やかに映し出されることを期待して続報を待つこととしよう。

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いかがだろうか。
まだ半年も先の公開だというのに、この気持ちの盛り上がりよう。

ロアルド・ダールの児童文学と映画は非常に親和性が高い。
おそらくいちばん有名な作品こそ、本作『チョコレート工場の秘密』であろうが、『ジャイアント・ピーチ』『マチルダ』をはじめ、私が大好きなウェス・アンダーソン監督の『ファンタスティックMr.FOX』や、ディズニーとスピルバーグのコラボで生まれた『BFG』、アン・ハサウェイの魅力もたっぷりな『魔女がいっぱい』まで、その摩訶不思議な世界観は、数多く映画化され、そのどれもが気の利いたユーモアとちょぴり皮肉めいた心得のようなものを伝えてくれる。

どれも不思議な世界観。

こうしてみると、『ウォンカ』と現代のミスマッチ…だなんて、甚だ失礼な話なのかもしれない。
シャラメの言う通り、こんな時代だからこそ、いま"ウィリー・ウォンカ"が必要なのかもしれない。

彼は如何にして"ウォンカ"になったのか。
如何にして"ウォンカ"を生きたのか。
その生き様が、この時代を甘く包み込んでくれるはずだ。


ああ、もう幸せ!
この映画とともに、そんな言葉が口をついて出てくるような、今年の終わりを迎えられますように。

映画『ウォンカ』は、2023年12月15日公開予定。

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