第1章#3 瞬き
「ねぇ、ラム聞いた?ここって昔ニホンの都が1100年間もあった場所だそうよ!ルグニカの歴史が1000年ぐらいだから…それよりも長い…え!」
「どうなさりましたか、エミリア様?」
京都は794年に遷都してからというもの江戸時代が終わるまでの約1100年間都として繁栄してきた。
エミリアが日本の歴史についてスバルから教わったことをラムに説明しようとするがその途中でとんでもないことに気づいた素振りを見せるエミリア。
「1100年って私生きられるかしら?」
「えぇ……」
「ありゃかしら」
「E・M・T!」
「ハッ!」
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コンビニからの帰路、ふと異世界へ召喚されたナツキ・スバル。その後何度も死を重ね様々な苦難を乗り越えてきた。聖域での一件を乗り越え確かに精神的にも身体的にも成長した一行。それ以降半年程度平和に過ごしてきたがーー気がつけば何故かナツキスバルはエミリア、ラム、ベアトリス、そして暴食の権能の範疇から逃れたレムと共に京都にいた。京都にせっかく来たということでルグニカ王都以上に賑わう店が並ぶ坂を登りある地点を目指す。
何が原因で日本に戻ってきたのかが曖昧であり、異世界に戻る方法も分からない。ナツキ・スバルは聖域の第二の試練で自己満足ながらもこちらの世界の未練は絶った筈だ。それが何故、なぜ、ナゼ………
「痛え、ズキズキきたぜ」
「スバル?大丈夫かしら?」
「ーーぁあ、すまんすまん考え事してただけだ。あとたまに頭痛がしてな、気使わせて悪ぃ」
「なんともないなら別にいいのよ」
と心配してくれるのはスバルとエミリアに挟まれる形で手を握られるベアトリスだ。もう20分近く歩いただろうか。
「ところでスバルくん、レムたちはいったいどこに向かってるのでしょうか…」
と質問するのはスバル達の後ろを歩く青髪の美少女レムだ。スバルはその声に愛おしさと懐かしさを実感しながら後ろを歩くレムの方を向く。
「それはすぐに分かるってことよ。って姉様はついに歩くことをやめたのかよ。妹がいるとすぐこれだ…」
「仕方ないでしょ、ラムは鬼族だもの。ロズワール様の元へいつ帰れるかも分からないこの現状で歩いて体内のマナを浪費するわけにはいかないもの」
とスバルに反論するのは姉のラムだ。ツノからマナを取り入れる鬼族にとって、ツノが折れることは深刻なマナ不足に陥る可能性がある。それを懸念してラムはレムにおんぶしてもらっている状況だ。
「それだったらレムも同じだろ!って『ツノ』の事情を深く知らない俺が指摘するのも野暮だよなぁ…」
スバルは普段なら突っかかっていたはずだ。だが細かいことで雰囲気を壊したくない。これはスバルが異世界に来てから学んだことの一つだ。
「珍しくバルスが簡単に食い下がるのね、まぁいいわ、バルスとこれ以上喋ってまでマナを散らすほど価値のある会話はないもの。何も言わないであげるわ」
「もう言っちゃってるじゃねーか!…とにかく、だ。レムも病み上がりだし疲れたら言ってくれ!すぐ交代するから」
「病み上がり…ですか?」
首を傾げ疑問を呈するレムを他所に、ラムは不敵な笑みを浮かべたまま続ける。
「どれだけラムに触れたいの?変態の極みね」
「ーーくっ」
男を見せようと意気込むとすぐこれだ。何と理不尽なんだという思考に至らざるを得ないスバルに…
「はいはい、お喋りはおしまい。到着したわよ!見てみて!夕焼けがすごーく綺麗よ!」
と夕焼けに染まる景色に見惚れ走り出したエミリアにベアトリスとスバルが引っ張られる。
「早い早い!って、おぉー!夕焼けに染まる清水寺にエミリアたん!最高のシチュエーションじゃねーか!」
「もう、スバルったら」
そこへレム達も合流してーー
「わー!すごいです!見て下さいスバルくん!ほら、ベアトリス様も!」
と子供のようにはしゃぐエミリアとレムの笑顔が見られてスバルとしては大満足だ。
「仕方ないからちょびーっとだけベティも付き合ってやるかしら」
ここ半年でエミリア陣営でのの思い出は多くある。そこに何度レムがいたら、、と考えたことだろうか。ナツキスバルは今異世界召喚されて以降最高の瞬間を目の当たりにしている。そんなことを考えてスバルはーー
「スバル、、」
「泣いて、、いるかしら?」
「ぇーー」
指摘されてスバルは初めて気づいた、自分の頬を伝う夕焼け色した一縷の涙光に。
「な、泣いてねぇ!おれ、俺は嬉しいんだ!」
「ーーーー」
無言でスバルの心情を推し量ろうとしてくれる相棒を抱き上げーー
「ほんじゃー、記念写真とでも行こうじゃねぇか!って誰もカメラ持ってきてねー」
「あははは。スバルったら」
「さすがはスバルくんです!レムは感服しました!」
「ハッ!」
「ーーーー」
「またみんなで一緒に色んな所に行ってみたいですね!スバルくん」
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次回、完結予定
ちなみにヘッダーは私が過去に撮ったやつです。
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