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コロナ禍、欧米への拡散〜比較すると日本の医療ってやはりすごいのか?〜

1. 感染の全体状況 - 長期化を覚悟した世界

世界の感染状況の把握にはジョンズ・ホプキンス大学のサイトが適しています。

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(2020/3/11/17:33現在)

感染者数では、イタリアが1万人を突破、ドイツ、フランス、アメリカも既に日本を抜いており、世界中に拡散している事が一目瞭然です。

他にもいくつか、個人的に気になる点があります。

数値は小さいが、メキシコ、コロンビア等の南米、ナイジェリア、チュニジア、南アフリカ等のアフリカに拡大している事。これらの衛生状態や医療が十分でないところでの感染が数週間で一気に広がり世界規模で感染が長期化する可能性があります。

アメリカが感染者700人で死者26人(3/11)で、ワシントン州中心に一気に死者が増えています。(日本の現在の死者数10人)アメリカで日本並みの医療が受けられるのは高額のヘルスケア保険に入った人だけで、トランプ共和党がオバマケアを潰した結果、無保険状態の人が多く十分な治療が受けられず亡くなる人も多くなると思います。今年は大統領選挙で集会も多く、大量のクラスター発生から死者が一気に増える可能性もあります

いずれにしても、ここ数日で「いま持ち堪えれば春になって暖かくなれば自然と消滅するのでは」という楽観論は消えつつ有り長期化を覚悟すべきという論調が増えています



2. 日本の感染拡大だけ特異に小さい?日本人は素晴らしい?

今回、各国で感染が広がってきたことで、新たにみえてきたこともあります。COVID-19の再生産数が、日本だけが特異に小さいということです。
Maruyama Hiroshiさんが、先のジョンズ・ホプキンス大学のデータから横軸に日付、縦軸に確定症例報告数をプロットしたグラフをみると
確かに日本の再生産数は特異に小さいように見えます。

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政府が自治体がPCR検査を意図的に断って陽性患者を増やさないようにしてるのでは? もしくは隠しているのでは?という陰謀論的な懸念が起きますが、下記の福岡市の高島市長のブログを読めばわかるようにその可能性はありません。確かに、その手間とリスクを考えると行政が意図的な隠蔽をする事はまずありえません

Q:本当は陽性の人がいるけど、隠しているのでは?
A:福岡市は何も隠してませんよ。そんなことしたら今の時代すぐ分かりますし、嘘をついて隠すリスクの方が圧倒的に大きいことを考えれば、医療機関も行政も隠したりしませんw          https://lineblog.me/takashima/

PCR検査体制の整備が遅れたことは事実ですが、体制が整い検査数が3〜4倍に増えても陽性が同じ勢いでは増えてないようです。

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ということはこの日本の再生産数だけが特異に小さい傾向は

・もともと日本の都市環境が相対的に衛生状態が良くウィルスが繁殖しにくい?
・日本人の社交文化に濃厚接触機会が少ない。(ハグやチークキスしない)?
・手洗いの徹底、咳エチケットなどのマナー、不要不急の外出、会合禁止等がそれなりに奏功している?

などいくつかの理由が考えられますが、ギリギリ日本が感染拡大を持ちこたえているのは良い兆候です。

3. 死者数圧倒的に少ない?日本の医療は素晴らしい?

日本より遅く感染の始まったイタリアで感染者が1万人、死者600人を超えています。これは医療資源の違いによるものと考えられます。

7年ほど前にイタリアの医療介護事情を仕事で視察したことがあります。
急性期の病床も予算も日本と比べて圧倒的に少ない。イタリアでは財政赤字の削減のため、過去5年の間に約760の医療機関が閉鎖していて、医師5万6000人、看護師5万人が不足していると言われています。

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1000人あたり急性期病床数の多い、日本とドイツ(1000人あたり8ベッド)は、今回の感染による現時点での死者数は少なく(日本死者10、ドイツ死者2)、イタリアやアメリカ(1000人あたり3-4ベッド)は死亡者数が一気に増えています。(イタリア死者631、アメリカ死者26)

4. 少し早くきた医療崩壊のリスク、今変えるべき

今後の超高齢化社会に向けて日本の医療が万全だというわけではないと思います。

東京都の顧問として都政の各事業を分析した時に都立病院経営を分析したことがありますが、団塊の世代が後期高齢者になり始める2020年以降、一気に心疾患や肺炎患者が今回のコロナウィルスとは関係なくいずれにせよ増えていきます。(担当者の方が「不謹慎な言い方だが、団塊老人パンデミックと内部で呼んで恐れている」と教えてくれました。)

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これ以上、医療費抑制のなかで病床数を増やすわけには行かないなかで、いかに地域医療連携を機能させ、診療所のかかりつけ医が診断して、重症化する患者のみを判断し限られた病床数の地域中核病院に移送するか、まさに、今、各地域の診療所で診断し、必要に応じPCR検査を行い、いざとなったら高度先進医療へ移送し重症化を抑える、新型コロナウィルスの緊急対策で行っている事を、当たり前の様に遂行することが今後の医療に求められています。

また、病院に患者を集めることのリスクと医療対応体制の限界が明確になった今こそ遠隔医療を推進させる必要があります。

昨日3月10日開催された政府の規制改革推進会議医療・介護ワーキンググループではオンライン医療の普及促進をテーマに有識者からヒアリングを行い始めたと聞きます。

いずれにしても、2020年以降、いずれにしても喫緊の課題となるはずであった超高齢化社会での医療体制をこれを契機として変えていく必要があります。

"Never let a good crisis go to waste. " - Sir. Winston Churchill

(削除訂正部分:2020/3/13 12:00現在)

以下のイタリアの部分の記述について、フェイクニュースだった事が判明したので除きました。

但し、韓国とイタリアで当初の武漢の医療崩壊に近い状況になっている事は確かなようです。

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患者が増えすぎたイタリアでは、60代以上には、人工呼吸器が使えない状況になっており命の選別を行わざるを得ない状況になっているようです。

これが日本がつい数週間前に恐れた医療崩壊の状態です。


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