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あなたの人生の意味 (The Road to Character) - ディビット・ブルックス

はじめに


新型コロナウイルスは3月までの感染症対策から4月に入り緊急事態宣言と経済封鎖の段階に入り危機が拡大しつつあります。


世界中が「医療崩壊」か「経済恐慌」か、「その両方か」の先の見えない隘路に入ってしまっているように見えます。

ただ世界中の人が認識し始めていることは、これまでの様な経済発展のみを最優先した社会は戻ってこないし、そもそも戻すべきではないのではないかということ。
封鎖効果でピークを過ぎた各国が、社会活動を復活させつつ2波、3波に備えてPost/With COVICー19の社会を模索し始めています。

こうした世界中が大きく変わらざるを得ない時、Stay Homeの夜や週末こそ、良質な本を手にとって自分を振り返り人生について考える良い機会だと思います。

あなたの人生の意味 (The Road to Character) - ディビット・ブルックス

(注1)

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日本ではあまり知られてないですがニューヨーク・タイムズの有名コラムニストによる累計60万部?ベストセラーです。
僕がこの本を手にとったのは、2014のTED TALKで話を聞いて興味を持ったからだったと思います。

Should you live for resume or eulogy?(履歴書のために生きるべきか、追悼文か)

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ここでは、履歴書のために生きる自分をAdam I (大きい私)とし、追悼文で語られるような自分をAdam II(小さい私)
として、戦後の人々が徐々に大きい私の「Adam I」をいかに成長させるかに囚われてきたか考察し、また今こそ自分にとっての「Adam II」を考えることの人生にとっての大切さを問いています。
本を通じて描かれているAdam I とIIの違いを簡単な図にまとめてみました。

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もちろん我々がAdam Iとして成功するための方法論はセミナー、自己啓発本、ネットメディア等で溢れています。


但し、Adam IIとして生きていくことを学ぶには、身近にそういう自分が尊敬できる人物が存在するか、もしくは読書を通じて実際に自分の人格を磨き、実際に素晴らしい人格を持つに至った過去の人々の実例を知る以外にありません。

著者のディビット・ブルックス自身が認めています。

”正直に言おう。私はこの本を、自分の心を救うために書いた”

この本の実例として選ばれている人々は、それぞれに(特にアメリカや西洋において)歴史上偉業を成し遂げた人ではありますが日本の教科書に掲載されているような人々ではありません。

・米国史上最初の女性閣僚の労働長官 
・第二次世界大戦中のアメリカ陸軍参謀総長、国防長官
・「英語辞典」の編集で知られるイングランドの文学者

等です。(注2)

それだけに、日本人の僕には、先入観のノイズがなく、その人の魂に寄り添う様な追体験ができた気がします。

これらの人々の、謙虚で抑制的で、自分に向き合い、努力していく過程を読むと「大きい私」に振り回されている文字とおり小さな私に気づくことになります。

読み終えた後に、本来人生において目指すべき事を思い出し、そしてそれに向かうための視座が得られた気持ちになる事ができます。

そしてなぜか非常に心穏やかな気持ちになることができます。みんな、未熟な自分を抱えながら生き抜いたんだ、と。

この時期、自分の中のAdam Iの声だけに耳を傾けていると、これからの仕事、キャリア、自分が積み上げてきたことが、一体どうなってしまうのか、自分の生きてきた意味は何なのか、と不安な事ばかりになってしまうかもしれません。

この本の日本語のタイトルは、「あなたの人生の意味」となっていますが

この本の中で、1946年の有名な著書「夜と霧」でユダヤ人で収容所生活を転々とした著者のヴィクトール・フランクルは天命についての言葉が記されています。

「大事なのは、私たちが人生に何を求めるかではない。人生が私たちに何を求めるかだ」
「私たちは、人生の意味とは何か、と問うことをやめるべきだ。
反対に、人生の方が日々、絶えず私たちに問いかけているのだ」

友人、同僚に会えず、刺激的なイベントにも出かけられない、いわば「生産性・効率性の世界から離され、消費的な快楽も得られない」こういう時こそ、Adam Iとしての人生の意味を問う事を一旦休み、自らのAdam IIに向き合い、

「人生が私たちに何を求めているのか」

を考える良い機会だと思います。

「あなたの人生の意味」は緊急事態宣言下の静かな夜、就寝前に

(あなたのAdam I が不安になるテレビ番組を見る代わりに)

素敵な時間を過ごすのにとてもお勧めの本です。

注:読み方、あらすじ、感想的なもの


(注1)
読み方としては、もちろん最初から最後まで通読するのも良いですが、
「はじめに」でAdam IとIIを理解し、「第1章. 大きな時代の変化」を読んだ後は、「自分が興味を持った人物の章」をいくつか読んだ後、下巻の「第10章. 大きい私」だけを読むのもありです。

(注2)
個人的には、ドワイト・アイゼンハワーやアウグスティヌスに感銘を受けました。最初から善良な人物よりも、Adam I と IIが激しくぶつかり葛藤しながら人格を磨いていく人物にに惹かれます。

(注3)

もう少し、中身についてもちょっと知ってから買うかどうか考えたいという方はこちらの篠田真貴子さんの書評がとても参考になります。

「篠田真貴子が選ぶすごい洋書!」第3回:偉人たちの「欠点」に学ぶ、より良い人生のあり方(篠田真貴子)


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