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短編小説

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2018年7月の記事一覧

月曜日が好きだと君は言うけれど(後編)

「ところで、スマートフォンは胸ポケットの中に入っているだろ? 財布は?」
 ロンから出た後、小鳩はそう言って振り返った。脈絡の無い言葉だった。
「何だ? カツアゲか? 駄目だぞ」
「駄目だぞときたか。いや、そうじゃないよ。教えて欲しくて」
 どういう意図かわからないまま、俊月は素直に答える。
「ジャケットのポケットに入っている」
「へー、本当に?」
 小鳩が、用心深くポケットを叩く。そして、俊月が

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月曜日が好きだと君は言うけれど(前編)

 瀬越俊月は人間が下手だった。生まれてから今まで、一度だって人間が上手かった試しがない。
 特に何かミスをした覚えはない。それでも俊月は、緩やかに人生の失敗を重ねた。思い出される最初の失敗は、小学校の入学式だ。不愛想で目つきが悪く、その上他の子どもより背格好の大きかった彼は、最初から集団で浮いていた。幼いコミュニティーでの緩やかな排斥。みんなではしゃぐドロケイの輪に、彼だけが入ることを赦されなかっ

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