シェア
斜線堂有紀
2018年1月6日 20:04
「ところで歳華は、偉大なるハルキ・ムラカミの『パン屋再襲撃』を読んだことがあるかな」 ショットガンを眼前にしながら、菱崖小鳩は優雅にそう尋ねた。泣く子も黙る、昼時のパン屋での話である。 いきなり話し始めた小鳩に対し、パン屋強盗も驚いているようだった。映画に出てくるような覆面の奥の瞳が動揺している。けれど、その強盗よりも驚いているのは何といっても歳華本人だった。だって、誰がショットガンを前に世間