見出し画像

満たされよ、満足

 最近、飯を食う量・機械を減らすというわかりやすい減量を行っており、ジリジリと体重が減りつつある。雀の涙ほどだが、確実に僕がこの世界から消失しつつある世界をどう受け止めるべきであろうか。体重が減ってむっさ嬉しいんだけど。
 食う量を減らすということはそれだけ空腹に苛まれるということだ。夜寝る前なんて、明日は死ぬほど酒を飲み腐って死ぬぞ!と意気込むほど空腹感が襲ってくる。しかし、普段の空腹感など適当にあしらっていれば何時しか睡魔に負けどこかに去ってゆく。空腹感で寝付きが悪くなったことには目を瞑るが。
 だが、どうしても空腹に負けてしまう場面はある。その際には、一本満足バーとかいう棒を半分にへし折り、その半分になった部分だけを食べる。そうすれば接種するものが半分となりながら、空腹感を少しだけ満足させることができる。もちろん、半分残った棒は窓から打ち捨て、そこいらを歩いている老婆の頭に命中させるのだ。
 して、この一本満足ばーだが、何が満足なのだろうか。たといこれを一本食べたとて、食欲が満足することはないだろう。何なら三本あたりを接種しない限り満足に近づくことはありえない。更に言うと、先ほど窓から打ち捨て老婆の頭にめり込んでいる半分満足バーは、僕の何を満足させたのだろうか。うぬぅ、これでは一本不満足バー、欲求不満棒ではないか。めり込んでいる欲求不満棒をさらにめり込ませてやろうか。
 阿呆なことは横に置き、人間は常に満ちることを求めて生きている。身近なことで言えば、仕事を成功させて満足感を得たいとか、人間関係を充実させ私生活を満足させたいだとか、きれいなおなご・イケてるメンズを手籠めにして性欲を満たしたいだとか等々。二秒考えただけで沢山満足させたいことが思いつく。それだけ人間は何かを満足させたい衝動を抱えており、僕も含め日々欲に塗れて生きている。
 しかし、ここで登場するのが一本満足バー。これを食べることで何かが満足に達した状態になることが確約されている。それだけ、この一本満足バーには何か魔力のようなものが込められており、人々を魅了してやまないのだ。
 早速、封を開け一口齧ってみる。うむ、不味いんだよなこれ。今思い出してみると、半分にしたのも、窓から打ち捨てたのも、老婆を狙い撃ちしたのも、この不味さが原因ではないだろうか。僕は一口齧った欲求不満棒を引き出しの奥底にそっと寝かせ、臥薪嘗胆という言葉のことを思い出した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?