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セルフ童謡メドレー〜洗濯物を畳みながら〜

夕方帰ってきたら、居間の床が取り込んだ洗濯物で覆われていた。
平日の洗濯はいつも、干して取り込んで畳むところまでやってくれる父が爆睡する寝息が聞こえる。
そんな日もあるでしょう。私が畳みましょう。

洗濯物がなかなかの量。黙々と畳んでいるのにも飽きて、歌うかあ、と脳内で選曲を始める。
JーPOPはなんとなくアレだし、ゆったりした曲がいいな。じゃあ童謡かな。
「朧月夜」。菜の花畑に入り日薄れ、と始まる歌詞は、大人になってからの方が断然エモさの解像度が上がる。
しっかり3番まで覚えている歌詞を歌い終えて、お次も春の歌。

「早春賦」。タイトル通り、春を待ちかねて逸る心を慰めるような歌。
谷の鶯 歌は思えど 時にあらずと 声も立てず 時にあらずと 声も立てず
七音が続くこの歌詞、「歌は思えど」の部分がどうしても難しくてうまく歌えない。
でも、大好きな歌だ。ひとしきり気持ちよく歌う。

しかし暦の上ではもう夏ではないか? と思い直す。じゃあ、時期的にもドンピシャの「茶摘み」。
これを小学校で習った時、八十八夜っていう大きな数字にわけもなくワクワクしたのを覚えてる。
でも一番しか覚えてなかった。重ね襷にすげの傘、の次が出てこない。
続いて捻り出したのは「こいのぼり」。これも、習った当時に「まごいとは???」「ひごいとは???」と内心首を捻りながら歌っていたのを思い出す。

夏の歌のレパートリーが全然ないことに気づき、もうなんでもいいや、と秋の歌が続いた。ウェルカム、季節混合。
小さい秋見つけた、秋の夕日に照る山もみじ、などなどうろ覚えの歌詞は鼻歌で乗り切っている内に、ようやく大量の洗濯物を畳み終えた。

歌ってみると、夏の歌には陽光の賑やかな明るさが漂っているのを感じる。
そこへいくと春の歌には、やはり冬の寒冷がまだうっすらと残っている。
秋の歌はひたすら寂しい。寂しさを正面から抱きしめるような。

私の歌声を聞きつけて、台所で夕食を作る母が「茶摘み」の2番を悠々と歌っている。そういう歌詞だったのか、と感心しながら、畳んだ洗濯物を各々のカゴによりわけて運んだ。

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