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スポーツ科学研究「恵比寿の巻」

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Sport X Management Lab.がまとめるスポーツ科学関連の学術論文まとめ(百本セット)。
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2020年6月の記事一覧

生産性を高める組織の文化とは? 〜組織市民行動に注目して〜

近年、親会社や地方自治体がプロスポーツチームへの金銭的支援を削減しています。 そこには2つの理由があると言われています。 まず1つ目は、親会社自体が時代の変化もあり、昔よりもスポーツチームへの支援が会社の宣伝にならないと認識し始めている。 2つ目は、ソーシャルメディア等の発展もあり、スポーツを宣伝の道具として使わなくても、顧客と直接コミュニケーションを取ることができる様になってきている。 そのため、スポーツチームにおける人的資源の削減が行われている現状があって、プロス

オリンピックと幸福感ーロンドンの大規模データが教えてくれたこと

オリンピックに限らずですが、様々なスポーツイベントを街に招致する際、 どれくらい経済効果があるのー?っていう話題はよく耳にしますよね。 経済効果はもちろん大切なんですが、少し違う角度からもスポーツイベントの価値を考えてみましょうよ!というトレンドがあります。 その中でも「住民の幸福感」という切り口は、研究の世界では現在最も人気トピックといっても過言ではありません。 そこでロンドンスクールオブエコノミクスを代表とする英米仏の共同研究チームが、「オリンピックは招致した都市の

コーチの〇〇さが創造的な選手を育てる! ~創造性を育むリーダーの資質とは?~

リーダー(コーチ・上司・キャプテン)の人間的特徴は選手・部下の創造性(クリエイティビティ)に大きな影響を与えます。 要するに、リーダーの特性によっては、選手・部下は創造的なアイディアを生み出し、自ら羽ばたいていけるようになりますが、その逆もしかりです。 創造性(Creativity)はパフォーマンスに大きな影響を与えるということで、創造性を高めることはチーム・組織のパフォーマンスを高めるためにとても重要な要素だということで注目されています。 また、リーダーの特性によって

スポーツ観戦と男性ホルモンの関係?

以前の記事でも紹介しましたが、人間の行動は、周りの人たちや社会的な影響だけでなく「もともと備わってる生物としての特性」からも影響を受けると考えられます。 もともと備わっている生物としての特性を科学する上で、「生体反応をヒントにスポーツファンの行動を理解」しようという試みが、最近研究者の中でアツいトピックなんですねー さて、今回紹介するのは男性ホルモンです!その中でも、今日は皆さんにもお馴染みのホルモン代表選手「テストステロン」です。 このテストステロン、人間という生物に

勝つためなら、コーチは子どもの心を傷つけてもいいのか? 〜スポーツ現場で頻繁に行われている”感情の虐待”とは?〜

私たちが経験したスポーツでは、指導者が選手を殴る、罵倒する、屈辱を与える、恐怖で支配するといったことはよくあることで、そういった指導を行う指導者たちを今までたくさん見てきました。 体罰が良くないと言うのは、近年盛んに言われていますが、”感情の虐待”というものがあることをご存知でしょうか?今日は、スポーツ界で頻繁に行われている"感情の虐待"に関するお話です! 感情の虐待”感情の虐待”では、身体には直接危害を加えません。しかし、怒鳴りつける、恥をかかせる、言葉の暴力などの方法

スポーツチームの社会貢献活動は「ローカル志向」が堅実かもっていう話

社会のための活動近年スポーツチームを含む多くの組織がCSR(企業の社会的責任)の一環として、様々な「社会のための活動」を行っています。 例えば、北海道日本ハムファイターズは、マスコットであるBBを活用した地域振興プロジェクトを行ったり、

なぜ、人間はスポーツするのか?進化心理学の考え方とエビデンス

多くの人々が関わっているスポーツですが、そもそもなぜ人はスポーツをするんでしょうか。研究者は「スポーツを様々な角度から理解することによって、社会を、そして他者をもっと理解できるようになるんじゃないか?」といようなことを考えていて、そもそもこういう疑問はとても大事なんです! さて、今回紹介するのは「なぜ人々はスポーツをするのか?」を進化心理学の視点から理解してやろうという研究です! 進化心理学ってなに?簡単にいうと、「人間がどんなことを考えて行動をするのかというのは、周りの

マインドフルネスは野球選手のパフォーマンスを高める"最強の心の状態”を作り出すか?

今日はいよいよ待ちに待ったプロ野球の開幕ですね! ということで今日は、野球に関するお話をしたいと思います!(野球に関係のない方でも読んでいただけます!) トップアスリートのメンタルとフロー皆さんはプロ野球選手やオリンピック選手などのトップアスリートは、メンタルがめっちゃ強いと思いますよね? しかし、実は多くのトップアスリートが心の健康状態を崩しているという事実があります。ある研究によると、約50%近くのトップアスリートが心の健康を崩していると報告している研究もあるほどで

スポーツ選手の凶暴性はアレを見ればわかるカモって話

今回のトピックである「スポーツ選手の凶暴性」ですが、凶暴性というとネガティブなイメージばかり浮かんでしまいますよね。 凶暴性の高い人の特徴: やる気に満ち溢れている(ポジティブ) スキャンダルを起こしやすい(ネガティブ) 組織に属すると、対立する組織をバッキバキになぎ倒す(ポジティブ?) ネガティブな側面が目立つ気がしますが、考え方によっては組織にとって凶暴性の高い人材は必要ではないでしょうか? 凶暴性は見た目で分かる?

強みを伸ばす指導こそがパフォーマンスとエンゲージメントを高める?コーチやリーダー、部下を持つ人は必読!!

皆さんは、指導している選手、部下、また、会社や組織のパフォーマンスを高めたいと思いますか? では、効率的に(科学的に根拠のある方法で)パフォーマンスを高める方法があるとしたらどんな方法でしょうか? インセンティブ(ご褒美、報酬)?罰を与える?恥をかかせる?君には力がないと思わせる?などですか?少なくとも私たちが昔から受けてきた指導はそのような指導でした。 では、本当にこういった方法はパフォーマンスを高めるのか? 私たちが行った研究からも言えることですが、答えは「イエス

年を取れば取るほど幸せになるかもという話。若い人ほど他人や環境のせいにしすぎ?

私たちもいよいよ、年齢的にいいおっさんになってきたわけで、年々体の衰えを感じているわけですが、歳をとると、体のあちこちが痛くなったり、病気をしやすくなったりして、「若かった頃は…」なんて思うわけですが、今回は年を取ると精神的に成熟して、より幸せ感を感じられるようになるかもというお話です。 感情経験と幸せ人々の幸福感というのは、日々の感情経験に大きく影響されます。 感情経験というのは、簡単に言うと、どれだけ、好き・楽しい・面白い、満足感などの前向きな感情と不安や落ち込み、イ

スポーツイベントの誘致ー住民は賛成?反対?

住民が賛成・反対の重要性スポーツイベントを誘致する際、住民の賛成を得ることは非常に大事です。 特に大規模なスポーツイベント(オリンピックとかW杯とか)は「住民の賛成が得られていない都市に、誘致する権限を与えません」。 つまり、スポーツイベントを誘致したい都市からすると、住民の賛成・反対のメカニズムを理解することは非常に重要な関心事になるわけですねー 住民がスポーツイベント誘致に賛成するか否かは、めちゃくちゃたくさん研究が蓄積されてます。様々なデータを概観すると「スポーツ

ヨガって実際のとこ、何がいいの?を調べた件

デスクワークが多く、肩、首、腰などががバキバキになるのでよくYouTubeを見ながら仕事の前や仕事の合間にヨガをしているのですが、最近「ヨガがなんか健康に良いらしい!」というのをよく耳にします。しかし、実際、どう健康に良いか?ほんとに根拠があるのか?というのはご存知ですか? そこで、今回はヨガに関する研究を紹介していきます! ヨガの効能とにかく、アメリカではここ10年でヨガをやる人が2倍以上になっていたり、アスリートも積極的にヨガを取り入れていたりしていて、メディア等でも

マインドフルネスがスポーツパフォーマンスに影響する可能性を調べた件

こんちは! 最近、日本でもマインドフルネスって言葉が聞かれるようになってきましたが、マインドフルネスのトレーニングが人々に与える影響は絶大だということで近年、非常に研究が進んでいる注目のトピックです。 マインドフルネスマインドフルネス = 「今その瞬間を純粋に気づく力」という意味です。”純粋に”というのは、"今起こっていること(自分自身を含め)を評価すること無く(non-judgement)客観的に(objectively)自分を観察し、受け入れる(acceptance)"