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【SXLP4期レポート#2 Apollo】「アスリートのキャリア」における課題をシステムデザイン思考で考えてみた

Sports X Leaders Program(以下、SXLP)6期の募集を開始しました。
★募集要項はこちら!

過去のSXLP参加者たちがどのような問いを立て、システム思考を用いて議論やワークをし、最終的なアウトプットをしたのか、ぜひご覧ください。
※本原稿はSXLP4期終了時に執筆していただいた内容です。


1.Introduction

「アスリートのキャリアは大変」「セカンドキャリアはどうするの?」
スポーツ選手のキャリアに関連した仕事をしていると、多くの方から「あぁ、アスリートのセカンドキャリアって大変ですよね」とよく言われます。

そして、「でも結局は、個人の問題ですよね」って言われたりもします。

本当にそうなのでしょうか?

「アスリートのキャリアは大変」というふわっとした言葉。
「結局は、個人の問題だ」と突き放すような言葉。
どちらの言葉を言われても、「本当はそうじゃないんだよな…」という疑問を胸の奥に抱えてきました。

一般的に「アスリートのキャリア支援」と聞くと、[就職斡旋]や[ビジネススキルの習得]といったサポートをイメージされるケースが多いと思います。

たしかに、必要なことですが、こうしたサポートでは、課題を根本から解決できていません。

私たちは、SXLP4期生として、【システムデザイン思考】という考え方を学びました。

【システムデザイン思考】というのは、ひとつの課題があるときに、社会全体のしくみ、環境といった構造的な側面、人や関係性、時間軸など多面的要素の側面から、物事を立体的に捉え、課題の本質と解決策を導き出していくという考え方です。

私たちはこの考え方を学ぶことで、スポーツ界や社会の課題を解決していける糸口が見つけられるのではないかと思い、今回の「アスリートのキャリア」について紐解くことに取り組みました。

2.問題提起

私たちチームは5人でワークをスタートしました。
アスリートのキャリアに関する問題意識はメンバー個々に違っていたのですが、それぞれの課題の根幹を探っていくうちに共通項を発見することになりました。

その課題の共通項とは"アスリートのトータルライフデザイン"です。

「アスリートが自らのライフデザインを主体的に描けていなく、環境要因やトップアスリートとしての将来設計しかしていないマインドセットこそがキャリア課題を引き起こしているのではないか」と仮定し、解決することを目指しました。

共通の課題を設定したのち、その課題の現状把握、問題点、解決後のビジョンを可視化しました。

ビジョンは最終目標地点であり、このシステムデザインを通じて作り上げたい社会の全体像です。

アスリート個人のゴールはそれぞれのライフステージで、主体的な判断とデザインができるようになる人物になることです。

これらのゴールに向けた第一歩がターゲットペルソナで設定した中高生です。
ワークを進めていく中で、見出したインサイトを元に設定したターゲットであり、最初から設定した訳ではありません。

3.Insight Work

我々が実際に行ったグループワークから主要な2つの分析をご説明いたします。

①ステークホルダー分析

ステークホルダー分析とは、チーム内で設定したIssue「アスリートが生涯を通じたライフデザインできない」に係る影響度の高いステークホルダーを抽出し、複数のステークホルダーが持つニーズや要求、懸念や関心事項をあぶりだす分析です。

各ステークホルダーの視点からチームで設定した「Issue」を検討することで多角的な観点や、自身が及ばない観点からの気づきなどを得ることができました。

ここで私たちは、アスリートを取り巻く最も影響力が強い関係をもつものとして、
 ①”家族”との関係性
 ②”教育機関”との関係性
 ③”企業・メディア”との関係性

の3区分を抽出しました。

②顧客価値連鎖分析/Customer Value Chain Analysis (CVCA)

顧客価値連鎖分析とは、ステークホルダー分析を通じて多角的にあぶりだした、ステークホルダー間の価値とその流れを可視化してシステムとして捉える分析です。
当該分析から重要な価値交換及びステークホルダーを抽出することが可能となり、インサイトの発見に繋がる大きな機会・ワークとなりました。

具体的には、アスリートは幼少期より家族や教育機関を代表とする影響度の強いステークホルダーの意向や思惑にがんじがらめになりがちであり、環境要因の依存度が高いことが可視化できました。

主に、上記2つの分析を通じて、環境要因や幼少期に影響度の強いステイクホルダーの影響を受けずに「ライフステージを主体的にデザインできるアスリートを増やしていくプログラムとは?」という現在もチームメンバーと取り組んでいる我々の問いに行きつきました。

4.Solution

ソリューションを検討するにあたり、アスリートが養うべき要素について、様々な議論や検討を重ねていきました。
議論の中で、「ライフステージを主体的にデザインしているロールモデルとなるようなアスリート」は例えば誰だろう、という話になり、メンバーそれぞれが、思い当たるアスリートたちを思いつくままにリストアップしてみました。

そして実際にアスリートにヒアリングをして、リアルな情報を得ようとなり、SXLPのアルムナイでもある、岡田優介さん(プロバスケットボール選手)、三浦優希(プロアイスホッケー選手)さんにインタビューさせていただきました。

我々の仮説、聞きたいこと、言わせたいことの誘導尋問にならないよう注意を払いながら、お話を伺いましたが、こちらから誘導尋問するまでもなく、話のあちらこちらにキーワードになる言葉がどんどんお二人の口から出てきて、とても有意義なインタビューでした。

お二人から出てきたいくつかのキーワードの中で、両者ともに部活という一つの閉じた世界だけでなく、いろいろなコミュニティに属し、いろいろな人々・世代と触れ合う経験を持っているという共通点がありました。
CVCAのワークで描かれたがんじがらめの閉じた世界ではなく、外の世界とつながっている経験をされているというインサイトが得られました。

加えて自分を理解していて、自分の持っている能力、状況をうまくリフレーミングさせる能力の高さもうかがえました。

インタビューを踏まえ、ライフステージを主体的にデザインするには、自己を理解する、外の世界(他人)を理解する、リフレーミングする、という機能が必要ではないかと考えました。そして、我々アポロのメンバーであるカズさんがアスリートへのキャリア設計サポートに使用されているワークで、これらの機能を実際に検証できないだろうかと検討を重ね、プロトタイピングとして、ライフストーリーマップというワークを高校生を対象に実施検証してみることになりました。

プロトタイピングに参加してくれた高校生たちは、スポーツ留学向け英語塾に通う生徒たち18名。
通常授業の前の1時間ほどの時間を頂戴し、カズさんのファシリテートのもと、オンラインで実施いたしました。

ワークの最後にグーグルフォームでアンケートを実施したことで、参加者の感想・反応を即座に入手できました。
自由記述でで書いてもらった感想からは、

・自己理解を深めさせる機能
・外界を認識させる機能

に関する、視点を変えさせる機能に関連するキーワードが得られ、本ワークが求める機能を備える物理として一定の効果があることが確認できました。

今回のプロトタイピングに加え、さらに必要な機能の要素とは何か、そしてその機能を実現するための物理は、というソリューションに関する議論を行い、2月5日のSXLP4期の最終発表では、おおまかなソリューションアイデア例を発表いたしました。

最終発表が終わってから4か月たちますが(※原稿執筆時)、「アスリート(スポーツをする人)のライフステージデザインを誘発するためのプログラム」として必要な機能の要素、そしてその物理は何かという議論は、最終発表後もほぼ毎週オンラインで(一度オフラインで)チームで集まって、引き続き議論しています。

最終発表前数週間の緊迫感に比べると、スポーツ談義の雑談時間が増えていますが、一定時間になったらきちんと議論に入り、ソリューションの具現化に向けて今もワークは続いてます!!
いつか全てのアスリートが、主体的にライフデザインができる一助になることを目指し、我々は頑張ります!

5.自己紹介

Tommy / 杉山 友規(スギヤマ トモノリ)
神奈川県横浜市出身 / ハマっ子。
Bond University Master of Sports Management(オーストラリア)
リーマンショックの激動の中で大学3年を迎え、教職の道へ。母校日大藤沢の非常勤講師として日本史を4年間担当 / 名古屋へ移動し、名古屋国際中学校・高等学校の専任として複数の主任業とホッケー部顧問に就任。全中3回、インターハイ1回出場、中学の愛知県代表監督を2年務める。
30歳でオーストラリア留学を決断し、語学力ゼロで渡豪。 Labrador TigerStix Hockey Club Support staffをしたり、東京2020オリンピックホッケー競技デジタルマーケティングを担当する。

Akira / 竹村 映亮(タケムラ アキラ)
大阪府枚方市出身
2002年日韓W杯で、ドイツ代表ミヒャエル・バラックに憧れてサッカーを習い始める。大学在学時ドイツへの交換留学中にドイツがW杯優勝。その歓喜の瞬間を目の当たりにし、将来この光景を自分の国で見たい、携わりたいとキャリアビジョンを決定。20代は研鑽のため民間企業で務めることを決意し、村井満氏の影響で新卒でリクルート入社。現職はGoogleにて、Account Manager・FIFA World Cup 2022 YouTube Partnership Managerとして従事。
早稲田大学 Sports MBA Essence 3期生/Sports Human Capital(SHC)10期生/Sports X Leaders Program4期生
ガンバ大阪スポーツビジネスアカデミー 1期生/HALFTIME GrobalSports Academy4期生
また、アスリートへのリスペクトも兼ねて、現在週5のジム、食事管理を行い体調を整えるのが趣味。ガンバ大阪コアサポ。

KaZ / 善福 真凪(ゼンプク マナギ)
スポーツキャリア・プロデューサー / 埼玉県スポーツ推進審議会委員

埼玉県さいたま市在住 / タマっ子。
サッカーしかやってこなかったを価値に変える! 経験、魅力、本当のつよみで選手のブランド力を高めて活躍できるしくみをつくる。日本初の、マネジメントでも代理人でもない「選手キャリア」と「人生デザイン」の両側面に寄り添ったキャリアの伴走支援サポート&メソッド「プロジェクト・ブレイン」の開発者。『偶然をキャッチして幸せの波に乗る7つの法則(同文舘)』出版/ジェフ千葉鈴木大輔選手などをプロデュース中。【競技歴】全日本選手権床運動6位入賞、体操競技国体優勝後、Dr.ストップで現役引退。

Shingo / 根本 真吾(ネモト シンゴ)スポーツ留学会社経営
埼玉県春日部市出身
「スポーツで世界を繋げる」をミッションに、スポーツ留学の草分けアスリートブランドジャパン(株)の経営。2022秋で創業20年目に突入。プログラム生からNCAAD1生やUCバークレイ編入生、球団職員、起業家等輩出。立ち上げから携わるスラムダンク奨学金の留学担当。IMGアカデミー日本取次代理店。室伏広治選手マネジメント(現在は終了)。前職はミズノ株式会社でアトランタ五輪や米市場向け野球用具企画担当、メジャーリーガー対応、全米横断プロモーションツアー等に携わる。著書に故坪田信義グラブ名人との共著「迷ったときこそ続けなさい(クロスメディアパブリッシング)」等。

Ryu / 髙木 隆(タカギ リュウ)
大阪府豊中市出身
米国大学・大学院卒業後に米国監査法人で財務監査業務を4年間行い、帰国後、コンサル会社を経てパシフィックリーグマーケティング株式会社に入社。入社初年度は、法人営業を担当し、新規営業から案件獲得、スポンサーシップアクティベーション企画、実行。現在は主に米国及び台湾における海外放映権の渉外やNFT事業のディレクターを担当。近年は、阪神タイガースでストレスをため、マンチェスターシティでストレスを発散させることに夢中。スポーツ業界の方々との新たな出会いや学びを通じて、自己成長する機会を求めてSXLP4期生となる。

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