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【3期レポート#4 FLAG-SHIP】「スポーツ×社会課題解決の活性化」に向けた提言:~どうしたら、スポーツを通じて社会課題解決を“活性化”できるのか~

Sports X Leaders Program(以下、SXLP)5期の募集を6月27日(月)より開始しました。

★募集要項はこちら

各々がどんな問いを立て、システム思考を用いて議論やワークをし、最終的なアウトプットをしたのか、ぜひご覧ください。※本原稿はSXLP3期終了直後に執筆していただいた内容です。


皆さんこんにちは、チームFlag-shipの坂東です。

今回は、我々が最終発表会でプレゼンしたテーマである
「スポーツ × 社会課題解決の活性化」に向けた提言
~どうしたら、スポーツを通じて社会課題解決を“活性化”できるのか~」
についてご紹介させていただきます。

スポーツ業界にとって大きな転機となった2020年。
詳しくは【テーマ設定の背景】の章でお伝えしますが、
スポーツの価値が今以上のものになるためのヒントが社会課題にあるのではと考えた9人のチャレンジの過程をぜひご覧ください。

メンバー紹介(※所属はSXLP3期参加当時)

中嶋知彦(日本生命保険相互会社)
・スポーツマーケティングおよびスポンサーシップ全般を統括
・具体的には、オリンピック・パラリンピック、バスケ・Bリーグ、バレーボール、ゴルフ、車いすバスケ、陸上、卓球、柔道等の代表チームやアスリートのサポートを通じ、企業サイドから幅広くスポーツの支援と盛り上げに注力

豊田紗耶美(株式会社スポーツマーケティングラボラトリー)
・大規模スポーツイベントにて競技会場の運営マネジメント
・これまで3か国(日本・中国・アメリカ)にて、3業種(ITベンチャー・VC・スポーツ)に従事

荒木哲朗さん(公益財団法人日本財団経営企画広報部HEROsチーム)
・社会課題解決の活性化に向けアスリートと連携したプロジェクトを推進
・前職(当時所属)ニールセンスポーツでは、スポンサーの戦略構築・実行支援やライツホルダービジネス部門の統括を担当

東明宏(W ventures株式会社 代表パートナー(ベンチャーキャピタル事業))
・50億円のファンドから、スポーツベンチャー等への投資を実行、支援

軍司和久(株式会社東急エージェンシーECC本部第三統ソリ局第一ATV部スポーツビジネス担当プロデューサー)
・ゴルフ、バドミントン、テニス、サッカー、フットゴルフ、卓球、ランニング 等

鈴木伶奈(プラス株式会社コーポレート本部サステナビリティ推進室)
・プラスグループの環境・品質関連、社会貢献を中心としたCSR活動全般を担当
・フィギュアスケート現役審判員

マクマーン海(UEFA(欧州サッカー連盟)スポンサーシップ&ライセンシング部)
・欧州チャンピオンズリーグのスポンサーシップ戦略及び新規ビジネス開発を担当
・静岡生まれの日豪ハーフ

篠田大輔(株式会社シンク代表取締役/創業者)
・スポーツで災害に強くなる「防災スポーツ®」やスポーツ記録配信サービス「スポロク®」はじめスポーツに関する企画・コンサルティングを展開
https://www.parasapo.tokyo/topics/99589

坂東秀憲(筆者)(プロスポーツチーム関連)
・プロチームのチケット販売や協賛、地域連携を担当
・プロeスポーツ選手としても活動中

球団や連盟・協会、スポンサー等の企業、広告代理店、リサーチ・コンサル、ベンチャーキャピタル、ソーシャルセクターと実に多様なメンバーが揃いました。チームメンバーだけではなく、普段業務をしているだけではなかなか繋がりを持つことができない方との多くの出会いがあり、これはSXLPの素晴らしい点だと思います。

また、我々のチーム名である「Flag-ship」は、英語で旗を意味するFlagと、「人と人を結びつける」「つなぐ」という意味があるshipということばの組み合わせから成っています。
後ほど説明する、我々が目指すゴールに旗を立てることを目標に、多くの課題に対して取り組む人たちがつながって、共に取り組んでいく姿をイメージしたネーミングです。

テーマ設定の背景

Flag-shipの最終発表会のテーマは「スポーツ × 社会課題解決の活性化」に向けた提言~どうしたら、スポーツを通じて社会課題解決を“活性化”できるのか~でした。

このテーマを設定するにあたっては何十時間にも及ぶグループワークがあったのですが、まずはテーマを検討するに至った背景についてご説明します。

大きく分けると以下の2点です。

  1. 社会課題を取り巻く昨今の潮流

  2. 改めて問われたスポーツの価値

1.社会課題を取り巻く昨今の潮流
「社会課題」というワードを聞いて思い浮かべるものは様々だと思います。
最近よく話題に上がるSDGsも社会課題をテーマ分けしたものになりますが、すべてが網羅されているわけではありません(SDGs=社会課題ではない)。
今回我々がイメージする「社会課題」はSDGsだけではなく、「人が生きていく上で課題と感じるものすべて」を扱うことにしました。

さて、その社会課題について、国際的な関心は日々高まっており、日本国内でも各企業が対応を始めるケースが徐々に見られるようになってきましたが、社会全体の意識は諸外国に比べて低い状態となっており、対策が必要だと感じています。

2.改めて問われたスポーツの価値
2020年は新型コロナウィルスと人類の苦闘の一年でした。
スポーツ界も例外ではなく、最大の出来事でいうと東京五輪の延期。その他、プロ・アマ問わずスポーツイベントは中止や延期、無観客開催を迫られることになりました。

当たり前のように存在していたスポーツの「日常」が奪われた一年。

  • 「スポーツは社会にとって必要なのか?」

  • 「社会に提供できるスポーツの価値とは何か?」

を改めて問われているように感じました。

我々メンバーはグループワークの第一弾として、スポーツの価値についてブレインストーミングを行いました。代表的なものだと、「心を動かす力」「チャレンジ精神」「チームワーク」「関心を集める力」「生きがい」「親しみ」「人間的な成長」「発信・伝達力」「正義」「ダイバーシティの尊重」などが挙がりました。

今こそ、スポーツが社会全体にこうした価値を発揮し、社会課題を解決していくことで、スポーツ界を超えて、存在感や必要性を高めていくことができるのではないかと感じました。

以上の2点から、「スポーツ×社会課題解決」というテーマを設定しました。

解きたい課題~“活性化”とは~

テーマの中にある“活性化”という重要なワード。
これを導き出すにも何十時間にも及ぶグループワークがあったのですが…

ワークを進める中で、すでにスポーツを通じた社会課題解決の取り組みはある程度行われていることが分かりました。さらに、それらには「寄付モデルで中長期化しない」「世の中の興味・関心がない」「資金や人材不足」といった課題があり、取り組みの拡大には至っていないことも分かりました。

そこで、「スポーツ×社会課題解決」に重要な以下の2つの要素をまとめて「活性化」と呼び、我々が目指す方向は「スポーツ×社会課題解決の活性化」であるとしました。

  • 新たな取り組みを生み出す(0⇒1)

  • 現状の取り組みの質を上げ、拡大させていく(1⇒10)

スポーツ×社会課題に取り組むステークホルダー

このテーマに大きくかかわる主に3つのステークホルダーについて以下の通り整理しました。

①②③すべての組織の外側に位置する「一般消費者」の存在も忘れてはなりません。

実現したい社会の姿

以上の内容を踏まえて、実現したい理想の社会の姿を画像の通り定義しました。
先ほどの「活性化」が極限まで進んだ姿とも言えると思います。

ある程度ステークホルダーが意識や義務感を持って取り組んでいた状態から進歩して、「当たり前に」「自立的に」取り組んでいる状態です。

この社会に至るために、我々Flag-shipは解きたい課題に対してアタックしていきます。

事例分析から得られた考察

目指すべき社会と解きたい課題が明確になったところで、我々は実際の事例分析を通じて現状の把握を行いました。簡単にですが、2つの事例を以下紹介します。

①   チーム × 行政 × 企業
実施主体:DeNAヘルスケア、Roche(共催)
後援:横浜市、神奈川県
協力:横浜DeNAベイスターズ
スポンサー:第一生命

内容:子宮頸がん検診受診率向上に向けた共同プロジェクト
https://blstr.jp

良い点:
自治体の課題意識と目標設定が明確
(子宮頸がん検診の受診率向上)
多様なステークホルダーがそれぞれの目的をもって参画

②   アスリート × 国際協力団体 × 企業
実施主体:高橋尚子氏、JICA、木楽舎
スポンサー:三菱商事、ロート製薬

内容:日本で靴を集めてケニアのスラムへ寄贈
https://www.dowellmag.com/49686/

良い点:
靴の寄贈を通じて子どもの病気を防ぎ、命を救うことに繋げ、さらに走る喜び(希望)を提供したこと
10年間継続させ所期する目標を達成。自助・自立を支援

ほかにも多くの事例の分析を行いましたが、ここでは割愛させていただきます。

我々は事例分析を通じて、以下の3つの考察を得ました。

①   サステナブルさが重要、一時的・表面的な取り組みにしない
・目的、意志が明確なステークホルダーが必要
  社会課題に対してissue drivenである“ソーシャルセクター”と
スポーツの力を有する”スポーツセクター”の2者で考える

・寄付や厚意(goodwill)に依存せずに、ソーシャルセクターにもスポーツセクターにもメリットがある
 =win-winの状態を作り、見える形にする
 
・収益を上げることも必要

②   ステークホルダーが多様
・網羅的・汎用的なソリューション(メタソリューション)にする
⇒スポーツセクター、ソーシャルセクター、活用する組織、実に多様なステークホルダーが存在
組み合わせは無数にあり、活性化のために個々のソリューションを考えるのは限界がある

③   社会課題が多様
・「社会課題解決の課題」を取り上げる
 気候変動から長期療養の課題まで課題も実に多様
それぞれの課題固有の解決策では横展開が難しい

これらを総合した結果、課題を解くためのソリューションとしては以下の方向性が示されました。
多様なステークホルダー × 多様な社会課題に対応するための網羅的・汎用的ソリューション(=メタソリューション)のシステムをまとめる

課題を解決するシステム

我々が提示する、課題解決のためのシステム全体は以下の通りです。

このシステム内には大きく以下の3つのシステムが存在しており(システムオブシステムズ)それぞれのステークホルダーとの間で「課題に対して価値を提供する」といういわば当たり前の関係性を築いていますが、これまで言語化が十分になされておらず、それ故に成立してこなかったと考えられる部分ですので、課題、価値を抽象的ながらもしっかりと表現することを目指しました。

先ほどの考察のとおり、まずはスポーツセクターとソーシャルセクターの2者から考え、その間で価値交換、メタソリューションの提供がなされているかを検討しました。
その上で、2者間の価値交換が一方通行気味であったり、バランスが悪い、あるいは2者間のバランスがいいが取り組みさらに拡大させたい、そういった時に必要な支援・活用する第三者と、その関わり方についても検討しました。

  1. 社会課題解決に対するスポーツの『メタソリューション』

  2. スポーツに対する社会課題解決の『メタソリューション』

  3. 第三者の関わり方(提供価値・獲得価値)

それぞれの詳細についてご説明します。

1.社会課題解決に対するスポーツの『メタソリューション』
~”社会課題解決”の課題に対して、スポーツの価値を提供する~

まずは、ソーシャルセクターの課題について、ライフサイクル分析という手法を用いて検討しました。

ライフサイクル分析とは、ものごとの始まりから終わりまでをイメージし、フェーズに分けながら、様々な視点から状況・状態を整理することでポイントとなる課題を抽出していくというものです。

今回は社会課題解決が活性化するまでのフェーズを図の通り5つに分け、それぞれのフェーズごとの課題や、スポーツができる機能についてまとめました。詳細は図をご覧ください。

以上のライフサイクル分析をもとに、メタソリューションを検討しました。

例えばフェーズ1(非認知フェーズ)の課題である「課題が知られていない」ということに対して、スポーツの持つ価値「発信力」が貢献できるのではないかと考えられます。
このように、各フェーズの課題、スポーツの持つ価値を整理することによって、社会課題解決に取り組む団体が、自分たちの現在地を知り、どういった課題があるのかを認識し、どういったスポーツの価値を利用するべきなのか、イメージを理解することができまると思います。その逆も然りです。

2.スポーツに対する社会課題解決の『メタソリューション』
~スポーツの持つ課題に対して、社会課題解決の価値を提供する~

こちらはまずスポーツ側の課題から整理しました。
「スポーツ」と一口に言っても様々なカテゴリがありますので、今回は、ファンが直接紐づいていることの多いアスリートとチームを軸に検討しました。

課題抽出の手法としては、今回はブレインストーミングを使用し、「ココロ」「ヒト」「モノ」といったジャンルで整理しました。詳細は図をご覧下さい。

3.第三者の関わり方(提供価値・獲得価値)

スポーツセクターとソーシャルセクターの取り組みを補完、拡大する第三者になりうる団体として、NPO・企業・自治体行政・メディアの4つカテゴリに分け、取り組みに提供できるもの(価値)と、獲得できる価値について整理しました。詳細は図をご覧ください。

システムの簡易検証

これまで提唱してきたシステムについて、より実行性・実効性を高めるために、事例への当てはめや、各ステークホルダーに対するヒアリングを行い、ソリューションとしての網羅性、汎用性があるか、簡易的な検証を実施しました。

事例の当てはめに関してはスムーズに進んだため、システムやメタソリューションの網羅性については一定程度あると確認することができました。

また各ステークホルダーに対して、スポーツ×社会課題という切り口で、各々が抱える課題などについてヒアリングを行いました。代表的な意見を以下の通り紹介します。

スポーツセクター
(アスリート)
・競技が優先であり、社会課題に対する知識が希薄。
・競技以外の機会やコミュニティが少ない
・自分にも知る機会・やる機会があれば是非チャレンジしたい

(チーム)
・収益事業が優先で余裕がない
・社会課題=CSR、チャリティー的

ソーシャルセクター
(NPO)
・慢性的な資金不足、人材不足、組織体制が脆弱
・効果的な発信手段が少ない、他組織との連携が少ない

支援・活用する組織
(NPO支援団体)
・NPOは似通った課題を抱えている

以上のヒアリング内容からも、各ステークホルダーがリアルに抱える課題や、それらに対するメタソリューションの網羅性、汎用性が一定程度示されたものと思います。

一方、様々な組織が様々な機能を持ち、様々な取り組みをしていることが分かりましたが、世の中には広く知られておらず、それらを大きな取り組みにするために、有機的に繋ぐ機能の必要性も感じました。

今後の具体的なアクション

2022年2月13日の発表会では、これまで紹介してきた通りのシステムの作成をおこないました。

今後のステップとしては、まず期間内に検討できなかった事項である

  • モデルのパターン化

  • マネタイズの仕組み

について、検討を進めます。

その後は、各ステークホルダーへのヒアリングなどを通じてシステムの検証を行い、全体の精度をより高めながら、プロトタイプを作成していきたいと思っています。
それと同時に、どんな形になるかは未定ですが、実行組織の立ち上げも検討していきます。

最後に、システムの社会実装の第一弾として、優先的に取り組むべき課題や相性のいいところから取り掛かり、成功事例を増やしていきたいと思います。

また今後はSXLPを飛び出しての活動になります。志をともにする仲間を募りながら、組織として成長していきたいと思います。

(2022年6月追記)
2022年現在、Flag-shipメンバーの一部は週1~隔週のペースで定期的にミーティングを行い、社会課題解決に取り組むいくつかの団体にプロボノとして参画しています。
団体のサポートを通じて、我々の提唱するシステムの更なる精緻化と軌道修正をしながら、更に大きな取り組みへと広げていきたいと考えています。

今後SXLP受講を検討している方へ

  • スポーツの可能性を信じて情熱を燃やす、多様な仲間とのつながり

  • 難題にアプローチをすることを可能にしてくれるシステムデザイン思考

  • 人に寄り添い、的確なアドバイスをくれる講師、アシスタント陣

などなど、SXLPのプログラムを通じて多くのことを得ることができました。
自分がスポーツ界の課題だと思っていることも、解決できる糸口が見つかったのではないかと思っています。

また、一方的に教わって「知識を得る」というよりは、思考の枠組みを使ったうえで、議論を重ねに重ねてアウトプットを作り出すというスタイルなので、グループワークの度に充実感と疲れが半端ないです。(笑)

「スポーツにはもっとできることがあるはず、スポーツの価値を高めたい、そのために汗をかきたい」そんな熱意のある方に、是非チャレンジしてもらいたいと思います。


Sports X Leaders Program 5期 参加者募集中!

■概要
▼Phase1(基礎知識の学習)
オリエンテーション:7/31(日)
講義日:8/6(土)、8/20(土)、8/27(土)、9/3(土)、9/10(土)、9/24(土)、10/1(土)
特別講義(プレインイングリッシュ)
日程は受講開始後に調整(任意参加)
▼Phase 2 <日本、海外スポーツ業界で働くゲストスピーカー講義>
10/15(土)、10/22(土)、10/29(土)、11/5(土)、11/12(土)、11/19(土)
▼Phase 3<海外実地研修>
9月末~11月に1週間程度で調整中
▼Phase 4 <グループワーク>
11/20(日) ~ 2/24(金)
最終発表会
2/25(土)

■会場
原則zoomによるオンライン講義、対面講義は都内で開催予定

■参加費
50,000円(税別)(海外研修等を実施する場合は別途参加者負担になります。)

■対象者
既にスポーツ業界で活躍中、もしくは活躍できる潜在能力がある方

■応募期間
2022年6月27日(土)~7月10日(日)

■応募方法
下記HPより、詳細をご確認の上ご応募ください
https://sportsxinitiative.org/recruitment2022.html

Sports X Initiative

Sports X Initiativeは、スポーツと社会の関係性をリデザインします。https://sportsxinitiative.org/


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